三月のとある土曜日、私は富岡公民館へと向かいました。
『入学準備会』と書かれた看板を眺めながら公民館の一室へ歩みを進めると…
そこには心温まる光景が広がっていました。
テーブルの上に並べられた、捨てるにはもったいない現役の体操服たち。
その体操服を手に取っては畳み直す、お母さんたちの晴れやかな笑顔。
「これはサイズ130だって、まだきれいだね。」
「こっちはちょっとシミがあるけど、、どうせ汚れちゃうから全然OK!」
そんな会話が弾み、これから始まる新学期への喜びが伝わってきます。
ここに集まっていたのは、家庭教育支援チーム『リンクる』のみなさんと、この春に富岡小学校の新一年生になるお子さんとお母さんたち。
この日は『入学準備会』と題して、着なくなった体操服の譲り渡しや、学校で使う布ぞうきんを縫うイベントが行われていました。
入学を控えたお子さんを持つ家庭では、新たな門出にワクワクする反面、これから始まる新しい世界に緊張したり、ちょっとした疑問を抱えていることもありますよね。
そんなお母さん、お父さん、そして子どもたちに寄り添い、優しい笑顔で迎えてくれる心地よいヒトと場所―― それが家庭教育支援チーム『リンクる』です。
《家庭教育支援とは?》
文部科学省では、孤立しがちな家庭や仕事で忙しい家庭などへの支援の充実を図るため、平成20年からの2年間、子育てサポーターや地域の様々な人々、専門家による「家庭教育支援チー ム」を組織し、学校や行政と連携して親同士のつながり作りや相談対応を行う取り組みを全国各地で行いました。これからも地域社会や学校、行政などが力を合わせ、子育て家庭の支えとなり、社会全体で子育てや家庭教育を応援していくことが求められます。
⇒ 家庭教育ってなんだろう? | 子供たちの未来をはぐくむ家庭教育 (mext.go.jp)
今回は、令和4年度から富岡小学校区・東中学校区で家庭教育支援活動をスタートした『リンクる』のみなさんに、いろいろなお話を伺いました。
『リンクる』のミホさん。
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みんなとつながる・リンクする場所
―『リンクる』とはどんなグループなのでしょうか?
ミホさん:私たちは、子育てをしている家庭を応援したい!という思いで活動をはじめたグループです。富岡小学校区・東中学校区の「地域」と「家庭」のつながり、「学校」と「地域」のつながりを育みながら、地域ぐるみで子育てをする “子育てしやすいまち” になったらいいな、と願っています。
― どのような活動を行っているのですか?
ミホさん:まずはリンクるを地域の人たちに知ってもらいたいと考え、みなさんに気軽に参加していただける『お下がり会』を開催しました。富小・東中の体操服や、入学式・卒業式に着るフォーマルウェア、東中の制服、ランドセル、新品同様の傘など、お譲り頂いたものを必要な方に繋ぐお手伝いをしています。 そして、『お下がり会』に来てくれるご家庭の保護者やお子さんたちとお喋りをしたり、楽しい時間を一緒に過ごしたりすることを大切にしています。
― 体操服のお下がりを循環できることは素晴らしい取り組みですね。とくに小学生は毎年どんどん成長していくので、お下がりを譲ってもらえるのは有難いですよね。
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子育てはひとりではできない
―『リンクる』を立ち上げようと思ったのはなぜですか?
ミホさん:私は富岡小学校の学校支援ボランティアグループ『とみさぽ』のコーディネーターをしているため、以前から地域の子どもたちや保護者たちとの関わりがありました。そんななか、子どもや家庭を取り巻く環境の変化を感じ、違和感のようなモヤモヤした感覚を覚えるようになったんです。その感覚の正体は「家庭の孤立」がきっかけで出来てしまったひずみかもしれない…と。
すでに孤立してしまった家庭に踏み入ることは、たやすいことではありません。 そこで「家庭の孤立」を未然に防ぐにはどんなことができるだろう?と考え、家庭教育支援チームを作り、できることから始めてみよう!という流れになったんです。
― 個人の思いだけで家庭教育支援チームを作るのは大変だったと思うのですが、どのように『リンクる』をカタチにしていったのでしょうか?
ミホさん:群馬県教育委員会が行っていた家庭教育についての研修会に参加していたところ、会場で県西部教育事務所の方に声をかけていただいたんです。私の長年にわたる『とみさぽ』での活動を活かして、地域の家庭教育支援に繋げてみませんか?といったお話でした。そこから 『リンクる』の基盤づくりをサポートしていただけることになりました。
しかし、ひとりでこの活動を進めていくのは難しいと思い、一緒にやっていく仲間が必要だと感じました。
『リンクる』の三人。左から、ナオミさん、ヨウコさん、ミホさん。
― そこで、ヨウコさんとナオミさんに声をかけたんですね。
ミホさん:最初にこの二人の顔が思い浮かび…私の計画に巻き込んでしまいました (笑)。「この活動を一緒にやっていこう!」と私から二人を口説いたのですが、正直葛藤もありました。私の思いに付き合わせちゃっていいのかな?って。 でも、最終的には私の考えに賛同してくれて、みんなでこの活動を楽しみながらやっていこう!ということでスタートしました。
私、ヨウコさん、ナオミさんは、それぞれの一番下の子どもが同級生で、7年前に富小でPTAの役員を一緒にやっていたんです。当時のPTA活動は、いつも楽しくて笑いが絶えない良い時間でした。なので「このメンバーならやっていける!」という自信がありました。
― 三人の役割分担などはありますか?
ミホさん:私たち三人は丸い輪のイメージで、それぞれの個性が上手くかみ合っていると思います。 私はやりたいことがいっぱいあって、イベントの案などをどんどん出しています。
ナオミさん:ヨウコさんは職業がら、日々子どもたちと過ごしているので、ワークショップなどは安心してお任せできますね。
ヨウコさん:『リンクる』のイベントではキッズスペースみたいな場を設けて、工作をしたりお話しをしたり、子どもたちと楽しく遊んでいます♪
ナオミちゃんは、物事を客観的に見て細かいところに気付いてくれます。
ミホさん:三人で話していると時々アツい気持ちが盛り上がっちゃうので、そこをヨウコさんとナオミちゃんがバランスよくまとめてくれているんだと思います。
― バランスが取れていて素晴らしいですね。
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ほっとひと息つける、そんな居場所になりたい
ー これからどんな活動をしていきたいですか?
ミホさん:『リンクる』は始めたばかりのチームなので、いろいろな経験を積みながら成長していきたいです。まずはコツコツと基盤を作っていくことが大事なので、子育てしている家庭の応援ができるイベントを毎月開催できたらいいな、と思っています。
最終的には、必要としている人にどうやって私たちを受け入れてもらえるか、が大きな課題だと思います。「孤立した家庭」から一歩外へ出てもらうために、私たちにどんなことができるのか…。 今はまだ模索中で簡単な道のりではないのですが、「地域にはあなたのことを気にかけている人がいる」ということ知ってもらって、みなさんの子育てをサポートしていけたら…と願っています。
そして、どんな些細なことでもいいから、いつでも私たちを頼ってほしいです。「話を聞いてもらうだけでスッキリする」ってこと、たくさんあると思います。子育ての合間にちょっと息抜き&お喋りしに来てくださいね!お子さんと一緒に参加できるイベントも、これからたくさん企画していきます♪
🌸🌸みんな気軽に遊びにきてね〜🌸🌸
『リンクる』では毎月定期的に《リンクるサロン》を開催予定です。
インスタグラムでサロン開催日や活動内容をお知らせするので、ぜひご覧ください!
今回お話を聞いてみて印象的だったのは、『リンクる』の三人がぽかぽかと温かい雰囲気をまとっていて、一緒にいて居心地が良かったということ。
はじめてお会いするのに「はじめまして感」が瞬く間になくなってしまう、『リンクる』の魔法…いや、 これは魔法ではなくて三人の笑顔と優しさが作り出している現実の世界。
カチカチに固まっていた心も、ここに来ればすっと溶けていくはず。そんな希望の光が見て取れて、この活動を応援したい!という気持ちがこみ上げてきました。
子育ての時間は、過ぎてしまえばあっという間かもしれないけれど、その渦中にいる時は “先の見えないトンネルをさまよっている” と感じる方もいるのではないでしょうか。
そんな大変な時こそ、ストレス発散や気分転換が大事。外へ目を向けてみれば、ミホさんのように手を差し伸べてくれる人は必ずいます。
「どうかひとりで悩まないで。」
「本当に必要な人へ、届いてほしい。」
そうお話しする三人のまなざしには、強さと優しさが溢れていました。
(マツオ)