妙義総合運動公園の芝生広場で毎年秋に開催されている「妙義フェス」。
地元飲食店の出店に、地元アーティストによるライブ、親子でできるワークショップに、全員参加のゲーム、そしてインパクトが強すぎる謎の遊具の存在…。
私は妙義から離れた場所に住んでいるけれど、過去4回のうち3回は遊びに行っています。
なぜなら、他にはない “ゆるい” 雰囲気に魅了されてしまったから。
妙義フェス2015の様子
5年前、第1回の妙義フェスが開催される時に、私はこんな話を聞きました。
「妙義は移住者が多い地域。地元民・移住者関係なく、知り合うきっかけを作りたい。」
「人はたくさん来なくてもいい。みんなが知り合いを連れて来るくらいが丁度いい。」
その言葉通り、来場者は顔見知りが多く、会場には終始ゆったりとした和やかな空気が流れていました。まるで親戚一同大集合のBBQ大会に、遠い親戚として参加しているような…そんな気分になってしまう、不思議な空間だったのです。
妙義フェス2017の様子
一体どんな人たちが、どんな気持ちで、どんな風にこのイベントを作っているのだろう?
そんな好奇心から、妙義フェス2019開催を間近に控えたある日の準備作業にお邪魔することにしました。
中央が真砂さん。右が関さん。手前の風間さんは東京から妙義へ移住した。
妙義フェスの実行委員会には、妙義商工会青年部のメンバー、富岡中心街でまちづくりの活動をしている「スマトミ」の仲間、会場の近所だからと誘われた人や、Facebookで活動の様子を見て参加した人もいるそう。
昨年まで実行委員長を務めてきた関さんと、今年実行委員長を引き継いだ真砂さんは、共に妙義商工会青年部員で同級生。
他のメンバーもたまたま同年代ばかりだそうで、姿形はアラフォーでも、その準備風景は高校の文化祭前の教室そのものです。
「妙義フェスのうた」の歌詞カードを製作中。その場の流れで子どもが挿絵を描くことに。
誰か一人が指揮を取るわけではなく、「ここどうする?」「こうしてみる?」「それいいね」という会話がそれぞれの場所で繰り広げられ、作業が進んでいく。
特定の人に負担がかかることなく、その場にいる人間が違えば違う方向に進んでいきそうな柔軟性が、すごくいいなと思いました。
みんなの力を少しずつ持ち寄って。
― みなさん自主的に動いている感じがいいですね。その時々のスタッフの特技だったりが、イベント内容に反映されていくんですか?
関さん:そうですね、それぞれができる力を持ち寄ってやっています。例えば彼は絵が上手なので、昨年は会場レイアウト図を作ってみようかと言って描いてもらいました。
妙義フェス2018の会場レイアウト図。
― 一緒にイベントを作っていくということは、ご近所付き合いや仕事でのお付き合いではわからない、新たな一面を知るきっかけにもなりますね。回を重ねるごとに地域の方に認知されてきた実感はありますか?
関さん:「今年はいつやるの?年間予定に入れておくね。」と声をかけていただいたり、昨年のペットボトルキャップ回収ではたくさんの方に協力していただけたこともあって、いろんな方の協力で成り立っているんだなと実感しています。
昨年は呼びかけに応じて7万個以上のキャップが集まった。袋の分は会場でプールに入れて遊び、後日リサイクルへ。
関さん:あと、「妙義フェスのうた」という曲を作ってもらったんですが、先日妙義小学校の校長先生にお願いしたら給食の時間に流してもらえることになりました。
― そういうのいいですね!もっともっと地域の方にに知ってほしい、スタッフとしても参加して欲しい、という思いはありますか?
関さん:みなさんに少しずつ関わってもらえればいいですね。それこそ、お客さんがゼロで、会場にいる100%がスタッフでいいと思っています。
チラシの裏側のぬり絵は、会場を飾るフラッグになる。今年は名札代わりのお面もあるよ!
― ただお客さんとして行くよりも何かしらで関わっていたほうが楽しいですし、地域のみんなが一緒になって楽しむためのイベントなら「100%スタッフ」がむしろ自然なような気もします。打ち上げもきっと楽しいですよね。
関さん:打ち上げがメインですからね。あの打ち上げに来ないのは損ですよ。
(題して「世界一楽しい打ち上げ」。誰でも参加OK!)
― それは気になる…!
盛り上がりを見せる全員参加の「文字合わせゲーム」と「5円玉ジャンケン」。
― ところで、妙義フェスの「参加費10円」というのは何か意図があるんでしょうか。
関さん:あれは来場者に必ず受付に来てもらうためなんです。ゲームで使うプレートと5円玉を渡したいのと、どこから来たのかのアンケートも取りたいので。
― なるほど。ゲームって参加するのに少し恥ずかしい気持ちもあるんですけど、すでにアイテムを渡されているので「じゃあ参加するか〜」ってなるんですよね。そして参加してみると思っていたより楽しいという。
自由にぬり絵&落書きができる『らくがぎぐけ号』
― そして今度の「妙義フェス2019」では、またすごい企画があるんですよね。車に落書きができるなんて、夢のようじゃないですか。
関さん:ですよね。ただどの企画も、他のイベントのパクリなんですよ。
― そんなのいいですよ!むしろ他の地区でもどんどん真似して、地域住民が交流できるイベントをやっていったらいいんじゃないかと思っています。
関さん:気負わずやってますんで、妙義フェスを見て「イベントってこんなに簡単にできるんだ」と思ってもらえればいいですね。
【妙義フェス2024】
2024年11月9日(土)10時〜15時 妙義総合運動公園芝生広場
詳細は妙義フェスFacebookページをご覧ください。
地区の体育祭や文化祭など、これまで行われていた地域の行事はいずれも縮小傾向にあります。人口が減少しているのだから当たり前と言えば当たり前だけれど、「今の人は地域の行事を嫌がる」と言う人も。果たしてそうでしょうか?
実際に妙義フェスにはたくさんの地元の家族連れがやってきているし、「あら〜久しぶり!大きくなったわね。」という会話が会場のそこかしこから聞こえてきます。
楽しければ参加するし、楽しくなければ参加しない、ただそれだけのことなのだと思うのです。
「こんなことをみんなでやったら楽しいよね」と地域住民自ら始めた行事だとしても、何十年も「毎年やっているからやりましょう」で続けていたら、時代とズレが出てくるのは当たり前。
「自分たちも来る人たちも楽しめる場を作るには、どうしたらいいだろう。」
そう考え続けることの大切さを、ぜひ妙義フェスで体感して欲しいのです。
そのうち「うちの地区の方が世界一楽しい打ち上げだ!」なんて張り合う地区が出てきたりしたら・・・富岡って面白いなって思いません?
(ナカヤマ)