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まゆといと

2026.06.15 移住-Iターン

染色作家 山崎美季さん【草木屋】

みなさんは「草木染め」と聞いて、どんな色を思い浮かべますか。

植物から抽出した色素で、布や糸を染める草木染め。同じ材料を使っても、その日の気温や湿度によって色合いが変わる奥深い世界です。

 

そんな草木染めの魅力と向き合いながら、妙義山の麓で創作活動を続けているのが、染色作家の山崎美季さん。

 

山崎さんは、昭和6年に曽祖父が創業した草木染め工房「草木屋」で、伝統を受け継ぎながら新たな表現にも挑戦しています。

 

今回は工房にお邪魔して、妙義での暮らしや創作活動、地域とのつながりについてお話を伺いました。

 

 

 

【山崎 美季さん プロフィール】

群馬県高崎市出身。東京藝術大学日本画専攻卒業。妙義に工房を構える「草木屋」で染色作家として活動する。草木染めの研究と作品制作を行う傍ら、展示会やイベントにも積極的に参加。旧軽井沢にある店舗は、夏期限定で営業している。

草木屋Instagram

 

 

 


 

 

受け継がれてきた手仕事

 

工房到着後、まずは手ぬぐいを染める作業を見せていただきました。刷毛に染料を含ませ、生地の上を引くようにして染めていく「引き染め」の工程です。

 

妙義は昼頃になると風が吹きやすいそうで、この日も時折風にあおられていましたが、山崎さんは慣れた手つきでサッサッと刷毛を引いていきます。

 

 

 

 

柄が黄色く染まっているように見えますが、これは糊の色。糊を塗った部分は染料が入らないため、最後に糊を落とすと元の生地の色が現れ、柄が浮かび上がります。

 

糊は市販のものは使わず、もち米粉や米ぬか、石灰を原料に手作りするのが、草木屋のやり方なのだそうです。

 

 

 

 

こちらは手ぬぐいの型紙。繊細な模様をカッターで切り出す工程は、最も神経を使う作業の一つとのこと。

 

三代目の父・樹彦さんは講習会の講師として全国を飛び回ることが多く、工房での制作は妹さんとほぼ二人で担っているそうです。

 

工房を見学させていただきながら感じたのは、一枚の手ぬぐいが完成するまでに、たくさんの試行錯誤が重ねられているということでした。

 

 

 


 

 

草木染めは終わりのない実験

 

― ご自身で草木染めを始めたのはいつ頃でしたか?

 

山崎さん:大学の学園祭で、自分が作ったものを販売するマーケットがあったんです。そこで草木染めの手ぬぐいを売ってみようと思い、制作したのが始まりです。

それまで草木屋では手ぬぐいをほとんど扱っていなかったのですが、いつの間にかメインの商品になっていきました。

 

 

 

 

― グラデーションが美しい草花の柄や、可愛らしい動物柄など、さまざまな手ぬぐいがありますね。図案は今も増え続けているのでしょうか。

 

山崎さん:あまり増やしすぎてもお客さんが選ぶのに困ってしまうと思うので、最近は調整しながらですが、年間5柄ほどのペースで新作を出しています。妹や母も図案を作っているので、少しずつ増えていきますね。

 

― 図案はどんな時に思いつきますか?

 

山崎さん:散歩をしたり旅行へ行ったりした時に、景色や花を見てイメージすることが多いです。展示会やイベントに合わせて新作を出すことが多いので、そのテーマに沿って考えることもあります。

 

 

 

 

― 草木染めの難しさと面白さについて教えてください。

 

山崎さん:一番難しいのは、同じ色を再現することです。特に着物のように全体を均一な色に仕上げなければならない作品では、一枚失敗すると全てやり直しになることもあります。そこが難しいところでもあり、面白いところでもありますね。

皆さん「草木染め」と聞くと、少しくすんだ色をイメージされるかもしれませんが、実は鮮やかな色も出るんです。植物の分量や煮出し時間、媒染の組み合わせによって、思い描いたきれいな色が出せた時はとても嬉しいですね。

 

― 理科の実験のような感じでしょうか?

 

山崎さん:試験管を使って、条件を変えて比較したりしています。本当に実験ですね。今まで使ったことのない植物で染めてみて、「案外染まるんだ」と発見することもありますし、昔から使われている植物でも、もっと良い染め方が見つかる可能性があります。

 

― ひいおじいさんの代から研究されていても、まだ研究し尽くされていないんですね。

 

山崎さん:まだまだだと思います。もちろん、先代、先々代が積み重ねてきた研究やレシピがあるので、それは役立てたいと思っています。自分で一から研究するのとは全く違いますから、そこは本当に感謝しています。

 

 

長年使用している染色用の大きな蒸し器

 

 

 


 

 

工房移転をきっかけに始まった妙義での暮らし

 

― 「草木屋」は山崎さんのお父さんの代で、工房兼ご自宅が高崎から妙義に移ったそうですね。

 

山崎さん:私が大学1年生の時に妙義へ移転しました。両親はあちこちで候補地を探した結果、草木屋の店舗がある軽井沢にも近く、いいところだということで妙義に決めたそうです。

私は引っ越し当時、大学の校舎がある茨城県で一人暮らしをしていたのですが、2年生からは上野の校舎になったので、電車で妙義と上野を行き来する生活を送りました。

 

― 新幹線で群馬から都内へ通勤する方はよく見かけますが、電車で妙義から毎日通学されていたとは驚きです。

 

山崎さん:大学で配られた名簿で私だけ住所が「群馬県」だったので、目立ちましたね(笑)。

卒業後はそのまま草木屋で活動を始め、この場所で制作を続けさせてもらっています。

 

 

地域の方が毎年届けてくれるという剪定した桜の枝。地域とのつながりの中からさまざまな色が生まれている。

 

 

― 暮らしてみて感じる、妙義の魅力を教えてください。

 

山崎さん:妙義は人との距離感がちょうどいい場所だと思います。近すぎず遠すぎず、必要なときには声をかけ合える関係と言いますか。ゆったりとした空気感がありながら、精力的に活動している方も多く、刺激を受けることがたくさんあります。作家さんも多いので横のつながりも生まれますし、そのちょうどよさが本当に心地いいですね。

妙義山という特別な山のパワーを近くで感じられることも魅力ですし、いざとなれば東京にも行きやすい距離なのも魅力だと思います。

 

 

 


 

 

作家とのつながりの先にある新たな表現

 

― 妙義ビジターセンターで毎年開催されている展覧会『妙義エンナーレ』では、大竹夏紀さん温井大介さんをはじめ、地域の作家さんと一緒に展示やワークショップをされていますね。みなさんとはどのようにして知り合ったのでしょうか?

 

山崎さん:草木屋の商品も置いてくださっている富岡の「はるもにあ」店主の熊倉さんが、大竹夏紀さんとつないでくださったんです。もともと大竹さんの作品が大好きだったので、本当に嬉しかったですね。

そこからずっと仲良くしていただいていて、『妙義エンナーレ』にもお声がけいただいています。

 

 

「妙義102エンナーレ!」での展示の様子

 

 

― 大竹さんも布を染めて作品づくりをされているので、共通点が多いですよね。

 

山崎さん:大竹さんは化学染料を使っていますが、「草木染めもやってみたい」とおっしゃってくださったことがあって。それで私が少しアドバイスをさせていただき、実際に作品も作ってくださいました。

自分たち以外の作家さんに草木染めに触れていただくことは、私たちにとってもプラスになりますし、こうして地域に根ざした形で活動できるのはとても良いことだなと思っています。

 

― 作家のみなさんから受ける刺激も大きいのでしょうか?

 

山崎さん:そうですね。皆さんそれぞれ芯を持って活動されていて、本当にすごくいい刺激になります。私自身も東京などでも活動したいと思っていますし、お互いに良い影響を与え合える関係になれたらいいなと思っています。

 

 

 

 

― 今後、新たに挑戦してみたいことはありますか?

 

山崎さん:地域の作家の皆さんから刺激を受ける中で、自分も新しいことに挑戦してみたいという思いがあります。

昔から漫画を描くことが好きだったんです。今も趣味で描いていますし、大学では日本画を学びました。そうした自分がこれまでやってきたことを、今の草木染めと融合できないかなと考えています。

 

― これまでの作品づくりとは少し違う表現になりそうですね。

 

山崎さん:これからは先代や先々代がやってこなかったような、自分なりの表現にも挑戦してみたいと思っています。

日本画には日本画の技法がありますし、草木染めにも草木染めならではの技法があります。それぞれ別のものとして考えてしまいがちなのですが、きっと共通する部分もあると思うんです。もう少し頭を柔らかくして、自分がこれまで学んできたことや好きだったことをうまく融合できたらいいなと思っています。

 

 

 

草木屋オンラインショップ (minne)

 

■ 草木屋 夏期店

・営業期間:7月中旬〜9月下旬(期間中は無休)

・営業時間:10時〜17時

・住所:長野県北佐久郡軽井沢町旧軽井沢754

 

 

 

 


 

 

 

にこやかに、そして丁寧に言葉を紡ぐ山崎さんの姿に、この妙義の空気が本当によく似合っていると感じました。

 

お話を伺う中で印象に残ったのは、「受け継ぐこと」への誠実さと、「自分らしい表現に挑戦したい」というまっすぐな思い。

 

妙義の豊かな自然や人とのつながりに支えられながら、これからどんな作品が生まれていくのでしょうか? 今後の活動も楽しみにしています。

 

 

 

 



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イラストレーター 山岸みつこさん

 

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