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まゆといと

2026.05.15 地域で働く

受け継ぎ、つなぐ 表装の仕事【小澤表装】小澤 純さん

今回ご紹介するのは、先代のお父さんの後を継ぎ、「表装」の仕事をされている小澤表装の小澤純さんです。

 

実は小澤さん、過去にも「まゆといと」に登場していただいているので、覚えている方もいるかもしれません。

以前、私カネコが取材した富岡市消防団音楽隊で、隊長を務めていた小澤さん。現在は隊長を次の方へバトンタッチされましたが、今も音楽隊のトランペット奏者として活動を続けています。

 

☆当時の記事はこちら⇒ 「50年の歴史を使命を胸に【富岡市消防団音楽隊】

 

 

音楽隊の取材の際にも、音楽やトランペットについて熱く語ってくださった小澤さんに、本職である「表装」の仕事、そして大好きな音楽について、より深くお話を伺いました。

 

 

有限会社 小澤表装

 

 


 

 

 

大切な思いを継ぐ決意

 

― 表装の仕事とは、具体的にどんなお仕事ですか?

 

小澤さん:ひと言で言うなら、書画を飾りやすくするための加工でしょうか。掛け軸や絵を飾れるように加工したり、人に見せやすい形に仕立てる仕事です。

昔の家には床の間がありましたから、掛け軸を飾る家も多くありましたが、最近では床の間がある家が少なくなりました。

 

― そうですね。私の実家にも床の間のある部屋がありましたが、今の自宅にはありません。

 

小澤さん:最近では、書画などを額に入れて飾りたいという方や、掛け軸をリビングや部屋の壁に掛けられるようにしたいという注文もあります。今後は、床の間がなくても書画をカジュアルに楽しんでもらえるよう、広めていけたらと考えています。

 

 

「はるもにあ」にて、手ぬぐいを掛け軸に。部屋が明るくなりますね。

 

 

― こちらの会社では、いつ頃から表装の仕事をされているのでしょうか?

 

小澤さん:70年ほど前に父がこの仕事を始めました。父は富岡市の出身ですが、東京にある法道院というお寺と縁が深く、そこで表具の仕事を勧められたそうです。それ以来、父の代から日蓮正宗公認として御本尊様の表具を手掛けています。

 

― 小澤さんは、迷わずこのお仕事を継ごうと思われたのでしょうか?

 

小澤さん:私自身は最初から継ぐ意思があったわけではありません。でも、子どもの頃から父の仕事を見ていましたし、何となく自分も携わっていくのかなと思うようになりました。父がしていた仕事の中には古文書類もありましたから、その重要さや大切さを知っている自分が継ぐことに意味があるのでは、と思うようになったんです。

高校卒業後は県外の大学へ進学しましたが、大学4年生になると授業も少なくなったので、こちらへ戻って大学へ通いながら仕事を手伝うようになりました。もう40年ほどになりますね。

 

 

仕事では作業前後の写真撮影が必須。大切な物を扱うお仕事なんですね。

 

 

― 現在は表装だけでなく、修復作業もされているようですね。

 

小澤さん:御本尊様の修復をお受けしていますが、これが大変な作業なんです。中には古くなって剥落しているものもあります。御本尊様は紙なので、乾燥や劣化で傷みが激しく、バラバラの状態で送られてくるものもあるんです。それをパズルのように組み合わせて元の形に仕立てるのは、本当に大変な作業です。

 

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写真掲載はNGとのことでしたが、取材中に見せていただきました。修復依頼として届いた時の状態は、「こんなバラバラな状態で元に戻せるんですか?!」と思わず声が出てしまうほど。ビフォー・アフターの違いを皆さんにお見せしたいくらいでした。

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小澤さん:これは自分でも「よくやったな」と思います。バラバラになったものを少しずつ合わせて、元の形に近づけていきました。一日中ずっとできる作業ではないので、時間をつくりながら少しずつ進めて、一か月ほど掛かりましたね。無理かなと思っても、まずはやってみますよ。

 

― お話を伺っていると、細かい作業が多く、根気のいるお仕事だと感じました。

 

小澤さん:御本尊様の表具では、宗派によって決まりごともさまざまで、間違いのないよう気を遣いながら作業しています。これからは門戸を広げて、多くの宗派に対応できるようにしたいと考えています。

 

 

掛け軸の修復例

 

 

 

 


 

 

 

段取りと繊細な作業が、仕上がりを左右する

 

― 小澤さんは、旧韮塚製糸場にある肖像画の複製や、松雲社中展、安中市の東渓会書道展等の表装も手掛けているそうですね。

 

小澤さん:肖像画の複製は、表面が和紙で裏面が洋紙という特殊な紙に印刷されたものを仕立てました。和紙は滲んだり伸縮したりするので、加工が難しかったです。他にも、美術館のレプリカ制作の仕事なども受けています。

 

 

富岡市立美術博物館で毎年開催される松雲社中展の様子

 

 

小澤さん:毎年、松雲社中展様や安中市の東渓会様の表装をお受けしていますが、書道展は書家さんによって額装にしたり掛け軸にしたりと、仕立て方がさまざまです。作品数も多く、額装と掛け軸では裏打ちの方法も違うので大変ですね。納期が重なることもあるので、段取りをしっかり考えて作業を進めています。

 

― インスタグラムで拝見しましたが、市内の飲食店に飾られた半纏も素敵な仕上がりでした。

 

小澤さん:お店の方とは長い付き合いなんですが、「古い半纏が出てきて、店に飾りたいけれどどうしたらいいかな」と相談を受けたんです。野球のユニフォームを額装して飾っているのを見たことがあったので、半纏も同じようにしたらいいんじゃないかと提案しました。

半纏の背中のデザインが見えるように畳んでみたのですが、襟にある店名も出した方がカッコイイなと思って。襟の部分をカラーコピーして加工し、背中の文字と一緒に見せる形にしました。創業当時のもののようなので、元に戻せるよう、生地を切ることはせず、いろいろと考えながら仕上げました。

 

 

「和采屋 源氏」に飾られた半纏。えんじ色と濃紺のバランスが素敵ですね

 

 

パッと見ただけでは分かりませんが、裏話を聞くと、細部までこだわる小澤さんの思いが伝わってきます。

 

 

 


 

 

 

気分転換でオンオフを切り替える「音楽とバイク」

 

― 消防団音楽隊では、ソロ演奏もカッコよくこなす“トランペット一筋”の小澤さん。トランペットを始めて何年になるのでしょうか?

 

小澤さん:トランペット歴は半世紀になりますね。富岡小学校の鼓笛隊で始めて、中学・高校でも吹奏楽部で吹いていました。大学ではジャズ研究会に入り、卒業後は富岡に戻って市民吹奏楽団に再び参加しました。

というのも、富岡高校2年生の時に市民吹奏楽団が始まって、高校の先生に勧められて初期メンバーになったんです。

 

― 市民吹奏楽団でも活動されていたんですね。

 

小澤さん:市民吹奏楽団にも所属していましたが、甘楽町で活動しているジャズとラテンのビッグバンドにも誘われて、そちらにも20年ほど所属していました。ただ、消防団音楽隊の隊長になってからは音楽隊の活動が忙しく、ビッグバンドは離れました。でも今でもメンバーとの交流は続いています。

 

 

好きなバンドのコンサートは欠かさず観に行くというほど、音楽は聴くのも演奏するのも大好きなんだそうです。

 

 

― 本当にトランペットがお好きなんですね。トランペットの魅力は何ですか?

 

小澤さん:トランペットって、華やかさと暗さの両方を持ち合わせていると思うんです。パーンと高音で明るい音を出したり、渋さを出したい時には低音で演奏したり。テクニックによってさまざまな表情を出せるのが魅力ですね。

 

― トランペット愛がひしひしと伝わってきます。

 

小澤さん:それと、音楽のほかにバイクも好きなんです。50歳の時に大型バイクの免許を取りました。きっかけは、私の先輩が50歳でバイクの免許を取って、真っ黒に日焼けした姿を見た時に「かっこいいことしてるな…」と思ったんです(笑)。それで自分も免許を取ってみました。楽しいですよ。

 

 

 

 

― いくつになっても挑戦する気持ちが素晴らしいです。バイクで出掛けるのって気持ちよさそうですね。

 

小澤さん:毎年、仲間と伊豆半島まで出かけます。そうやって遊べる仲間がいるのは幸せなことですよね。大事な気分転換になっています。

 

 

 

有限会社小澤表装HP

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いかがでしたか?

表装の仕事は奥が深く、細かな作業を繰り返す根気のいるお仕事でした。どんな依頼でも「まずはやってみる」という小澤さんの前向きな姿勢を、私も見習いたいと思います!

 

また、仕事と自分の好きなことのオン・オフを上手に切り替えながら楽しんでいる小澤さん、とてもかっこいいですよね。今後も、どこかのイベントでトランペット愛あふれる演奏を聴けるのを楽しみにしています。

 

(カネコ)

 

 


 

 

 

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