富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2021.10.15 レジャー、公園

100円持って歴史探訪『富岡市立 岡部温故館』

まゆといと編集部に、市役所文化課からこんな依頼が届きました。

 

 

「岡部温故館(おかべおんこかん)を取材しませんか?」

 

 

おぉ。知っていますよ、岡部温故館。

あれは富岡に移住したばかりの頃…出会いは美術博物館で見たチラシでした。

観光スポットとしてはかなり渋めな印象を受けましたが、行ってみたら意外と楽しめたことを覚えています。

 

 

…まゆといと読者のみなさんは、行ったことがない人が多そうだなぁ。

 

 

そう思いインスタグラムでアンケートを取ってみたところ、「岡部温故館に行ったことがある」と答えた人は、回答者86人中11人。「行ったことがない」という人が87%という結果でした。

 

これはお伝えする価値がありますね。それでは行ってみましょう!

 

 

 


 

 

 

岡部温故館はこんなところ

 

駐車場に立つ看板

 

 

富岡市上丹生の静かな場所に建つ、富岡市立岡部温故館。

 

舗装された広めの駐車場(運転初心者には嬉しいですね)に降り立ったら、駐車場と岡部温故館をつなぐ橋を渡ります。

 

 

橋の名の石碑

 

 

橋の名前は、まそほ橋。「まそほ」とは万葉集の歌に出てくる言葉で、「赤い土」を意味するそうです。

 

そしてもうひとつ豆知識を。この橋名の石碑の文字を書いたのは、富岡市出身の画家・福沢一郎さんなんですって!(福沢一郎さんのことを知らない方は、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館にも行ってみてくださいね。)

 

 

まそほ橋から見た岡部温故館

 

 

橋の向こう側の正面〜左に見える3棟の蔵が、岡部温故館です。右側には母屋が見えますが、そちらの建物は個人の住居のため中を見ることはできません。

 

個人宅の蔵のみが市の施設になっているのはなぜかと言うと…

 

岡部温故館はもともと、ここに住む岡部家が代々受け継いできた所蔵品を公開するために開設した、民間の施設でした。後にそれらが富岡市に寄付されたため、平成元年からは市が管理・運営を行うようになったのです。

 

 

取材日(9月)はサルスベリの花が綺麗でした。

 

 

まずは、蔵の手前にある建物で入館料を支払います。

「なんだ有料か」と引き返さないでください。大丈夫です。

 

中学生以下は無料。高校生以上は 100 円。ぐーちょきパスポートをお持ちの方は、2割引の 80 円で入館できちゃいます!

 

 

 

管理人の岡部亮子さん

 

 

靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて入館。すると、管理人の岡部亮子さんが岡部温故館のあらましについてお話ししてくださいました。

 

江戸時代後期から明治にかけて「麻」と「砥石」の取引を行い、この地方きっての豪商だったという岡部家。受け継がれてきた歴史資料や美術品の数々とは、一体どういったものなのでしょうか…?

 

 

 

 


 

 

 

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〈1号館〉先人たちの美意識に触れる

 

 

最も奥にある白壁の蔵が1号館

 

 

3つの蔵はそれぞれ1号館、2号館、3号館と3つの展示室になっています。

見学の順番に決まりはなく自由に行き来することができますが、今回は岡部さんと一緒に1号館から見ていきましょう。

 

 

「1号館はお殿様からいただいたりお預かりしたものが入っている蔵なので、他の蔵とは格が違うんです。天井も『格天井(ごうてんじょう)』で、2種類の違う木材を組み合せて作られています。」

 

 

1号館1階の天井

 

 

確かに、神社やお寺などの格式の高いお部屋でよく見る天井ですね。

ところでこちらの収蔵品は、自然と岡部家に集まってきたものが多いそうですが、お殿様から預かった物まであるんですか!?

 

「岡部家は小幡藩の御用商人だったため、お殿様や武家の方からお預かりしたものがあります。ただ、証言は全く残っていないため、伝え聞いた話となります。」

 

 

蒔絵火鉢やお椀、柄鏡、日露戦争凱旋記念絵はがきなど

 

墨が入った巻物、矢立(携帯用筆記具)、16ミリフィルム、かんざしなど

 

 

岡部家が群馬県でも有数の豪商・豪農だったことを考えると、博物館級のものがあってもおかしくはないですよね。大きな屏風絵まであり、美術館と同じように展示されています。

 

「こちらの屏風に描かれているのは丹頂鶴ですね。丹頂鶴の丹という字には『赤』という意味があります。丹生の丹と同じ字です。」

 

丹生、、丹、、赤、、まそほ、、、橋の名前とつながりました!

 

 

1号館2階展示風景

 

書籍

 

 

昔の絵本や「北斎漫画」もありますね。イラスト好きとしてはかなり楽しいコーナーです。

 

「年に一度の展示替えの際に、富岡市立美術博物館の学芸員さんがイチオシのページを開いていかれるんです。」

 

ということは、毎年違うページが見られるということですね!学芸員さんがなぜ「このページを見て欲しい」と思ったのかを考えるのも面白そうです。

 

 


箪笥階段と、1号館2階の引き戸

 

 

「ところでこちらの蔵には、防犯設備があるんです。ひとつは、タンスとしての機能も持っているこちらの階段。上、中、下と3つに分かれていて、泥棒が上がれないように一番上は外しておくことができます。

もうひとつは、2階の窓の戸です。六角形の歯車が仕込んであるそうで、開け締めするとガタガタと大きな音が鳴ります。」

 

そんな仕掛けまで!昔の人の知恵が詰まっていますね。

 

この蔵が建てられた年代は「不明」とのことなので、詳しい方はこういったところから推理してみてはいかがでしょうか?

 

 

 


 

 

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〈2号館〉時代劇の世界にタイムスリップ

 

 

龍吐水、座繰り器、唐箕、麻風呂、下駄、おひつ入れなど

 

 

「2号館は、民具・農具が展示されています。岡部家が取引をしていた『麻』に関する道具もあります。この辺りは『南麻(みなみあさ)』と呼ばれる麻の産地でしたが、繭の生産に押されて廃れてしまいました。その『南麻』に対して『北麻(きたあさ)』と呼ばれていたのが、日本一の品質と言われる東吾妻町岩島地区の麻だそうです。」

 

富岡と言えば「生糸」のイメージなので、麻の産地だったことは意外でした。道具と一緒に岩島麻保存会の資料も展示されているため、植物が糸になるまでの工程をこちらで学ぶこともできます。

 

他にも、火災時に使われたという木製の火消しポンプ「龍吐水」や「さすまた」から、当時の消火活動を想像することもできますよ。

 

 

和箪笥、火鉢、炭入れ、蓄音機、龕灯、枕行灯など

 

 

生活道具の中で私が特に気になったのが、上の写真左下の「龕灯(がんどう)」。どの向きに傾けてもロウソクが常に上を向く仕組みで、横に持つと進行方向だけが明るくなり、立てれば灯りを隠すこともできる優れものです。

 

月の満ち欠けをモチーフにした枕行灯、夕顔の実をくり抜いた炭入れなども素敵で、今の生活にも取り入れたくなってしまいます。。

 

頭上の曲がった梁にも注目ですよ ↓

 

 

2号館2階展示風景

 

 

おじいちゃんおばあちゃんと一緒に来ればいろんなお話が聞けそうですし、今後時代劇を見た時には「岡部温故館で見たやつだ!」となるかもしれませんね。

 

 

 


 

 

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〈3号館〉地域ゆかりの作家と栄信さん

 

 

3号館展示風景

 

 

書や掛け軸などが展示されている3号館。

画家の新井洞巌や俳人の村上鬼城といった、群馬ゆかりの作家による作品が多く並んでいます。

 

こちらも年に一度展示替えが行われるそうなので、毎年チェックしたいところですね。

 

また、本人の著作物とともに、岡部家の現当主の祖父にあたる岡部栄信翁(1886年〜1965年)を紹介しています。

 

 

岡部栄信翁コーナー

 

 

丹生村の村長などをつとめ、この地域の発展に貢献したという栄信さん。人望が厚く、なんとファンクラブも存在していたとか!

村に電気を通したお話や道路を作ったお話など数々のエピソードを聞いていたら、「私も栄信さんに会ってみたかったなぁ」という気持ちに…。

 

どんな人だったのか気になる方は、ぜひ管理人さんにたずねてみてください。

 

 

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さて、すべての展示室をご紹介しましたが、かなり幅広いジャンルの展示物がありましたね。写真に写っていないものもたくさんあるので、なかなかの見応えですよ!

 

 

 


 

 

 

管理人・岡部亮子さんに聞いてみました

 

 

屋外にある大きな釜は、味噌や醤油づくり、蒸留等に使われたと見られている。

 

 

 

ー 普段は展示品の解説はされているんですか?

 

岡部さん:普段はしていませんが、希望があれば説明しています。

 

 

― とても解説がお上手だったのですが、そういったお仕事をされていたんですか?

 

岡部さん:いいえ、お喋りが好きなだけです(笑)もともと歴史にはまったく興味がなかったんですが、お客様に教えられたことから疑問を持って調べ始めているうちに知識が増えました。一応、博物館学の勉強もして学芸員資格は取得していますが、興味の幅が広いのであまり知識は深くないんですよ。

 

 

― どういったお客さんが来ていますか?

 

岡部さん:地域の歴史が好きな人が多いです。麻や砥石のことを調べている人や、群馬県立歴史博物館から紹介されて来た人もいました。市内に移住したばかりで「富岡のことを知りたい」と来る人も多いです。

 

 

― 岡部さんも市外のご出身だそうですが、丹生にお嫁に来た時の印象はどうでしたか?

 

岡部さん:丹生だけでなく富岡全体が、とても穏やかな雰囲気なので驚きました。いいところに来たな〜と思いましたね。

 

 

ー どのように岡部温故館を利用してもらいたいですか?

 

岡部さん:「歴史」というと教科書の中のことだと思われがちですが、自分たちの住んでいる所のことだって「歴史」なんですよね。ぜひ興味を持って、じっくり見ていって欲しいと思います。

場所もちょっと奥まっていて落ち着いた所なので、リラックスしに来ていただければありがたいですね。目の前が桜の木で綺麗なんですよ。

 

 

岡部温故館前の桜

 

 

◎岡部温故館についての詳しい情報は、下記のページからもご覧いただけます。

富岡市ホームページ|岡部温故館

 

 

 


 

 

アクセス

 

近くには「丹生のひまわり畑」や「ほたるの里」があり、とても長閑な場所にある岡部温故館。周辺をのんびりお散歩するのもオススメです。

雨の日のお出かけの選択肢にも、ぜひ入れておいてくださいね。

 

■ 開館時間

午前10時から午後4時まで(入館は午後3時30分まで)

 

■ 休館日

月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日から1月3日まで)、その他臨時休館有

注:12月28日と1月4日が月曜日の場合は、その日も合わせて年末年始の休館とさせていただきます。

 

 

 

群馬県富岡市上丹生2395‎
TEL:0274-67-3791‎

 

 

(ナカヤマ)

 

 


 

 

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