富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2019.04.12 地域で働く

笑顔で乾杯するために。 入山 寛之さん【後編】

【前編】はこちら

 

衣料品店「いりやま」の店主として、地域団体「富岡げんき塾」のリーダーとして、富岡ではお馴染みの顔となっていった入山さん。

 

その入山さんが、富岡に “ まちやど ” を作るために設立された会社「富岡まち繰るみ舎」の代表に―――

 

それを聞いた時、私はちょっと驚きました。

 

入山さんが今までやってきたことと路線が違うこと、すでに多忙な入山さんが新しい事業を始めたということ、どちらも意外に思えたのです。

 

※「まちやど」とは、まちを一つの宿と見立て宿泊施設と地域の日常をネットワークさせ、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上していく事業のことです。(日本まちやど協会HPより)

 

 

富岡まち繰るみ舎のメンバー(富岡まち繰るみ舎Facebookページより)

 

 

そもそも「富岡市にまちやどを作ろう!」というのは、市で開催された「リノベーションスクール」で受講者が作ったプランが始まり。

 

「リノベーションスクール」とは、まちに実在する空き家や空き地、公共空間を題材に、その建物の価値だけを考えるのではなく、エリアの価値を高め、まちを再生する事業をつくり、人とお金の循環をまちに生み出す手法と思想を学ぶ実践的な場。

そのリノベーションスクールに入山さんはスタッフとして参加し、講師と受講者の間を取り持ち、不動産オーナーを見つける手伝いを行っていたのです。

 

一体、何がきっかけで “やる側” になったのでしょうか?

 

 

→とみおかリノベーションまちづくりについて(富岡市ホームページ)

 

 


 

「みんなで美味いビールを飲むために」

 

 

― リノベーションスクールでまちやどのプランを立てている段階では、入山さんはそのメンバーには入っていなかったんですよね。

 

入山さん:最初はスタッフの立場だったけど、一緒にやろうと誘われて。

リノベはハードを所有するということも、儲けなきゃいけないというのも、今まで自分のやってきたこととは全然違う。だから応援するだけでやるつもりはなかったんだけどね。

 

― 「面白そう!と思ったらやりたくなっちゃう」とおっしゃってましたが、そんな感じですか?

 

入山さん:そう、そんな感じ。

ここ何年か、自分のやりたかったことが達成されすぎちゃって。おこがましいけど、(富岡げんき塾の活動は)もうこれ以上なんとかしなくても、俺は十分満足!っていう状況になっていたんだよね。

そこで「まちやど」の話を聞いて。次にもうちょっと、みんなと美味いビールを飲んだりだとか、輪を広げるのには、この手法はすごく面白いなと。

 

― さらに美味しいビールを飲むために。なるほど。

 

入山さん:一番根っこにあるのは、リノベーションスクールのスクールマスターだった青木純さんの講演会。青木さんが子どもたちだけのスクールを開催した時の写真を見せてくれたんだけど、打ち上げで乾杯の挨拶をする子どもの顔が…ニコニコの笑顔がもう良すぎて…

「リノベをやっているとこの笑顔につながるんだ」と思ったら、憧れと言うか、「悔しい〜!」ってなっちゃって(笑)。「俺はこの笑顔を超えたい!」と思ったんだよね。

 

 

宿泊棟「蔟屋」となる空き家の改修作業を始めた頃の様子。(同Facebookページより)

 

 

 

「街の人の やりがい や 生きがい が増えていけば」

 

 

― 宿のフロント業務を入山さんが「いりやま」で行う、という形になるそうですね。

 

入山さん:お客さんにはまずうちに来てもらって、こちらで荷物を持ってあげて、周辺のお店を紹介しながら歩いて宿までご案内するというイメージ。

これは今までに、東北芸術工科大学の学生が「まちなか留学」で富岡に泊まりに来ていた時のことがヒントになっていて。

最初に近所の人に紹介しながら歩いておくと、後で一人で出歩いたときに、街の人から声をかけられたりする。まるで自分も街の人間になったような感覚になるんだよね。

 

― すでに紹介してもらっていれば、お店にも入りやすいですよね。

 

入山さん:それで親切にしてもらったりして街を気に入ってくれると、何度も来てくれたり、今度は友だちを連れてきたりする。それがきっかけで街の人と親戚みたいなお付き合いを続けている学生が何人もいて。

そういった実績があるから、なんとなく自信はあるというか…こういう人たちを増やしたいな、というのは頭の中で描けている。

 

― 街の人にしても、全国に親戚のような存在ができる可能性があるということですよね。自分は富岡から出なくても、外から来てくれて。それっていいですよね。

 

入山さん:そうそうそう。自分のやってあげたことで喜ばれて、自分も嬉しくなるっていう機会が、まちやどで増えればいいなって。街のみんなのやりがいとか、生きがいが増えればいいなと思ってる。

だから、今まで自分がやってきたことと路線は違うけど、考えは同じなんだよね。

 

― 入山さんの想いもそうですし、立ち上げたクラウドファンディングや建物の改修作業に多くの仲間からの支援があったりと、今までのことが全てつながっているという感じですね。

 

入山さん:クラウドファンディングでみなさんが支援してくれたことは本当に嬉しかったし、スタッフを募集してみたらすぐに応募してくれる人がいたり…。今までやってきたことのつながりが、本当にありがたいなぁって思う。

 

 

蔟屋の壁塗りは、有志が集まって作業をした。仕事の合間に駆けつける入山さん。

 

 

「それぞれのつながりがクロスしていく」

 

 

― まちやどのオープン後の様子は入山さんには見えていますか?

 

入山さん:見えてる見えてる。まず5月のげんきフェスタの時に、水戸市から毎年来てくれる子たちが泊まるでしょ。まだ泊まるとは聞いてないけど(笑)。

自分のつながりだけじゃなく、富岡まち繰るみ舎のメンバーそれぞれが持っているつながりがクロスしていったり、地元同士でも知らなかった人がつながっていくとか、そいういうことも発生しそうで面白い気がする。

 

― 近くに住んでいるのによく知らない人って、たくさんいますよね。

 

入山さん:意外と地元って、いつも同じ人と付き合っていて、色んな人と関わらない。面識があっても、ある面だけ知っていて、他のやってることは知らないとかもあるでしょ。

 

― ありますあります。

 

入山さん:今度まちやどのオープニングパーティーがあるんだけど、参加するって表明してくれた人が60人以上いて…その中には自分が会ったことがない人ももちろんいるし、なんだかわちゃわちゃして面白そうだよね。一体何の集まりなのかわからなくなりそうだけど(笑)。でもそんな感じになったらいいなって思ってる。

 

 

 


 

 

 

入山さんが新しいことを始めた――― そんな印象は、インタビューをしているうちにどこかへ行ってしまいました。

 

お店、イベント、宿。

全く違う道のようでも、想いは共通していて、全てはつながっているのです。

 

 

「これから楽しみですね」と私が言うと、

「そうだね。辛いこともあるけど。」と答えた入山さん。

好きなことだけをやって、成功してきたわけじゃない。

笑顔の裏には、苦悩もたくさんあるのでしょう。

 

 

 

私も、「面白そう!」と思ったことは、とりあえずやってみよう。

もし失敗して落ち込んだら、入山さんに話してみよう。

きっと「なーんだそのくらい。こっちはもっとすげぇ失敗してるんだぞ」って笑い飛ばしてくれるに違いない。

 

そう思ったら、心が少し軽くなりました。

 

(ナカヤマ)

 


 

 

まちやど『蔟屋』は4月13日(土)オープン!

 

『第21回 げんきフェスタ』は5月18日(土)開催です!

 

詳しくは下記のリンク先のページをご覧ください。

 

いりやまのホームページ

・富岡げんき塾のFacebookページ

・富岡まち繰るみ舎のホームページ

蔟屋 MABUSHI-ya のFacebookページ

 

おまけ

取材後、「5本指靴下ってどんなのがありますか?」と尋ねると、素材による履き心地や滑りやすさの違い、どんなお客さんに人気かなど詳しく教えてくださいました。
結局、入山さんがその時に履いていたものの色違いを購入。気持ちよくお買い物ができました。
ありがとうございました☆