富岡市民のちょっと自慢できるもの。みなさんは何を思い浮かべますか?
私は迷わず「動楽市がありますよ♪」と答えるでしょう。
『動楽市』は、しるくるひろばと旧富岡倉庫広場で春と秋の年二回開催されている、クラフト・フード・音楽などの複合イベントです。
始まった当初は小さなイベントでしたが、今では県内外から多くの人が訪れる県内屈指の一大イベントへと発展しています。
普段はお客さんとして動楽市でのお買い物や雰囲気を楽しんでいる私。しかし、もっと動楽市とお近づきになりたいという気持ちがむくむくと湧いてきました。
── 動楽市を創り出した人は誰?
── スタッフさんやクラフト出店者さん、パフォーマーの方にいろんなことを聞いてみたい!
動楽市への想いが溢れ出す今日このごろ…。よし、ここはじっくり調査してみよう!
ということで今回は、動楽市の中の人たちにスポットを当ててお届けします。
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動楽市の歴史
動楽市は、旧富岡倉庫のこの建物から始まった。
2010年に初開催され、今年で13年目を迎える動楽市。
当初は「食」「クラフト」「音楽」「ワークショップ」などを楽しめるイベントとして、旧富岡倉庫の乾燥場に店舗を構えていた『おかって市場』を会場に、こじんまりと開催されました。
第2回動楽市の様子(2010年)
徐々に出店者と来場者の数は増えていき、2013年からは道向かいのひかり公園も会場に。2018年の新市庁舎整備後は、公園に代わってしるくるひろば(市役所前広場)が会場となりました。
そして2019年、おかって市場の移転(乾燥場から3号倉庫へ)と旧富岡倉庫広場の整備を経て、現在のスタイルになっています。
しるくるひろば(上)と旧富岡倉庫広場(下)
今年の11月12日(日)に開催される秋の動楽市では、56軒のクラフト・ ショップと24軒の飲食店が並ぶ予定です。
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「動きのある街へ変えたい」
最初にお会いしたのは、動楽市実行委員会代表の高橋 喜美さんです。
おかって市場の創業者で動楽市実行委員会代表の高橋さん。
― どんなきっかけで動楽市というイベントを始められたのでしょうか?
高橋さん:富岡製糸場が注目される前の富岡の街は、どんよりとしていて「動き」がない場所だなと感じていました。そこで、富岡に人を呼んで人々が行き交うような「動き」のある場所を作りたいと思い、イベントをやってみることにしたんです。最初の頃は、知り合いのクラフト作家さんや飲食店をやっている人に声をかけて、小さなイベントとしてスタートしました。『動楽市』という名前の由来も、文字が表している通り「動くと楽しいですよ!」という思いが込められています。
― この13年間を振り返ってみて「動楽市をやっていて良かったな」と感じることはありますか?
高橋さん:動楽市を始めた当初は、「人やものごとが動き活気があふれる街」をイメージしながら活動をしていました。そこから10年以上経った今、このイベントに高崎や前橋から、さらには県外からも多くの方に足を運んでもらえるようになり、イメージしていたような場所になってくれたことに喜びを感じます。
それから、意図せずに「人の動き」が富岡の街なかへと流れてくれたのも、嬉しいことのひとつですね。 動楽市に来たついでにふらっと街なかを散歩して、昔ながらの飲食店やお店に立ち寄ってもらえて。そんな人の動きが生まれたことは良かったなと思います。
そして、動楽市を通して若い作家さんと知り合い、交流できることがとてもありがたいですね。この動楽市がきっかけとなってさらなる躍進を遂げた作家さんの活躍を見ていると、こちらも嬉しくなります。
おかって市場店内には、過去に動楽市に出店していた人気作家の商品も並ぶ。
― では、大変なことや困ったことなどはありますか?
高橋さん:今の動楽市の切実な問題は…運営スタッフの高齢化かな(笑)。 もう10年以上お手伝いをしてくれているスタッフから、「ヒザに水がたまった」「肩が上がらない」なんて声も聞いたりしてね。テントの組み立てや会場の設営などで力仕事が多いので、若いスタッフが入ってくれたら本当に助かります。もしも「動楽市のスタッフをやってみたい」という方がいたら、ぜひお声がけください。
― なるほど、動楽市の継続には、スタッフの若返りが大きなウェイトを占めますね。まゆといとでも募集のお手伝いをさせていただきます! 最後に、これからの動楽市はどんな感じになっていくのでしょうか?
高橋さん:今の動楽市はほぼ完成形になっていると思っています。みんなが笑顔で楽しめる雰囲気が一番大切で、運営側があんまり頑張りすぎてもいけない。ちょっとゆるくて自由な雰囲気が動楽市の魅力なので、今のまま、このままが良いのだろうなと。今のカタチを変えずに、会場で出店者とお客さんが楽しめる雰囲気をこれからも大切にしていきたいです。
― 高橋さん、ありがとうございました!
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「動楽市とともに歩んだ10年間」
続いてお話をお聞きしたのは、動楽市実行委員会スタッフのつぶさんです。
― いつごろから動楽市のスタッフをされていますか?
つぶさん:以前から動楽市の大ファンで、お客として足を運んでいました。そんななかスタッフの方にお声がけいただいて、2013年秋の動楽市からスタッフとしてお手伝いをさせていただいています。10年くらいお手伝いをするなかで、出店者さんとお話ししたり、スタッフ同士の交流もあったりで動楽市がますます好きになっていき、「スタッフになって良かったな」と改めて実感しています。
― つぶさんの動楽市での役割はなんでしょうか?
つぶさん:メインの役割は動楽市の全体を撮影する「記録係」で、出店者さんのテントを回りながらお店の雰囲気を撮影しています。年々出店数も多くなっているので全ての撮影となると時間がかかってしまって、たまにはじっくりとお店を見て回りたいな、なんて思うこともありますが(笑)。ですがお客として楽しんでいた頃とは別の視点で動楽市を見ることができて、スタッフとしてこの雰囲気の中に身を置くことがとても心地良いので、こうして関われることをとても嬉しく誇りに思っています。本当に大好きなイベントなので、これからも長きにわたり関わっていけたらいいなと思っています。
― そうなんですね、つぶさんの動楽市への思いが伝わってきます。では、動楽市のどんなところが魅力だと思いますか?
つぶさん:どの出店者さんも魅力的でクオリティーが高く、それぞれのお店の世界観を大切にしているところが素晴らしいと思います。そんな素敵なお店が並び、美味しい食べ物があって音楽も楽しめて、みんながゆったりと笑顔で過ごしている。そんな自由でのびのびとした会場の雰囲気が、よりいっそう動楽市を豊かなものにしているんでしょうね。これもひとえに、代表の高橋さんのなせる業なんだろうなと思っています。
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「この雰囲気に包まれるよろこび」
続いて、クラフト作家さんにもお話をお聞きしました。
【ハンカチ家】内 智子さん、髙梨 美保さん
「ハンカチ家」で作られる布製品は、柔らかく肌なじみの良い上質な素材が魅力。 内さん、髙梨さんのお二人は、ラオスの伝統的な製法で作られた布に魅せられ、ハンカチ家としての活動をスタート。丁寧な手仕事から生まれた布小物たちは、日々の暮らしに豊かな彩りを与えてくれる。
― 動楽市には何年前から出店していますか?
内さん:私たちは2017年から「ハンカチ家」として布小物を作る活動を始め、動楽市には2018年の春から出店しています。ありがたいことに、今まで途切れずに出店させていただいています。一度だけ、うっかり申し込みを忘れちゃったことがあったんですけどね(笑)。
やさしい肌触りで吸水性もバツグンのハンカチは、一度使うとその虜になってしまう逸品。
ー 動楽市のどんなところがお好きですか?
高梨さん:若い方もご年配の方も、性別も関係なく、たくさんの方が来て下さるのは嬉しいですよね。お行儀が良いというか、マナーの良いお客さんが多い印象です。
内さん:雰囲気が最高です!動楽市の醸し出すあの感じがとにかく素敵ですよね。それから、動楽市のスタッフさんがみんな親切なんです。運搬なども手伝ってくれるので、毎回安心して出店しています
― スタッフさんの対応も動楽市の魅力なんですね。ところで、県内外のいろいろなイベントに出店されているハンカチ家さんから見て、富岡市はどんな街だと思いますか?
内さん:古いものを大切にしている雰囲気があり、街全体の歴史を感じます。ちょっと歩いてみるとレトロなものが残っていたりして、そんなところも素敵ですね。
高梨さん:富岡の人って「郷土愛」が強いと感じます。地域の人たち同士が繋がっていて、みんなが助け合いながら暮らしているんだろうなって思いますね。
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「生まれ育った街が…こんなにオシャレに?!」
【さとの工房】中里 智恵さん(富岡市出身・安中市在住)
天然素材の山葡萄の樹皮を丁寧になめし、かごバッグやアクセサリーを手作りしている。材料となる山葡萄は、標高の高い場所にしか生えない貴重なもの。その山葡萄の採取も自ら行なっている。実家のご両親も山葡萄の創作活動をしていたことから、その技術を受け継ぎ、二年前から独立・作家活動を行っている。
― 動楽市に参加されている作家さん同士では、どのような交流があるのでしょうか?
中里さん:モノづくりが好きな方が集まっているので、お互いに仲間意識が強いと感じますし、みなさんが横のつながりを大切にしています。動楽市ではそれぞれのテントの雰囲気や世界観を見るのも楽しくて、素敵なディスプレイを見ると良い刺激もいただけます!
私が独立して最初にイベント出店したのがこの動楽市なので、なんだか特別な思い入れがあります。その時にお隣に出店していた「ハンカチ家」さんは、その後も県内のイベントでご一緒する機会が多くて…きっとご縁があるんでしょうね(笑)。作家活動をしていること自体、一般的な会社員さんとは別の世界で生きているので、(お互いに親近感を感じて)すぐに意気投合して仲良くなるんでしょうね。
― 富岡市出身の中里さんから見て、改めて感じるこの街の魅力とは?
中里さん:私が学生時代を過ごした富岡には、デパートのコロク(後のキンカ堂)があって、よく街なかへ自転車で買い物に行っていました。今は街の様子もだいぶ変わってしまったけれど、昔から流れているのんびりとした空気感は健在だと思います。さらに「おかって市場」ができてからは、年間を通していろいろなイベントが開催されるようになりました。それもちょっとお洒落で個性的な催し物が。わざわざ市外から足を運びたくなるような、そんな街に変貌したことは良い意味で驚きですね。
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「会場の雰囲気も最高のエッセンス」
動楽市では音楽も楽しめるんです!ミュージックパートから、この方にお話を伺いました。
【トミザワエイコさん】
県内外にてボーカルグループの音楽指導・ディレクターを務めている。子どもからシニアまで多世代へ向けて、音楽の楽しさや表現する喜びを伝えるエイコさん。その明るい人柄と軽やかでパワフルな歌声に惹かれ、レッスンに参加する生徒さんも多い。
音楽活動はこちらをチェック ⇒ インスタグラム
個人レッスン・ボーカルグループのレッスンも行っています!詳細はこちら⇒ Home | e-group
― エイコさんはいつから動楽市に参加されるようになったのですか?
エイコさん:動楽市スタッフの方の紹介で高橋さんと知り合い、「屋外の会場で歌ってみませんか?」とお声がけ頂いたのがきっかけで、2012年秋の動楽市から参加しています。その時の状況を見ながら、少人数グループで歌うこともあれば、大人数で(動楽市のスタッフさんを巻き込んで)フラッシュモブのようなステージをやったこともあります。
動楽市に参加する前は富岡を訪れたことがなかったんですが、ここ10年くらいは頻繁に富岡のステージに立っているので、もうすっかりこの街がホームになっていますね(笑)。
― もう10年以上も動楽市でパフォーマンスをされているんですね。そんなエイコさんから見た動楽市の魅力とは?
エイコさん:今でこそ県内のいたるところでオシャレなマルシェが開催されていますが、動楽市には私が参加した当初から出店者さんのこだわりや魅力があふれていて、洗練された雰囲気がありました。10年間の様子を振り返ってみると、とても素敵に進化を遂げているなって感じています。会場やお客さんの雰囲気も良いので、毎回ここで歌うことがとても気持ち良くて。一緒に参加しているグループのメンバーも動楽市に参加することを楽しみにしています。歌うだけではなくて、買い物したりお店を回ったりするのが楽しいんですよね。そして、私は食べることが好きなので、動楽市では美味しいフードに出会える!というところもおすすめポイントです。
今年のアツい夏に旧富岡倉庫広場で開催された「真夏のピクニック」の一幕。 おかって市場で開催される他のイベントにも歌のパートで参加している。
気になる次回の動楽市情報はこちら👇
【第23回 動楽市】
日時:2023年11月12日(日)10:00〜15:00
会場:しるくるひろば、旧富岡倉庫広場
いかがでしたか?
今回お話を聞いたクラフト作家さんが口を揃えて仰っていたのは、「動楽市のスタッフさんはとっても親切!こんなにやさしい会場はなかなかない」ということ。 さらにスタッフさんを含め、「実行委員会代表の高橋さんのセンスが素晴しい!」という共通した声が上がっていました。
動楽市では、会場に足を運んでいるお客さんからも「このイベントが大好き!」というオーラを感じます。そのことが更に空間を豊かなものにしているのでしょう。
動楽市が人を呼び、そこから人の動きが生まれ、いつしかこんなにも多くの人が行き交う場所へとなりました。
「何もない街へ人を呼びたい。」そんな思いからスタートした動楽市。みなさんの目にはどんな風に映っていますか?
(マツオ)