花の栽培が盛んな富岡市。
まゆといとでは過去にも、お花を育てている方々にお話をお聞きしました。
■ 富岡しゃくやく園
今回は、以前からマツオが気になっていた「バラ」について調査したいと思います!
「ぬかべ朝市」に行けば色鮮やかなバラの花が売られていたり、SNSを眺めていると市内のバラ農家さんの日常が垣間見られたり…と、バラに興味が湧いていた私。調べてみたところ、富岡で栽培されるバラは品質が良く、市場での評価も高いとのこと。
「花があふれる街――富岡市」
そんなキャッチコピーが頭に浮かび、足どり軽くバラ生産者さんのもとへ向かいました。
今回はJA甘楽富岡・営農部にご協力いただき、南蛇井地区の「山口バラ園」代表・山口昌生さんにお話をお聞きしました。
【山口 昌生(やまぐち まさき)さん】
創業58年を迎える「山口バラ園」の二代目代表。ハウス栽培(総面積980坪)で作られるバラの種類は6種類。市内のバラ園のなかでも早い時期から機械化を取り入れ、年間を通して安定したバラの栽培を行っている。趣味はゴルフ&孫と遊ぶこと♪
家族で築いた良質なバラの栽培
出荷作業を行う作業部屋に一歩足を踏み入れると、ひんやりと涼しい空気と上品で爽やかな香りが、部屋全体から漂ってきました。バラの花と切りたての枝葉の香りが混ざったような香りです。
「バラの花を扱っているということは、普段からこの香りに包まれて暮らしているということなのね…。」すっきりと整頓された作業場を見渡しながら、思いっきり深呼吸しちゃいました。
冷蔵室に並ぶバラの花。翌日、花市場へ出荷されます。
― 山口バラ園は昌生さんのお父様が始められて今年で創業58年ということですが、お父様の背中を見てバラ園を継ごうと思ったのでしょうか?
昌生さん:小さい頃から父親の仕事を見て育ったので、いつか自分もバラ農家になるのかな… と、なんとなく思っていました。特にバラの手伝い作業をしていたわけではないけれど、子どもの頃は一緒に花市場へ付いて行ったことをよく覚えています。その後、社会人になって一般企業に 勤めた経験もあるのですが、30代半ばになり「そろそろ家の仕事をやってみようかな」と、そんな感じで始めたんです。
しかし、バラの仕事に就いてみると想像以上に大変でした。早朝からの作業や、まとまった休日が取れない等、生活リズムがガラッと変わったことになかなか慣れませんでしたね。
― バラ園での仕事内容を教えてください。また、繁忙期や閑散期はありますか?
昌生さん:バラ園の仕事内容は、花の収穫・選花・出荷、花の手入れ作業、植え替え、ハウスの環境制御などです。年間を通してハウス内の温度や湿度は管理されていますが、夏場は日中の陽射しも強くなるので温度管理には気を使いますね。基本的に年間を通して花を出荷しますが、寒い時期の方が花の生産量は少ないです。
ハウスの周りを覆っているのは赤色の防虫ネット
この機械で二酸化炭素をハウス内に循環させて光合成を促進します
― バラの栽培や出荷などにおいて大変なことはありますか?
昌生さん:大変なことは天気に合わせた温度管理です。特に近年は夏場の気温が高いので、暑さ対策は必須です。作業をしている私たちもなるべく涼しい早朝に作業をしています。また、バラを扱うので手指や腕にトゲが刺さるのも日常茶飯事で…私の腕は傷だらけです(笑)。
― 毎日トゲが刺さることが当たり前なんて、頭が下がります!ところで、近年の日本の夏は昔に比べて気温も上昇し、バラ栽培には厳しい環境だと思うのですが、世界的に見てバラ栽培が有名な国はどこでしょうか?
昌生さん:最近は東アフリカのケニアでバラの栽培が盛んですよ。バラにとっては一年中春みたいな気候が合っているんです。ケニアは赤道付近に位置しているので日照時間も長く、年間の気温差はあまりないのですが、標高の高い地域では朝晩の寒暖差があり、バラの栽培には適しているようです。
― このお仕事に就いて良かったな、と思うことをお聞かせください。
昌生さん:毎日コツコツと地道な作業を重ね、結果として良い花が作れた時は、とても嬉しいです。「バラの仕事は夢があるな」って思いますね。 あとは、趣味の時間を持てることも有難いです。うちは生花を扱っているので、まとまった長期休暇は取れませんが、平日の昼間に時間の融通を利かせることはできています。私はバラ農家になってから趣味でゴルフを始めたんですが、週に一回はゴルフに出かけています。平日のゴルフ場は空いてて気持ちいいですよ(笑)。
― 市内にはたくさんのゴルフ場があるので、仕事の合間に良いリフレッシュができますね。
バラを通して喜びを分かち合う暮らし
奥さまの聖子さんにもお話をお聞きしました。
山口聖子さん
― 聖子さんはバラ園でどんなお仕事をされているのですか?
聖子さん:私は、お花の出荷・選定・お手入れ等のほかに、バラを使ったフラワーアレンジメントも制作しています。今年は外での仕事も多く、市内の地域づくりセンターでお教室をしたり、近隣地域でのイベント出店など、人に会うことや触れ合うことを楽しんでいます。
さらに「かぶら農村生活アドバイザー」(かぶら農村生活アドバイザーの会)として様々な農家の女性との交流の場にも参加しているんです。つい最近も講師として「プリザーブドフラワーのアレンジ講習会」をさせていただきました。いろいろな農家の方とお話すると良い刺激にもなりますし、みなさんとおしゃべりしながら手を動かすのはとっても楽しいですよ。
― バラ園のお嫁さんというと、いつもお花に囲まれて華やかなイメージを持ちますが、実際は大変なことも多いのではないでしょうか?
聖子さん:そうですね、けっこう過酷な仕事です(笑)。ハウス内はバラがよく育つように湿気が多くてサウナ状態ですから、作業中は汗だくです。おかげさまで新陳代謝が良くなり年々暑さにも強くなっていると思います。辛いことは腕が(バラのトゲで)キズだらけになることかな。
― 暑い日でも厚手の長袖を着て作業されているのは、トゲ対策のためですか? きれいなお花を出荷するために、見えない苦労があるんですね。
ー奥様は日中はハウス内の作業や出荷準備でお忙しいのに、フラワーアレンジメントのお仕事はいつされているのでしょうか。
聖子さん:夜、リビングでテレビを観ながら手を動かして制作しています。これがけっこうリラックスできて、私の好きな時間になっているんです。季節によって花束などの注文が多い時期は、日中にも時間を作って制作しています。
― 山口バラ園のインスタグラムを拝見しましたが、センス溢れる洗練された作品が並んでいますね。私も機会があれば聖子さんにラワーアレンジメントを習ってみたいです。
☆山口バラ園のインスタグラムでは、バラ園の様子や花束・アレンジメントの紹介の他、聖子さんが作るフラワーアレンジメント等のギフトの注文も受け付けています。
いかがでしたか?
普段はなかなか見ることができないハウス内を案内してもらい、バラについての詳しいお話を聞くうちに、よりいっそうバラが好きになり親近感も湧きました。
いろいろな質問に快く答えてくださった山口さん。お孫さんの話になると目を細めて笑顔になるご夫婦を見ていると、愛情を持ってバラを育てるとともに家族との時間も慈しんでいることが伺えて、あたたかい気持ちになりました。
(マツオ)