富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2022.12.22 移住-Iターン

【MYG round】建築士・坂口 陽さん

日常の喧騒から離れ

静かな森の中で

何もしない時間を過ごす

 

そんな体験ができる1日1組限定の宿が

2022年7月、妙義町諸戸にオープンしました。

 

 

⇒ 一棟貸し古民家宿 sazare

 

 

妙義山の麓に建つ空き家に “森の宿” という新しい命を吹き込んだのは、神奈川県から富岡市に移住した建築士の坂口陽さん。

 

坂口さんは大学の同級生である「いとのにわ」の水澤充さんと建築デザイン会社「MYG round(エムワイジーラウンド) 株式会社」を立ち上げ、「sazare」の設計と運営を行っています。

 

 

↓ 水澤さんへのインタビュー記事(2020年3月公開)

【いとのにわ】 水澤 充さん・安津美さん

 

 

 

坂口さんが感じる妙義の魅力と、思い描く妙義の未来について聞いてみたい。

 

そう思った私は「sazare」にお邪魔して、移住のこと、会社のこと、これからのことについて坂口さんにお話を聞いてきました。

 

 

 

 

 

【坂口 陽(さかぐち よう)さん プロフィール】

1983年 神奈川県生まれ。大学卒業後、大手建設会社に就職し1級建築士の資格を取得。2019年に退社し、旅する建築士として全国を回る。2020年 富岡市に転入し、建築デザイン会社「MYG round 株式会社」を設立。2022年 妙義町諸戸の一棟貸し古民家宿「sazare」をオープン。現在は宿の運営を行いながら、同地区のキャンプ場「いとのにわ」や日本各地の様々なプロジェクトに携っている。

 

 

 


 

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好きだから、長くいる。

 

 

この土地によく見られる「さざれ石」から名付けられた、一棟貸しの宿「sazare」。

 

 

― 坂口さんは友人の水澤さん一家のもとを訪ねるうちに妙義に滞在するようになったそうですが、移住を決めたきっかけは何かあったのでしょうか?

 

坂口さん:妙義に来るようになって二年くらい経った2020年に住民票を移したんですが、明確に “住む” という意識に変わったわけではなく、そこは今もフワッとしたところがあります。会社を設立したこともあり少しずつ根を下ろしているとは思いますが、住んだというか、妙義に宿泊して1,000泊目というか…。

これは逃げではなく、ライトな気分で来たけれどこんなに長くいられるくらいこの場所が好きだし、会社を作っちゃうくらいこの場所を良くしたいと思っている、ということです。

移住や永住という言葉が先にあるのではなく、「結果的にそうなっていた」でいいんじゃないかなと思っています。

 

― たしかに「移住」を重く捉えすぎて動き出せない人たちも多いので、その感覚っていいなと思います。では、様々な地域を見てきた坂口さんが感じる、この土地ならではの魅力を教えてください。

 

 

「sazare」から徒歩10分の、妙義ふるさと美術館から見た妙義山。

 

 

坂口さん:まずひとつは、妙義山という絶対的なスターがいること。それはすごい特徴だと思います。あとは、温度や湿度や色が「深くて濃い」という印象があります。気軽に行ける森というよりも、ちょっと入るのをためらうような雰囲気があって、人によっては長くいると疲れてしまうみたいです。

少し話が飛ぶんですけど、鎖場を登る時って、怖がって鎖に体を近づけると落ちやすくなって、逆に鎖から体を離した方が安全に登れるんです。それと同じで、ここでは体をこわばらせて強がろうとすればするほど疲れてしまうのかなと。素直でないといられない場所なんだなと思ったりします。

あとは、首都圏からすぐ来れる近さなのに、あまり知られていないところも魅力ですね。

 

― 坂口さんが感じる魅力を全て味わえるのがこの「sazare」という場所なのかなと、今ここでお話を聞いていて思いました。

 

 

カーテンもブラインドもない大きな窓。森と一体になるような感覚を味わうことができる。

 

 

 


 

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MYG roundから広がる僕らの「遊び場」。

 

 

― 坂口さんが水澤さんと設立した会社の名前「MYG round」には、「妙義」「丸い・円形」「マイグラウンド」といった言葉が隠れていますが、どんな思いが込められているのでしょうか。

 

坂口さん:会社には「妙義(MYG)を輪っか(round)にする」「妙義をみんなの遊び場(マイグラウンド)にする」という2つの想いを込めました。
妙義は既に魅力的な場所で、これを整えていけば、「ここが好きな人達」「ここを大切にしたい人達」の遊び場になるのではないかと思っています。
これから妙義にたくさんある空き家や耕作放棄地等を少しずつ整えて、土地の魅力を引き出していけたらなと考えています。
また、僕らは自分が持っているスキルの「建築」と水澤が持っているスキルの「デザイン」を使って遊んでいますが、徐々に集まってきている仲間たちにも、この魅力ある土地で各々のスキルを持って遊んでもらえたらいいですね。

 

 

様々な植物がひしめく「sazare」の庭。夜になると野生動物の姿も…

 

 

― それでは「sazare」は、どのような経緯で作られたのでしょうか。

 

坂口さん:空き家を探していることを周囲に伝えていたところ、別荘として使われていたこの建物を地元の方が紹介してくださったんです。はじめは僕の自宅にしようかと考えていたんですが、自分だけで使うのはもったいないので宿にすることにしました。

作る時には、古い建物を見た時に感じた「この土地のここがいいな」という部分を切り取るように、ひとつひとつ作っていきました。「ここは屋根がない方がいいよね」とか、「こっち側の森は色が違うね」とか、「夜になると真っ暗だけど、そういう体験をすることにも価値があるよね」とか。

 

 

坂口さんのお気に入りは、小さい方の窓から見える森。窓枠が額縁に見えてくる。

 

 

― そうして丁寧に作られたからこそ、この居心地のよさがあるんですね。

これまでに「sazare」に宿泊したお客さんとのやりとりで、印象に残っていることはありますか?

 

坂口さん:お客様とお話しするのはチェックインの時くらいですが、置き手紙やDMで感想をいただくことが多いです。「一生の思い出です」とか、「新しい気づきを得られました」といったお声をいただくと、建物ってすごいな、この自然環境ってすごいなと思います。

特に印象に残っているのは、ご病気をされて、手術直後の心身を癒やすために宿泊してくださった方のことです。僕が想像していたよりも遥かにすごいことをさせてもらっていると感じました。

 

 

キッチンツールやアメニティのひとつひとつにもこだわりが見える。

 

 

坂口さん:あとは、ここに泊まったアーティストの方に「この場所を使って何かやってみたい」と言ってもらえることが多いです。ここには癒やしもあるんですが、山から刺激も貰えるんですよね。

すでに何回かイベントを開いているんですが、アーティストによってこの空間が全く変わるので、それがまた面白くて。すごく勉強になりますし、自分の次の肥やしになるなと思いながら見させてもらっています。

 

― いろんな人が来て、いろんなことが生まれる場所になっているんですね。

 

坂口さん:ホームページに宿の情報をあまり載せていないにもかかわらず泊まりに来てくださる方々なので、足りない部分を自分で補うことができて、一緒に楽しんでくれるような人が多いですね。そういった人たちと妙義で一緒に何かできたら…という夢も描いています。

 

 

 


 

 

 

力を抜いて、来た流れに乗る。

 

 

 

 

― 動き出している新しいプロジェクトはありますか?

 

坂口さん:たくさんあります。ひとつは、このすぐ近くの空き家を購入させていただく予定なので、こことは違ったテイストの宿にしようと思っています。それから「森のホール」も来年には実現させようかなと思っています。

 

― 森のホール、気になります。

 

坂口さん:森の中は、樹木や沢によって音の響き方が変わるんです。そこに人間の作ったグランドピアノを持ち込んで演奏したら、ここの森もいいね、あそこの森もいいねってなるんじゃないかなって。そういう不確定なものを楽しむマインドが不安定な世の中だからこそ大事だと感じているので、森のコンサートホールをやりたいなと思っています。

 

 

 

 

― なるほど。個人のお仕事や「いとのにわ」の方の動きも含めて、これから慌ただしくなりそうですね。

 

坂口さん:最初の山の話につながるんですけど、怖がって力を入れることをせず、来た流れには乗ることから始めるようにしているんです。人生の中でチャンスを与えられたらまずはトライして、たとえダメだったとしても、やれば何かが得られて次に繋がる。やらなかったら自分には何も残らず終わってしまうんですよね。だから挑戦だけはしようと。山の力を借りて、いろんな人に楽しんでもらって、刺激を貰いながらやっていきたいです。

 

今後の展開、楽しみにしています!

 

坂口さん:ぜひ遊びに来てください!

 

 

 

 

MYG round株式会社 ホームページ

■ 一棟貸し古民家宿 sazare ホームページ

sazareのインスタグラム

 

 

 


 

 

「sazare」のオープン前から密かにインスタグラムで宿の様子をチェックしていた私。投稿される写真と文章はいつもしっとりとした空気感をまとっていて、ちょっとミステリアスな方なのかな?と想像したりもしていました。

ですが実際にお会いした坂口さんは、お名前の通り陽だまりのようなあたたかさがあり、落ち着いているけれどお茶目な面もあって…。それは宿の雰囲気も全く同じで、とても心地よい時間を過ごすことができました。

 

 

それではこれを読んでいる、妙義にお住まいのみなさんと、妙義のことが好きなみなさんに質問です。

 

みなさんだったら、妙義でどんな遊びがしたいですか?

 

(ナカヤマ)

 

 


 

 

 

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