富岡市内最大のお祭り「富岡どんとまつり」が10月15日(土)・16日(日)に4年ぶりに開催されます。
山車やお囃子はもちろん楽しみですが、まゆといとでは今回、15日(土)にしるくるひろばステージで披露される「郷土芸能」に注目!
出演予定の15団体のうち、取材に立候補してくださった4団体の練習場所にお邪魔して、その歴史や見どころを伺ってきました。
「郷土芸能はよくわからない」という方も大丈夫!昔の文化に興味があるみなさん、地域に溶け込みたいみなさん、音楽や踊りが好きなみなさんも、必見です!
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【稲荷下り葉流宇田獅子舞保存会】
獅子舞といえばお正月に頭を噛むあの姿しか知らなかった私は、市内の神社で初めて獅子舞を見た時にビックリ!三匹のシュッとした獅子が太鼓を叩きながら、脚を高く上げて舞っているではありませんか。
獅子頭を被り太鼓を腹にくくりつけた状態で、腰を落として踏み込んだり跳ねたり…。その身体能力の高さに「カッコいい!」と惚れ惚れしました。
富岡どんとまつりのステージには、獅子舞保存会だけでも6地区の団体(内匠・中北・中高瀬・下丹生・宇田・中里)が出演。
今回はその中から、宇田の獅子舞をご紹介します。
宇田の獅子舞は、承保元年(1074年)中秋に始まったと言われています。900年以上の歴史があるんですね!
日照りや大雨などの気象現象は神の怒りであるとして、獅子舞を神々に奉納して地域の安泰を祈ったのが始まりとされています。
ここで気になる伝説が。現存の古い獅子頭には「宝永四年宇田村」(1707年)の墨書があるのですが、その年は天然痘が流行した年。木製の獅子頭を供えたところ病が治まり、大豊作をもたらしたと言われているそうです。
篠笛の昔の譜面を見せてもらうと…トヒヒヤルトーヒヨ???楽譜ではなく、口伝で伝えられてきたんですね。
最近では、押さえる穴の番号を書き込んだものを使っているそうです。
どの演目も冒頭は共通していて、
“山奥にいる獅子たちが外に出て遊ぼうと、まずは一番強い獅子が外に出て外敵がいないかを確認し、安全なことがわかると二匹目を呼びに行く。同様に二匹目が三匹目を呼びに行き、一緒に舞い遊ぶ。”
という内容なんだそう。
今回の富岡どんとまつりで披露する演目は『碁盤』。三匹の獅子が囲碁を打ったり、碁盤の真っ直ぐな線を引く場面があります。
わかりやすい動きなので、ぜひ覚えておいてください🎶
ちなみに獅子は横に並んだ時の両脇が雄で、真ん中が雌です。獅子頭に雌雄の違いがあるので、よーく見てみてくださいね。
◆メンバー募集◆
稲荷下り葉流宇田獅子舞保存会では会員を募集しています。
練習は宇田集落センターで月2回。
年齢、性別、お住まいは問いません。
問合せ先:富岡市役所文化課(0274-60-1230)
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【宮崎八木節保存会】
私が初めて八木節を見たのは、富岡に移り住んだ年に開催された富岡どんとまつりのステージ。樽を軽快なリズムで叩きながら伸びやかな声で「は〜〜あああああ〜〜〜」と歌うその様子は、一度で頭に焼き付き離れなくなりました。
今年の富岡どんとまつりのステージは、八木節は5団体(上州浅香入・宮崎・富岡交通安全協会・神農原・妙義)が出演。今回はその中から、宮崎と妙義の八木節をご紹介します。
宮崎八木節保存会は昭和8年、二代目堀込源太の流れをくむ北甘楽郡小幡町の結城春吉の指導のもとに結成されました。その後一時中断し、昭和45年に再結成。昭和53年には小学生による「チビッ子八木節」を結成し、地区の女性たちも参加するようになったそうです。
宮崎の八木節の大きな特徴は、子どもが音頭を取って大人が踊る演目があることだそう。
今年その音頭取りを担うのは、一ノ宮小6年生の数野千明さん。締太鼓を担当するお父さんと一緒に練習に参加しています。
小学校低学年の頃から八木節保存会に参加しているという千明さんに、お話を聞きました。
「ずっと先輩たちを見てきて、“いつか自分も歌うんだ” と思っていました。やってみると、昔の言葉が難しかったり、音の長さとか、お客さんに聞こえづらくないかとか、気にすることが多くて大変ですが、元々歌うことが好きだったので楽しいです。」
「今、小学生が私と小4の女の子の2人しかいないんです。宮崎の八木節は子どもが音頭をとるのが特徴なので、新しい人が入ってくれるといいなと思っています。」
しっかりとした受け答えをしてくれた千明さん。たくさんの人の前での披露は緊張も大きいと思いますが、とても貴重な経験ですよね。
メンバーの年齢は10歳から74歳。練習前に輪になっておしゃべりしている様子がとても自然だったので、「親子が何組かいるんですか?」と訪ねたところ、ほぼ他人同士と聞いてびっくり。
今の時代に、地域の人たちが世代を超えてこんな風に交流できるなんて…と、なんだかジーンとしました。
富岡どんとまつり当日の演目は、千明さんが歌う『上州八木節音頭』と、大人が歌う『国定忠治』です。音頭とりとしての初ステージを踏む千明さんを、ぜひ応援してくださいね。
◆メンバー募集◆
宮崎八木節保存会では会員を募集しています。
練習は宮崎西公会堂で、発表の1ヶ月前から週1回。
年齢、性別、お住まいは問いません。
問合せ先:富岡市役所文化課(0274-60-1230)
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【妙義八木節保存会】
妙義八木節の始まりは100年以上前の大正初期。妙義町諸戸地区の若い人たちが、地域のお祭りを賑やかにしようと始めたと言われています。戦争などで一旦途切れたものの、継承のために有志が集まり復活。それ以来、町内外のイベントや自主開催の「ふるさと若葉まつり」など、コロナ前までは年間を通して様々な発表の場があったそうです。
妙義八木節の特徴は、大正時代から続く「源太踊り」という形を崩さずに踊っていること。会長の田村典緒さん曰く、
「見てもらえば他の団体の八木節とは全く違うことがわかると思います。“男踊り”と呼ばれる踊り方で、腰を低く落とすのが特徴です。毎週練習していれば踊れますが、練習を休んでしまうと脚がすぐに筋肉痛になるんですよ。」
とのこと。
練習を見させてもらうと、確かに上下運動が激しく、床の振動からも力強さが伝わってきました。これは足腰がかなり鍛えられそうだな〜と思いながら70〜80歳の踊り手さんたちに目をやると… 激しい動きを15分近く続けていたにもかかわらず、多少の息切れだけでまだまだ元気ではありませんか!
伝統文化の継承だけでなく、美しく歳を重ねるためのトレーニングもできちゃいますね。
「私はお嫁に来た時からずっと続けています。夫婦や兄妹、親子でやっている人たちばかりで、おじいちゃんおばあちゃんから孫まで世代を超えてみんな仲良しなんです。それが大正時代からずっと続いてきた秘訣のひとつだと思います。」
と70代の女性。みなさんを見ていると本当に仲が良くて、まるでひとつの大きな家族のようでした。
富岡どんとまつり当日の演目は2曲。『妙義紅葉ライン』を歌う宮下仁美さんは、民謡で全国3位、NHKのど自慢の富岡市大会でチャンピオンの実績!!また、『国定忠治』を歌う田村章光さんは、妙義八木節の継承者として内閣府から表彰を受けたこともあるそうです。
過去には桐生の八木節競演大会で優勝経験もある妙義八木節保存会。歌と踊りの迫力をぜひ味わってみてください。
◆メンバー募集◆
妙義八木節保存会では会員を募集しています。
練習は妙義世代交流館で、毎週金曜日の夜に行っています。
年齢、性別、お住まいは問いません。
問合せ先:富岡市役所文化課(0274-60-1230)
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【貫前音頭一ノ宮小唄保存会】
『貫前音頭』と『一ノ宮小唄』は、昭和40年代の初めに地域の歌が盛んに作られたころ、群馬県婦人会連合会の「踊りの歌を作ろう」という活動により作られた歌と踊りです。地元の鈴木比呂志先生作詞、横田金治先生作曲により、昭和42年に誕生しました。
この二曲は一ノ宮地区の盆踊りと一ノ宮小学校の運動会では必ず踊られているため、確実に次の世代へと受け継がれているとのこと。踊りは難しくなく、繰り返しが多いので、みなさんすぐに思い出して踊ることができるそう。
世代を超えて共通の記憶として残る故郷の歌と踊りがあるなんて、素敵ですよね。
「貫前さまは いつもみんなの いつもみんなの 守り神」のところで手を合わせる仕草をする『貫前音頭』と、一ノ宮地区の春夏秋冬を歌った『一ノ宮小唄』。
宮崎や宇田といった地名や「二年参り」「からっ風」などの群馬らしい言葉が出てくるので、よく聞いてみてくださいね。
富岡どんとまつり当日は、歌詞が入ったお揃いの浴衣にも注目!
夏祭りの盆踊りのように、みようみまねで一緒に踊ってもいいかもしれませんね♬
現在の活動はお祭りの前に練習を行うのみですが、「今後は活動を月1回に増やし、施設の訪問なども行いたい」と話す小林清孝会長。他の地区からの参加も大歓迎だそうです。
◆メンバー募集◆
貫前音頭一ノ宮小唄保存会では会員を募集しています。
練習場所は一ノ宮公民館。年齢、性別、お住まいは問いません。
問合せ先:富岡市役所文化課(0274-60-1230)または一ノ宮公民館
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まだまだある!市内の郷土芸能保存会
富岡どんとまつりのしるくるひろばステージでは、上記の団体の他にも「高瀬小唄保存会」、「菅原神社太々神楽保存会」、「丹生神社太々神楽保存会」など計15団体が発表を行います。
郷土芸能の保存会って、たくさんあるんだな〜。と思いましたか?思いますよね?ですが富岡市内で活動している郷土芸能保存会は、もっともっとたくさんあるんです!
その数なんと、28団体!!!
みなさんが住んでいる地区にもありましたか?
私は今回の取材をきっかけに、郷土芸能を「見る」だけではなく「やる」方にもむくむくと興味がわいてきました。単純に「かっこいい」と思ったのが一番の理由ですが、踊りや歌だけではない様々な知識を伝えていく場であること、人の温かみが感じられることなど、グッと来る瞬間がたくさんあったのです。
「郷土芸能をやってみたい」「見学に行ってみようかな」と思った方は、富岡市役所文化課(0274-60-1230)までお問い合わせください。
これまでは地区の人たちで継承してきた郷土芸能ですが、後継者が不足している今、どこから来ても大歓迎されること間違いなし!ですよ。
★第29回 富岡どんとまつりについて詳しくはこちら
⇒ しるくるとみおか
★下記リンクから、令和元年にかぶら文化ホールで行われた「富岡伝統芸能祭り」の動画を見ることができます。
⇒ 「富岡伝統芸能祭り」の様子を動画で公開しています(富岡市)
(ナカヤマ)