『田舎に移住+就農』への関心が高まっている近ごろ。
「富岡の状況はどうなのかな? 富岡に移住して農家になった方を取材したいな〜」と考えていたところ、市役所農林課の和田さんから「是非この方に!」と栗城さんを紹介してもらいました。
さっそくお話を聞いてみると、独立の方法や就業時間、なんと収入のことまで、リアルな現状を教えてくれました!
新規就農希望者、必見です!
◯市役所農林課の和田さんについてはコチラ
◯早期退職して農業を始めた話、市民農園ネタはコチラ
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富岡で出会った「ナス+ネギ農家」という選択
【栗城 大輔(くりき だいすけ)さん】
幼少期は福島県、小中高は千葉県で、周囲に農業を営む人たちが多い環境で過ごす。青年海外協力隊に参加するため農業の専門学校へ進学し、そこで牛の可愛さに惹かれ、酪農にハマる。念願の青年海外協力隊ではパラグアイに。帰国後独立を考えるが畜産をゼロから始めるには費用面が難しく、検討を重ねた結果、富岡市で就農。現在43歳。(2021年取材)
就農場所を富岡市に決めた理由は?
農業での独立をめざして就農先を探し、全国の情報が集約されている東京の「ふるさと回帰センター」に足を運んだこともある栗城さん。
富岡市に決めたきっかけは、人との繋がりで得たご縁だったそうです。
栗城さん:青年海外協力隊で出会った仲間に富岡市の存在を教えてもらいました。調べてみると富岡市は、気候が農業向きだし(※1)、作れば売れる環境(※2)が整っている。なのでその仲間に、研修先の農家さんを紹介してもらったんです。
※1 富岡市は、年平均気温 14.4℃、年平均降水量 1,089mm という農業に適した気象条件に恵まれている。
※2 農協がしっかりと機能していて、作れば出荷するところがある。JA 甘楽富岡の強みであるインショップ(甘楽富岡産の農産物を都内大手量販店で販路拡大する仕組み)もある。
\農林課・和田さんからの補足ポイント/
インショップって凄いんです!そのメリットは・・・
① 全量買取が原則です。
② 市場出荷と比べて、規格が簡素化されています。
JA甘楽富岡HP( http://www.jakantomi.or.jp/ )「食と農業」の「直販事業のご紹介」もご覧ください。
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ナスと長ネギの栽培に決めた理由は?
栗城さんが現在主に栽培している野菜は、ナスと長ネギ。
その作物に決めたポイントは、以下の4つだったそうです。
① ご縁のあった研修先がナス農家だった。
② 初期投資が少なく始めやすい。
③ 難しい技術はいらない。
④ 比較的、相場が安定している。
栗城さん:何を栽培するかは、性格との相性もあります。ナスは、やることをやっていればしっかり実ります。そのためには長い作業時間が必要で、とにかく体力勝負!ナスに耐えられれば何でも育てられるとも言われるくらい、農業の厳しさを知ることができる作物なんです。そこが自分には合っていると感じました。
長ネギは、ナスが夏から秋にかけて収穫できるので、空いている冬に収穫できる野菜として選択したんです。研修先ではナスと蒟蒻を栽培していましたが、その知り合いが長ネギと蒟蒻を育てていて、そこで長ネギのことを教えてもらいました。どちらの農家さんからも、費用面も含め詳細なお話を聞くことができたので、始めやすかったですね。
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畑・家・トラクターの入手方法は?
就農する際に大きな課題となるのが、拠点探し。畑はもちろん、住居(作業場付き・畑が近い)、トラクター(機械)を揃えるのに苦労している人も多いそうです。栗城さんはどうやって見つけたのでしょうか?
栗城さん:移住した当時は、知人と古民家をシェアして暮らしていました。研修を経て人との繋がりが出来てくると、作業場付きの中古住宅や畑、トラクターを使っていいと言ってもらえるようになって、トントン拍子に揃っていきました。
自分は運が良かったとも思うのですが、最初から好条件に縛られずにその土地に飛び込んでみると、意外と情報が集まって見つかってくるんですよね。
その際、地域の人とのコミュニケーションは大切です。難しいことではなく、こんにちは!と気持ちの良い挨拶を交わすことだけで関係性が変わってくると思います。信頼関係が築けていないうちに見つけるのは難しいです。知らない人には何も貸さないですよね。
あとは給付金も活用しました。研修中は無給だったので、就農のために準備した貯金200万円が生活費で全てなくなりました。だから給付金が就農の資金に回せたのは、すごく助かりました。
\農林課・和田さんからの補足ポイント/
栗城さんが活用していた給付金はこちらです!
① 農業次世代人材投資資金(準備型):研修中に受給することができます。
② 農業次世代人材投資資金(経営開始型):独立・自営就農した後も、経費などに利用できます。
富岡市のサポート体制・給付金に関する情報
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「絶対に農業で稼ぐ!!」という固い意志
就農と聞くと、「田舎に移住して自然に囲まれ、ゆったり農業をして暮らす」というイメージがありませんか?しかし栗城さんのスケジュールを簡単に教えてもらうと…そんな雰囲気は感じられませんでした。
もちろん目指す収入にもよると思いますが、農業でしっかり稼ぐことを目標にするのであれば、相当な覚悟が必要かもしれません。
【ナスの収穫時期(6〜9月)のスケジュール】
・早朝 4:00〜 収穫作業・箱詰め・出荷
・8:00〜 袋詰め・出荷
・10:00 食事
・〜19:00 選定作業、合間に長ネギの管理
栗城さん:1日14〜15時間は働いていますね。毎日休まずです。これを続けるには、強い体力と精神力が必要だと思います。休めばいいんでしょうが…自分は休んだら嫌になってしまいそうで。
10月になると少し落ち着いて、11〜4月には長ネギのピークが来ます。長ネギの方が忙しく、夜の10時まで出荷のために束ねたりしています。
そして、5月頃にナス・長ネギともに定植と栽培管理を行う…というのが、おおまかなスケジュールです。
一体どうしてそこまで頑張れるのでしょうか?
栗城さん:大きい目標ですが、所得1,000万円を目指したいと考えています。農家は口では感謝されているけれど、日本に限らず世界を見てもまだまだ社会的地位は低いと感じていて。そんな世界をひっくり返したい気持ちがあるんですよ。
今は自分の他に一人の従業員がいるだけですが、従業員を増やしても利益が出せる仕組みを考えて、法人化していきたいです。
栗城さんは大きな目標に向かっているからこそ、大変な作業を続けて成果を出すことができているんですね。
猫を6匹飼っている栗城さん。富岡市の雄大で穏やかな自然の下、飼い猫と遊ぶことで日々癒されているそうです。
\農林課・和田さんからの補足ポイント/
栗城さんのご厚意で、おおまかな生産量・販売金額も公開いたします。
【1年目】
ナス:作付面積 12a / 生産量 9,400kg / 販売金額 3,600,000円
長ネギ:作付面積 30a / 生産量 1,900kg / 販売金額 365,000円
スナップエンドウ:作付面積 5a / 生産量 358kg / 販売金額 306,000円
【5年目】
ナス:作付面積 15a / 生産量 10,700kg / 販売金額 4,600,000円
長ネギ:作付面積 70a / 生産量 23,000kg / 販売金額 5,300,000円
スナップエンドウ:作付面積 5a / 生産量 約84kg / 販売金額 65,000円
【所有している主な農機具】
トラクター、土壌消毒機、サブソイラー、軽トラ、管理機、ネギ調整セットなど
農業経営指標(※)も見て比較していただくと、栗城さんが指標よりもかなり頑張っていることが分かります!
※農業経営指標…県内で取り組まれている農産物の収量や所得等の農業経営に関する目安のこと。ぐんまアグリネット(http://www.aic.pref.gunma.jp)「生産者向け情報」の「経営支援情報」に農業経営指標が掲載されています。
富岡市で就農を検討されている方は、富岡市役所農林課や富岡地区農業指導センターにお問い合わせください。
◯富岡市役所 農林課 0274-62-1511
◯富岡地区農業指導センター(担い手支援係) 0274-63-6711
栗城さんのナス畑、当たり前ですが素人の私が育てるナスと違って、とても綺麗に管理されていました。市民農園で野菜を作り始めてなんとなく農業にも憧れていた私ですが、まだまだ甘い考えだったようです(笑)
とはいえ、栗城さんは「所得1,000万円と法人化」という大きな目標を持った農家さん。市内には、もう少しのんびりとしたペースで農業に取り組む方や、週末限定の兼業農家さんもいらっしゃいます。
一言に就農といってもその規模は農家さんごとに全く違うので、まずは自分の目標を明確に持って、しっかりと計画を立てることが大切ですね。
富岡には、就農をサポートしてくれる人たちや制度が存在するということ。そして農業は、頑張れば頑張っただけ成果が得られる仕事だということがよくわかりました!ありがとうございました♪
(ホシナ)