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まゆといと

2019.06.28ピックアップ

【みんなのおうえん団】靏田あずさ さん、高橋啓子さん

「ごちそうさまでした!」

「いっぱい食べた?午後もがんばってね!」

 

新年度を迎えたばかりのある日の富岡公民館。

春休み中の小学生、中学生、高校生、そして様々な年代の大人たちが、その日開かれた『昼食つき無料学習会』のために集まっていた。

 

高校生を親戚のお兄さんお姉さんのように慕う小学生に、栄養満点の昼食を用意して温かい目で見守る大人たち。

ほとんどが初めて会った者同士なのに、不思議と「他人」といった空気はどこにもない。

まるで大きな家族を見ているようだった。

 

 

春休み、夏休み、冬休みと長期休業ごとに開催されている『昼食つき無料学習会』。

次の夏休みには、富岡公民館だけでなく高瀬公民館でも初開催されることになっている。

 

主催しているのは、富岡市内で子育て中の母親たちを中心に結成された団体『こども支援団体 みんなのおうえん団』。

 

教育や福祉の知識があるわけでもなく、資金源があるわけでもない。そんな状況から始めた活動は、この夏で3年目に突入する。

 

 

いったいどんな想いを持って立ち上がり、どんな未来を描いているのか。

 

代表の靏田(つるた)あずささんと、副代表の高橋啓子さんにお話を伺った。

 

 


 

「負の連鎖から抜け出すために」

 

みんなのおうえん団代表の靏田さん(左)と、副代表の高橋さん(右)。

 

 

― 元々お友だち同士だったお二人が、どういった経緯で現在の活動を始めることになったのでしょうか?

 

靏田:自分が子育てをしていく中で、世の中の子どもたちが様々な家庭環境で育っていることと、それが進路を大きく左右していることを目の当たりにしました。

経済的に豊かな家庭とそうでない家庭では、教育にかけられるお金と時間に大きな差がある。大人の貧困は子どもの教育格差につながってしまうんですよね。

 

ある程度の学力がないと職業の選択肢も狭まるし、そもそもどんな職業があるか教えてもらっていなければ夢も持てない。「どうせだめだ」という気持ちにもなってしまう。そうして貧困は連鎖して抜け出せなくなってしまう…。そういう状況は打破しなきゃいけないんじゃないか、と思っていたんです。

 

高橋:ある時に靏田さんから「学習塾に行きたくても行けない子がけっこういるんだよ」という話を聞きました。家でご飯を食べるのもいつも一人だったり、そういう子どもが日本中にいると。

 

ちょうどその頃『子ども食堂』という言葉を群馬でもよく聞くようになっていたので、そういった孤食の解決や学習支援になるようなことが私たちにもできないかと一緒に考えたんです。

 

それからすぐに安中や高崎で活動されている方々のところへ見学に行って、お話も聞かせてもらって。「とりあえず単発で一回やってみよう!」とダメ元で富岡公民館に相談したところ、快く場所を借していただけたので実現できました。

 

靏田:やろうと思ってからは早かったですね。1回目は参加者はそれほど集まらなかったけれど、これは形になりそうだということがわかって。その後は市の社会福祉協議会に相談しながら、団体を作って活動することにしたんです。

 

無料学習会の様子。高校生ボランティアが中心になり、小中学生の勉強をサポートする。

 

 


 

 

その後、無料学習会は回を重ねるごとに参加希望者が増えていく。

最初は知り合いだけだったボランティアスタッフも、地域サークルや市内の高校の協力もあり、少しずつ少しずつ輪が広がってきた。

 

昼食に使う食材はJA甘楽富岡直販センターや地域の人たちから提供されており、正真正銘地元の旬の食材ばかり。

昨年末に行われた学習会では、富岡飲食店組合からクリスマスプレゼントとしてチキンが配られるというサプライズもあった。

 

 


 

 

 

世代を超えた交流を楽しみながら昼食の準備をするボランティアスタッフ。

 

 

 

「地域全体で子どもを見守る」

 

 

― 参加希望者もボランティアスタッフもリピーターが多いそうですね。単純にこの場が楽しいのだろうなということが、見ていると伝わってきます。

 

高橋:今は子ども同士でも関わりが少ないですからね。最初は勉強をしに来る小中学生のために始めたけれど、やってみたら意外と高校生のボランティアの子たちにもいい経験になったり、小さな子たちが高校生を見て「自分も大きくなったらボランティアをやりたい」と言い出したり。

私たちも、調理で協力してくださっている「くらしの会」のみなさんとつながりができたりして、相乗効果が想像以上にありました。

 

それに、子どもたちと違うところで会った時に「あ、あそこにいたおばちゃんだ!」みたいに言ってもらうこともよくあって。こっちも「あ~!元気?」って。

 

靏田:そうそうそう!

 

 

 

 

靏田:そういう「あの時のおばちゃんじゃん」っていう大人が近くにたくさんいてくれると、「何かあって困った時は大人が助けてくれるんだ」という安心感が生まれると思うんです。自分は守られているんだという。

 

― 地域全体で子育てをするという感じですね。

 

靏田:そうなんです。親が子どもにしてあげられないことがあったとしても、地域全体で見守ってあげればいいんじゃないかと。

 

子どもって、自分がされて嬉しかったことがあると、成長した時に同じことをしてあげられるそうなんです。自分はこんなに良い環境で育ったから、また次の世代の子のために良い環境にしておこうと。

だから負の連鎖は良い方に変えられるんですよね。

 

みなさんにちょっとずつ協力してもらって、そういったことをやっていけたらなと思っています。

 

 

冬休みの学習会で小学生が作った凧。毎回、工作の時間も設けている。

 

 

 

「放課後の居場所をつくりたい」

 

 

― 次の夏休みには初めて高瀬公民館でも無料学習会を開催するということで大きく前進するわけですが、これからのことについてぜひ教えてください。

 

靏田:ありがたいことに小学生の申込みが多く、お断りしなければならない状態が続いていたので会場を増やしました。

ただ、今のように単発で開催しているとなんだかお祭りっぽいところもありますよね。本来の目的は、ふらっと立ち寄ることができる子どもの居場所を作ることなので、現在はそれを形にすることに向けて動き出しています。

 

― どんな居場所を作っていきたいですか?

 

靏田:放課後ここにくればお兄さんお姉さんがいて、支えてくれる大人がいて、困ったことがあったら相談できて、ご飯が食べられて、勉強でわからないことがあれば教えてくれる。そんな場所を最終的には作りたいんです。

 

高橋:高校生が自分の勉強をしに来て、少しの時間だけ小さい子の勉強を見てあげるというのがいいかもしれないですね。今高校生は学習室もいっぱいで行くところがないので。

それでたまに夢を語ってもらうのもいいかも。「こんな職業に就きたいから今こういうことを勉強してるんだよ」とか。

 

― 家庭と学校だけでは視野が狭くなりがちですが、そういった話をしてもらえると世界が広がりそうですね。家族でも友達でもない人の方が相談をしやすいということもあると思いますし。

 

靏田:なので、これからは他の組織と連携したり、大学生を巻き込んだりということも視野に入れながら、居場所づくりを実現させていきたいと考えています。

 

 

 

 

「できる人ができる時にできる事を」

 

 

靏田:無料学習会を何回かやってみて気づいたんですけど、「子どもたちを助けたい」という想いはあっても、何をしていいかわからないという人がたくさんいるんですよね。そういう人たちにぜひ力を貸していただきたいんです。

勉強は教えられないという人でも、調理だったり作品づくりだったり、空いた時間に1時間でもいいので。

 

高橋:本当に大変なことじゃなくて。モットーは「できる人ができる時にできる事を」なので。

 

靏田:とにかく輪が広がっていけばいいなと思っています。支援する側も楽しみながら、無理なく、長くやっていきたいですね。

 

 


 

 

 

『みんなのおうえん団』という名前には、

「子どもたちだけでなく、その親たちや高齢者の助けにもなる、みんなの居場所を作りたい」という想いが込められている。

 

頼っていいのは家族だけ?教えてくれるのは先生だけ?

そんなことは誰も決めていない。

 

私たちの住む地域には、こんなに素敵な笑顔で、温かく受け入れてくれる人たちがいる。

 

身近に孤独を感じている人がいたら、ぜひ伝えて欲しい。

自分も何かの形で助けになりたいと思ったら、ぜひ輪に加わってみて欲しい。

 

 

じつを言うと私も毎回、無料学習会のお手伝いをしている。

またやりたいと思えるのは、与えられることの方が多いから。

 

笑顔の連鎖がいつまでも続くように、私もその鎖のひとつでいよう。