夢のマイホームや親から受け継いだ家など、「持ち家」にお住まいの方へ質問です。
自分(とパートナー)がいなくなった後にその家がどうなるか、考えたことはありますか?
まだ若いみなさんは、親や祖父母の家で想像してみてください。
「この家をヨロシク」と急に家のことを任せられたら、どうしますか…?
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【どうする?家の将来】
よくあるケースですよね。
さて、どうしましょう・・・
富岡市では、結婚や出産のタイミングで新築一戸建てを購入する人は珍しくありません。畑だった場所にいつの間にか新しい家が並んでいる、なんて光景をよく見かけますよね。
そんな流れの中で増えているのが、65歳以上の高齢者だけが住む家です。近い将来に空き家になる可能性が高い「空き家予備軍」とも呼ばれています。
住んでいる人がいなくなってしまったら、
売ったり貸したりして誰かに使ってもらいますか?
思い切って壊しますか?それともそのまま…
思い入れがあればあるほど、そのまま残しておきたい気もしますよね。それに解体にはお金もかかります。
しかし、空き家は放置すると急激に劣化が進みます。草木や害獣、スズメバチ、放火などの被害にあう可能性も高く、周辺住民とのトラブルも多数報告されているそうです。
それでも、決断するには親族の意向を聞いたりと、なにかと時間がかかってしまうもの。ならばどうするか、答えは一つ!
家の将来について、前もって家族や親族で話し合いをしておくことです。
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【何を話し合っておけばいいの?】
では具体的に、どんなことについて話し合っておけばいいのでしょうか。
富岡市役所建築課の担当者に、チェックポイントを教えてもらいました。
☑ 誰に引き継ぐ?
相続後もきちんとした維持管理が必要です。 経済的なこと、除草作業、固定資産税の納付など、話し合っておきましょう。
☑ 利活用?解体?
法務局の登記の確認や、不動産屋はどこがよいかなど。市には「空き家バンク制度」や「空き家除却補助金制度」もあります。
☑ 片づけはどうする?
話のきっかけとして、物の整理から始めるのもオススメです。
実家片づけのイロハ・整理収納アドバイザー おのあけみ さんによる広報連載記事「55歳からの片づけのポイント」も参考にしてみてください。
☑ ご近所さんとのお付き合いは?
普段から良好な関係を築き、家族で情報共有しておきましょう。 また、ご近所さんにも家族の連絡先を伝えておくと良いでしょう。
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【古い物件にも魅力アリ!価値観は人それぞれ】
富岡市で今年実施された「空き家所有者アンケート調査」では、空き家を売却・賃貸しない理由に「住宅の質の低さ(古い、狭いなど)」と答えた人が多く見られました。
しかし数年前から「リノベーション」という言葉をよく耳にしませんか?
古い家を安く購入し自分好みにつくり変えて住むことが注目されている今、若い世代や移住希望者を中心に自由度の高い中古戸建て物件を探している人がたくさんいるのです。
こんな人もいます。
ある人にとっては「不用品」でも、ある人から見れば「お宝」という場合もあります。今後利用する予定がないのであれば、家が劣化してしまう前に誰かに引き継ぐという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
次に、富岡市に移住して古民家を購入した濱田さんのケースをご紹介します。
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〜「家と想いを受け継ぐ」濵田さんの場合〜
富岡市移住定住コンシェルジュの濵田さんは、地域おこし協力隊就任をきっかけに夫婦で富岡市に移住。「家を持つなら新築より古民家」「日々の生活の中で少しづつ手を加えて理想の家に近づけたい」という想いを胸に、家探しをしていました。
そんな時に知り合ったのが、築150年近い古民家を所有する原田さん。
空き家になっていたその古民家は、2階に蚕室がある昔ながらの大きな養蚕農家の家で、敷地内には蔵や倉庫が点在し、畑と庭もありました。
もし予算内だったとしても、修繕も管理も大変そうで、ためらってしまうような広いお家。ですが濵田さん夫妻は、原田さんからその家を受け継ぐことにしたのです。
引き渡し時には家財道具や養蚕道具が残っており、床や壁は痛んでいる状態でした。
― 濵田さん夫妻がこのお家に決めたのはなぜですか?
濵田さん:養蚕古民家は住居であるだけではなく、農作業の場、冠婚葬祭で人が集う集会場など、いろいろな機能が集約されています。染織を生業とする私と飲食業の夫にとっては、養蚕古民家のその懐の深さは生活と仕事を両立させる上で理想的でした。また家を取得する際には、自分たちの老後と死後についても考えました。ケヤキの大黒柱や松の梁などの建材は、現代ではとても価値のあるものです。未来の誰かが再びリノベーションしようと思った時に、それを妨げないような方法で私たちが改修し、丁寧に手入れをしていく。そうすれば数十年後も必ず私たちと同じようにこの家に価値を見出し、この家の歴史を受け継ぎたいと思う人が現れるのではないかと思い、古民家を選びました。
築年数の浅い増築部分で生活しながらの改修。大工さんや水道屋さんの力を借りつつ、大部分はDIYで。
― このお家に住んで良かったと思うことは?
濵田さん:原田さんご一家、近所の方たち、大家さん(猫)との出会いに恵まれたことです。見ず知らずのよそ者である私たちを受け入れていただくだけでも有り難いのに、お家に招いて手料理をごちそうして下さったり、畑の野菜をお裾分けしていただいたり。そうした皆さんのお心遣いが、私たちの糧になっています。
古民家の修繕は想像を絶する大変さで心が折れそうになりますが、今日まで継続できているのは皆さんの応援があればこそ。原田さんや近所のお婆ちゃん達が教えてくれる、「瓦は40年くらい前に葺き替えたよ」「この穴は馬の餌を作るサイロだったんだよ」といった情報は、改修作業をする上でも役立っています。
もう一つは、畑と庭があること。野菜を自給自足できると、災害時などに助かります。それに庭を美しく保とうとするといつも忙しいので、時間つぶしのためのショッピングに行く必要がなくなりました。
改修後の縁側。家づくりはまだまだ続きます。
― 原田さんがこのお家を売却することにしたのはどうしてですか?
原田さん:正直、私の中では売却したという認識はないんです。濵田さん夫妻と本音で話しながら酒を酌み交わしたら、とても良い人だと思ったので、この家と「ぶち」(猫)を託したいと思ったんです。
― お家を濵田さん夫妻に託して良かったと思うことは?
原田さん:濵田さん夫妻という、かけがえのない身内ができたことです。そして猫のぶちがとても幸せになって良かったと思っています。だんだんと家が蘇っていくようで、将来が楽しみです。
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【わからないことは相談を!】
濵田さんと原田さんのケースのように「誰かに住んでもらう」という選択をするにしても、その方法は様々です。また「建物を壊すには一体いくらかかるの?」「固定資産税はどうなるの?」など、気になることはたくさんありますよね。
富岡市では、専門家による無料相談会や、解体や利活用の促進を支援する制度を実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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◎空き家無料相談会◎
富岡市では不動産の専門家による無料の空き家相談会を定期的に開催しています。
開催日:令和3年11月17日(水)、12月9日(木)、令和4年2月9日(水)、時間はいずれも午前9:30〜11:30
※詳細は富岡市のページをご覧ください
◎空き家バンク制度◎
空き家の売却・賃貸を希望する方から申込みを受けた物件情報を、物件の利用を希望する方へ紹介する制度です。情報は市のホームページや移住マッチングサイトで公開されます。
◎空き家家財道具等片付け補助金制度◎
空き家内の家財道具等の処分費用の一部を補助します。
◎空き家除却補助金制度◎
空き家の除却(解体)費用の一部を補助しています。(R3年度の受付は、予算が上限に達したため終了しました。)
それぞれの詳細と空き家に関する情報は、こちらのページに掲載されています。
ご不明な点は、富岡市役所建築課(0274-62-1511)までお問い合わせください。
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クミコさんの実家では、みんなで片付けを始めたようです。
早めに話し合えば、ゆっくり考えて納得のいく選択ができそう…。
幸せになるために手に入れた家。それが厄介物になってしまっては悲しいですよね。
家を建て、守ってきた人たちの想いを大切にするために。
次の世代に負の遺産を残さないために。
笑って話せる今のうちから、気持ちを確認し合っておきたいですね。
(ナカヤマ)