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まゆといと

2023.09.22 生活、イベント等

密着!大島火まつりの舞台裏

夏のお盆の夜、大島地区の山の斜面に浮かび上がる火文字。

その年の願いを込めて住民が決める文字を、「今年は何だろう?」と毎年予想している人も多いのではないでしょうか。

 

 

コロナ禍だった過去3年間の火文字。(写真上:令和2年、左下:令和3年、右下:令和4年)

 

 

旧盆の8月16日に行われる「大島火まつり」(またの名を「大島百八灯」)は、大島地区で奈良時代から約1300年続いていると言われる伝統行事です。

 

祖先の霊を迎え、送るお盆の行事「百八灯」。市内の複数の地域で行われていますが、火文字をつくるのは大島だけ。しかも毎年火文字の文字を変えるという形態は珍しく、祖霊信仰と人々の祈りが結びついた貴重な行事として、富岡市の重要民俗文化財に指定されています。

 

大島火まつり/8月16日|しるくるとみおか

 

 

 

同じ日に富岡花火大会が行われることもあり、私も毎年楽しみにしている大島火まつり。今年はなんと、富岡市観光協会の協力のもと、現地でその様子を取材できることになったのです!

 

文字はどのように決めるの?

何人くらいで準備するのかな?

どうやってあんなに大きな文字を綺麗に作るの?

火を自宅まで持ち帰るという噂は本当?

 

…などなど、素朴な疑問をたくさん抱えて、いざ大島へ!

 

 

点火場所は大島地区南部城山の北面山腹。(当日は関係者以外立入禁止)

 

 

 

 


 

 

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■ 17時00分ごろ 山の斜面の下に集合

 

 

 

火まつり当日の17時。点火場所のすぐ下の道路に、ひとり、またひとりと、徒歩で住民のみなさんが集まってきました。それぞれ手には、金属製の棒がたくさん入った袋と、1本の長い棒を持っています。

 

袋に入った棒は、地面に刺して文字を作るためのたいまつ。近くの倉庫に保管してあり、1軒あたり12本が割り当てられているそうです。

 

 

棒に溶接してある筒に、各自で布を詰めておく。

 

 

たいまつの形状は時代によって変化していて、昔は麦藁をしばって竹の先に付けたものだったのが、昭和37年からは竹筒に布を入れたものになり、昭和47年から現在の金属製になったのだとか。

 

そして長い方の棒は、文字に点火する時に使用するたいまつ。鉄や竹の棒の先に布を巻き、自宅から持って来るそうです。

 

 

慣れていない人に布の巻き方を教える場面も。

 

 

 

みなさんが揃うまでの間、区長の松井さんと、最年長メンバーの斉藤さんにお話を伺いました。

 

 

今年の最年長の斉藤さん(写真左)と、大島区長の松井さん(写真右)。

 

 

― 火まつりは大島地区の何軒のご家庭で行っているのでしょうか?

 

松井さん:今年は22軒です。多い時で26軒ありましたが、人口が減っている地域なので、この先も減っていくと思います。

 

― それぞれの家の代表者として集まったみなさんを見ると、若い方が多いですね。

 

松井さん:急斜面を登りますからね。今年のメンバーは20代から70代です。普段は別の場所に住んでいて、この日のために帰って来る人も多いですよ。

 

― 事前の準備もみなさんで行うのでしょうか。

 

松井さん:下草刈りを7月後半に行いました。道路清掃の日と同じように住民全員に連絡が回って、地区内の他の場所の草刈りも同時に行っています。

 

― この行事が地域にどんな影響をもたらしていると思いますか?

 

松井さん:この百八灯と北向観音の祭りの時に、住民の団結を感じますね。

 

― 最年長の斉藤さんは、いつ頃から参加されているのでしょうか。

 

斉藤さん:今70歳で、デビューしたのが18歳。皆勤賞だ。

 

― それはすごい!ちなみに中止になった年って…ない?戦後は毎年必ずやっているんですか!それもすごいですね。

 

 

 


 

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■17時30分 山の斜面へ

 

 

そうこうしているうちに、みなさんが軽トラックにたいまつを積み始めました。

 

 

 

 

点火場所の中腹につながる道路が数年前に整備され、重い荷物は車で運べるようになったそうです。

 

 

 

 

メンバーが全員揃ったところで、区長の松井さんと、現場のリーダーである区長代理の小間さんが挨拶。いよいよ点火場所に向かいます。

 

 

 

 

みなさんの後に続いて、私も歩いて登ってみました。

 

 

 

 

見てくださいこの角度。30度はありますよね。

 

 

 

 

実際にその場に立ってみると、坂というか壁です。

私も杖が欲しい…

 

 

 

 

滑り落ちそうで怖かったですが、なんとか中腹まで到着!いい景色!

高速道路が開通する前の点火場所は、もう少し下の方だったそうです。

 

するとここで、しばし下界を眺めながらの世間話タイム。

ずいぶん時間に余裕があるなぁと思ったら、地面が乾燥している場合、山に燃え移らないよう下草を焼き払う必要があるが、今日は行わない。」とのこと。今年は雨で地面が湿っていて、手間がひとつ省けたようです。

 

 

 


 

 

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■18時10分ごろ 文字を決める

 

 

 

 

18時を過ぎたところで斜面のまんなかに集まりました。ここでようやく文字決めです。

 

文字にルールはなく、以前使われた文字でもいいですし、漢字で一文字という決まりもありません。過去の文字を調べると「雨」や「水」など農業に関する願いを込めた文字が目立ちますが、ひらがなや数字、二文字の年もあったようです。

 

文字決めの方法は、案を考えてきた人がその理由も含めて発表し、候補が出揃ったら多数決で決めるというシンプルなもの。

いつも揉めることなく短時間で決まるそうで、今年も5分もかからずに決まっていました!

 

 

 


 

 

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■18時30分 文字を作る

 

 

ロープを持って斜面を上り下りする小間さん。

 

 

薄暗くなってきたところで、いよいよ文字を作る作業が始まりました。区長代理の小間さんと組長さんらが中心となって、最も重要な中心線を決めるところから行います。

 

メジャーで測るようなことはせず、使用するのはロープのみ。文字の大きさを「横12ひろ(両手を広げた時の長さ)くらい」と表現していたので、ここにも細かい決まりはなく、これまでの経験を頼りに進めている様子でした。

 

 

 

 

しばらくすると、全員で金属製のたいまつを地面に刺し始めました。これが文字になります。

今年は画数が少ないため、間隔がだいぶ狭いようです。

 

 

 

 

続いて、やかんに移した灯油を、布を詰めた筒の中に注いでいきます。

 

全てのたいまつに灯油を注いだら、準備完了の合図となるロケット花火を打ち上げて、あとは点火時間を待つのみです。

 

 

 

 


 

 

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■19時30分 点火

 

 

 

 

点火時間を知らせる花火が上がると、次々とたいまつに火をともしていくみなさん。あっという間に視界が炎の海になり、離れた場所にいても熱を感じました。

上から下まで同時に点火するため、文字によっては、炎に囲まれ逃げ場がなくなる可能性もあるそうな。。

 

急いで下山し、民家があるところまで来て振り返ると…

 

 

 

 

今年の文字「上」が美しく燃えていました!!

 

景気の上昇を願って決めた「上」という文字。

暗闇に明るく浮かび上がるその文字を眺めているだけで、不思議と前向きな気持ちが湧いてきます。

 

 

 

 

ひと仕事終えたみなさんも、たいまつを持って下山。まずは自宅に帰ります。

たいまつに火がついたまま持ち帰る人もいれば、すぐに消してしまう人も。

火の扱いは、それぞれの家庭で異なるようです。

 

 

 

 

民家のまわりには、火文字と富岡市花火大会の両方を眺める住民のみなさんの姿がありました。

 

そして大島公会堂を覗くと…

 

 

 

 

直会の準備が整っており、一旦帰宅したメンバーが訪れるのを区長の松井さんが待っていました。

 

宴の様子も気になりますが、全身汗でベトベトの私はこれにて退散。

山に残したたいまつは、翌日片付けるそうです。

 

 

★火まつりの様子を動画で見たい方は、富岡市観光協会のYoutube動画をご覧ください👇

『令和3年度大島火まつり&富岡花火大会』

 

 

 

 


 

 

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「これがなくちゃ夏が終わらない」

 

 

 

 

みなさんからお話を伺っている時に、祭りのたびに埼玉県から帰省しているという方が、こんなことをおっしゃっていました。

 

「ここ3年はコロナで来られなかったけれど、今年はやっと参加することができた!百八灯をやらないと夏が終わらないし、冬は北向観音をやってようやく春が来るという気分になるんだよ。」

 

区長の松井さんも話していた「北向観音」とは、大島の西端の山腹に鎮座する北向観音堂で1月に行われる例祭のこと。参拝した人が厄除けとして崖の上から銭を投げ、それを崖の下で子どもたちが拾うという、一風変わった光景が見られる祭りです。

 

北向観音例祭・大島/1月第2日曜日

 

 

2つの歴史ある祭りを受け継ぎ、守り続けている大島の人たち。大変なことも多々あるとは思いますが、子どもの頃からそれが当たり前といった様子のみなさんを見て、ちょっと羨ましい気持ちになりました。

 

また、年上の方々が作業中に出しゃばらないようにしている様子だったり、下山後に若いメンバーの方が「なかなか経験できないことなので楽しかったです。」と話してくれたことも、とても印象的でした。

 

ぜひ誇りを持ってこの行事を続けていって欲しい!美しい火文字を見て「夏が終わるなぁ」と毎年思わせて欲しい!と、心から願っています。

 

(ナカヤマ)

 

 


 

 

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