富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2020.07.16 移住-Iターン

【珈琲焙煎所 月とゆふづつ】西尾祐諄(にしお ひろし)さん

一ノ宮から妙義神社まで続く道を妙義方面へ走っていくと、

高田川を渡る橋のところで、一旦姿を消していた妙義山がパッと現れる。

 

(なんてカッコいい山なんだろう)

(この辺りに住んでみたいなぁ)

(もっとみんな遊びに来ればいいのに!)

 

どんどん大きくなっていく妙義山を眺めながら、私が必ず心の中でつぶやくセリフ。

 

他に類を見ない、荒々しくも美しい山に向かっていくそのルートは、いつも私をワクワクさせてくれる―――

 

 

そんな大好きな道の途中、北山の交差点を過ぎたあたりに、昨冬小さなお店がオープンしました。

 

 

 

『珈琲焙煎所 月とゆふづつ』

 

 

農業用倉庫をリノベーションし、今もコツコツと手を加えながらお店を営むのは、東京から夫婦で移り住んだ西尾さん。

 

西尾さんは昨年、妙義山の麓に建つ築135年の古民家を購入し、富岡に移住しました。はじめの3ヶ月間は市の「まちなか移住体験住宅」に滞在しながら、先に引き渡しが済んでいた倉庫を珈琲焙煎所にするための改修作業を行っていたといいます。

 

 

 

大きな窓から光が入る明るい店内に、商品のコーヒー豆が並ぶ。おしゃれなのに親しみやすさを感じる空間。

 

 

 

現在は週に3日ほどお店を開け、店内の改修作業と母屋の片付けを進めながら、農業を学ぶために ぐんま農業実践学校 にも通っているそう。珈琲焙煎所のオープンは、実はまだリノベーション計画の入口に過ぎないのです。

 

 

それにしても、一体どうしてこの土地を選んだのでしょうか?

 

 

 

 

 

【西尾祐諄(にしお ひろし)さん プロフィール】

大阪市出身。東京で不動産関係の仕事に従事し、古民家を再生したカフェやシェアハウス、ゲストハウス等のプロデュースを多数手がける。2019年、富岡市へ移住し、「珈琲焙煎所 月とゆふづつ」をオープン。コーヒー豆の販売を行いながら、店舗と住居のセルフリノベーションを行っている。

 

 

 


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倉庫は焙煎所、母屋はカフェ+???に。

 

 

焙煎所の向かいにある母屋と蔵は、明治18年に建てられたもの。蔵の家紋が個性的なので、何のマークなのかぜひ当ててみて欲しい。

 

 

― この物件とはどのようにして出会ったんですか?

 

西尾さん:仕事柄いろいろな物件情報を見る機会があったんですが、バックに山が写っているこの物件の写真を見た時に「こんな場所があるのか!?」と驚いて、実際に見に来て、即決しました。山が見えるし、小屋があるからコーヒー豆の焙煎もできるぞと。

 

― 妙義で家探しをしていたわけではなかったのに即決だなんて、運命的な出会いだったんですね。コーヒー豆の焙煎ができる場所を元々探していたんですか?

 

西尾さん:探していました。焙煎は煙が出るので、住宅地だと難しいんですよ。以前、都内で立ち上げたカフェにも焙煎器を置いていたんですが、近隣住民から苦情が来てできなくなってしまったんです。

それに、古民家再生をそこに住みながらやりたいという気持ちもありました。これまではプロデュースばかりで全て人のためだったので、今度は自分でやりたいなと。母屋の方は、1階をカフェ、2階をゲストハウスにする予定です。

私が言うのもおこがましいですが、それが地域の活性とリンクできればと考えています。

 

― 西尾さんがやりたかったことにピッタリの物件だったんですね。

 

 

都内のカフェに設置したものの、煙の問題で使えなくなってしまった焙煎器。現在はここで焙煎した豆を、東京へ送っている。

 

 

― 倉庫のリノベーションは、ほとんどDIYでやられたんですか?

 

西尾さん:土間打ちと電気、水道工事は地元の業者さんにやってもらって、それ以外は自分でやりました。まだ途中なんですよ。

 

― 木の温かみがあって、窓から見える田畑の緑も美しくて、とっても落ち着きます。時間の流れがゆっくりしていて、まるで旅の途中にいるような気分…。

 

西尾さん:窓の外にはいろいろな動物も来ますよ。キジの巣も近くにあって、3羽くらいで歩いている姿をよく見ます。

 

ー へぇ〜会ってみたい!

 

 

現在販売している豆は18種類。浅煎りから深煎りまでオーダーに応じた焙煎が可能だ。

 

 

 

 


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一軒あれば、変わっていく。

 

 

コーヒー好きが高じて、有名店のコーヒーを飲み歩いて研究したという西尾さん。店内では試飲も可能なので、ゆっくりとコーヒー豆を選ぶことができる。

 

 

― お店には近所の方もいらっしゃいますか?

 

西尾さん:お客さんの車が停まっている時は遠慮していらっしゃらないですが、平日に扉を開けておくと集まってきて、みなさんでテーブルを囲んでお喋りをしています(笑)。

いつも気を使ってくれて、野菜を持ってきてくれたり、地域のことを色々と教えてくれたり、草刈りを代わりにやってくれたりして、みなさん優しいですよ。限界集落になるかもしれない場所によく来てくれたと、喜んでくれています。

 

― 移り住むだけでなく、お店を開き、外からお客さんを呼んで、地元の方々の居場所も作ってくれて…と、嬉しいでしょうね。

 

 

店先のメダカも(鉢も!)近所の方々からのいただきものだそう。

 

 

西尾さん:このあたりは、お子さんが都会に出て行って、戻ってこない家が多いんです。でも妙義神社まで続くこの通りは、変えるつもりがあれば4〜5年で大きく変えられると思います。何もないところには人は来ないけれど、一軒何かができれば次々と増えていきますから。

 

― そうして活気づいてくると、おじいちゃんおばあちゃんが住んでいた家にお孫さんが移住する「孫ターン」も増えそうですね。

 

西尾さん:絶対にここは、いい場所だと思いますよ!

 

― 私もそう思います!そういえば、お店の『月とゆふづつ』という名前は、どこから来ているんでしょうか?

 

 

母屋の庭から見た妙義山。(「月とゆふづつ」スタッフブログより

 

 

西尾さん:夕暮れ時に焙煎所から西の空を見た時に、妙義山の上に月と宵の明星(金星)があったんです。枕草子で金星が「ゆふづつ」と書かれているので、「月とゆふづつ」という名前が浮かびました。

 

― この場所から見た景色がそのまま名前になっていたんですね。

これからできるカフェとゲストハウスも、本当に楽しみです。コーヒーの魅力、古民家の魅力だけでなく、妙義という地域の魅力が、ここから広く伝わって行く予感…

西尾さん、さらなるワクワクをありがとうございます!

 

 

 

 

 

 


 

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豆は発送可能。営業日は確認を。

 

 

コーヒーに詳しくなくても、聞けば丁寧に説明してくれる。たっぷり入ったドリップパックはお土産にもぴったり。

 

 

お店に伺った時、「実はコーヒーがちょっと苦手で…」と言った私たちに、西尾さんは「紅茶みたいなコーヒーもありますよ」と、フレンチプレスで淹れた、苦味がなくフルーティーなコーヒーを試飲させてくれました。

 

今までに出会ったことがない香りと味わいを堪能しながら、何通りもあるコーヒーの抽出方法についてわかりやすく教えてもらい、(もしかして自分の「コーヒー」の概念、めちゃくちゃ狭かったんじゃ…?)と、恥ずかしながらようやく気づくことができました。

 

珈琲焙煎所はコーヒー好きが行くところ?そんなイメージは取り払って、ぜひカッコいい妙義山の姿を眺めながら、気さくで穏やかな西尾さんに、会いに行ってみてください。

 

(ナカヤマ)

 

 

 

 

営業日はその時々で変更になる場合があります。最新情報をご確認ください。

 

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