富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2025.03.14 イベント

現代アーティスト 温井大介さん

妙義山が名勝指定されてから今年で101年。

これを記念し、富岡市妙義ビジターセンターでは温井大介さんによる個展『妙義101エンナーレ!〜山の自画像〜』が開催されています。

 

妙義ビジターセンター企画展『妙義101エンナーレ!』を開催します(3月7日~3月30日) | しるくるとみおか

 

現代アーティストである温井大介さんが主宰する『妙義エンナーレ』は、2008年から2025年までの17年の間に企画展を計11回も開催しています。

 

妙義山と繋がりを持ちながら芸術活動を続けている温井大介さんとは、一体どんな方なのでしょうか?

興味を持ったマツオが訪れた先は、富岡市妙義ビジターセンターす。

 

 

 

 

こちらで『妙義101エンナーレ!』の会場準備をしていた温井さんに、お話をお聞きしました。

 

 

 


 

 

【温井 大介(ぬくい だいすけ)さん プロフィール】

群馬県藤岡市出身。2006年 東北芸術工科大学洋画コース卒業 (卒業選抜賞受賞)。2024年 京都芸術大学大学院通信教育課程洋画修了。IAG AWARDS 2024(池袋アートギャザリング)大賞受賞。美術教員として妙義中学校に赴任していた2008年から現在まで、企画展「妙義エンナーレ!」を主宰。群馬と東京を拠点にアート活動を行っている。

温井さんのInstagram

 

 


 

 

 

 

「色の楽しさ」を知り芸術の道へ

 

 

 

 

― 温井さんは子どもの頃はどんなお子さんでしたか?

 

温井さん:昔から絵を描くのが得意、ということはなかったんです。何が好きだったかなぁ…と思い起こしてみると、小学生の頃に「うんてい」にハマった時期がありました。上級生にうんていが得意な子がいて、カッコよくて憧れていました。そして勝手にその上級生をライバル視するようになり、うんていの一本抜かし、二本抜かし、という「抜かし技」を極めるため、手の平をマメだらけにして練習していました。気がつくと、校内であんなに盛り上がっていたうんていブームは過ぎ去っていて、自分一人だけがうんていを続けていたという(笑)。

 

― 熱い魂を持った小学生だったんですね。

 

温井さん:いいえ、全然そんなことなくて。どちらかというとオタク気質な子どもだったんです。後にも先にもあんなにもハマったものはないですね、うんてい以外に。

もうひとつ、大人になってから思い出す情景があります。それは、子どもの頃に作った迷路のこと。学校の授業でオープンスクールのための出店(でみせ)を仲間と作ることになり、河原で拾った石で迷路を作ったんです。オープンスクール当日は、みんなで来場者に一生懸命説明をしたり盛り上げたりするうちに、たくさんの人が集まってきました。それがとても楽しかったことを、今も自分の展示の時に思い出します。

 

 

 

 

― その後、高校までは群馬県内で過ごし、大学は東北芸術工科大学へ進まれたとのことですが、なぜ芸術の道を選んだのでしょうか?

 

温井さん:妹が私より早く絵を描き始めていて、小学生の頃の誕生日プレゼントに油絵セットをねだるような子だったこともあり、絵は身近に感じていました。妹の影響と言ったらちょっと違うかもしれないのですが、自分も油絵をやってみたら、「色が楽しい!」と感じたんです。そこから油絵に興味を持ち、高校卒業後は芸術大学へ進学したいと考えるようになりました。

 

― 山形県で過ごした学生生活はいかがでしたか?

 

温井さん:人々は純朴で温かくて、食べ物も自分に合っていて、特にお米の美味しさには驚きました。ですが、冬の気候にはどうにも慣れなくて、雪が降りどんより曇っている毎日に鬱々としていました。その結果、寒くて長い冬の間は、いろいろなことをじっくりと考える時間に充てることができたんです。今思うと、それは自分に向き合うために必要な時間だったと感じています。

 

 

昨年秋に妙義ビジターセンターで展示された IAG大賞受賞作品「still life, figure, landscape」(妙義101エンナーレ!期間はギャラリー内に展示中)

 

 

 


 

 

 

妙義からはじまる新たなステージ

 

 

 

 

― 大学を卒業後は地元の群馬県に戻り、妙義中学校で美術教員をされていたそうですね。当時の中学校で印象に残っていることはありますか?

 

温井さん:写生大会で生徒たちが妙義山を描いていたのですが、妙義山の大の字を、京都の大文字の送り火みたいに大きく描いている子がいました。なぜ実物よりも大きく描いたのか理由を聞くと、「妙義山といえば大の字なんだよ!」と元気に答えてくれたんです。

その時から、「なんで妙義山に大の字があるのか?」とか「そもそも、なぜ大という文字なんだろう?」という疑問が浮かび、大の字に対する探求心が芽生え、資料を読んだり人に聞いたりして独自で調べるようになりました。今でも大の字への探求心は持ち続けていて、ゆかりのある土地へ足を運び、様々な所説を集めながら、大の字の謎を紐解くことを楽しんでいます。

 

― 大の字の謎を追って旅をするのもいいですね…。妙義山には底知れない魅力があると私も感じます。

 

 

妙義ビジターセンター内のカフェにある望遠鏡から「大の字」がはっきりと見えます

 

 

 


 

 

 

地域のみなさんに支えられた初個展から17年

 

 

2023年に旧・妙義ふるさと美術館からリニューアルオープンした妙義ビジターセンター

 

 

― どのようなきっかけで旧・妙義ふるさと美術館で初めての個展『妙義27エンナーレ・温井大介展』(2008年)を開くことになったのでしょうか?

 

温井さん:妙義中学校で非常勤の美術教員をしていた20代の頃、当時の妙義中の用務員だった新井さんという方が「富岡市内で個展やったらどうだい?」と声をかけてくれました。その直後に新井さんは、当時の妙義ふるさと美術館・職員の守田さんに熱い思いを持って交渉してくれたんです。自分のような経験もない新人がいきなり個展をするのは無理がある…と思って半ば諦めかけていたのですが、新井さんが結構強引で(笑)。そこからトントンと話が進み、守田さんが企画を通してくださって初個展の開催が実現しました。もちろん、新井さんの猛プッシュのおかげでもあります。

いざ個展となると不慣れな部分も多く、会場準備がなかなか進まなかったのですが、当時の館長さんからはいろいろとアドバイスをいただき、職員の方も総出で準備を手伝ってくれ、会場を一緒に作り上げてくれました。まだ若く経験もなかった自分を妙義ふるさと美術館のみなさんが応援してくれたおかげで、とてつもなく良い機会と経験を与えていただきました。

 

 

 

 

― そこから始まったエンナーレの活動が毎年回を重ねて、今も続いているのですね。

 

温井さん:初めての個展『妙義27エンナーレ!』は、その時の私自身の年齢を表したものなのですが、各地で盛り上がっていた、ビエンナーレやトリエンナーレに対するカウンターカルチャーになれればいいな、という思いもありこのようなタイトルにしました。もう次はないだろうな…なんて思っていたのですが、翌年に館長さんから「今年も個展やりませんか?今年は28エンナーレでいきましょう!」とありがたいお声がけをいただきました。

その後は、群馬県にゆかりのあるアーティストの方々に声をかけ、妙義エンナーレでグループ展をやってきました。芸術においても「地産地消」の動きが大切だな、と感じていたので、地元出身のアーティストと一緒に地域を盛り上げたいとも思っていました。

当時、若手で注目を集めていた富岡市出身の大竹夏紀さんにも(ダメもとで)グループ展に参加してほしいとお願いしたところ、すんなりと快諾してくれて…。当時の大竹さんは東京を拠点に活動されていたんですが、群馬でも活動の輪を広げたいと思っていた矢先のことだったらしく、タイミングも良かったんですね。地元愛が強い大竹さんは、今までの妙義エンナーレでもワークショップを開催していて、毎回好評をいただいています。

 

― 今年の大竹さんの染めのワークショップも興味深いですね。(先着順となりますのでぜひご予約を!)

 

 

↓ 大竹夏紀さんの記事はこちら

染色アーティスト 大竹夏紀さん

 

 

― これまでに11回開催された『妙義エンナーレ』ですが、毎回のテーマを考えるのは大変ですか?

 

温井さん:そうですね、毎回悩んでアイディアを絞り出しています。今までいろんなことをやってきましたが、昨年の『100エンナーレ』はとても面白い企画ができたので、今年はどんなことをしようか…とずいぶんと考え込んでしまいました。すると、とうとう睡眠中もテーマを考えるようになってしまい、夢の中で今回のアイディアがひらめきました!今年のテーマも斬新な内容になっているので、みなさんに足を運んでいただけたら嬉しいです。

 

― すごいです、夢の中までエンナーレとは!今回の展示も楽しみにしています。

 

温井さん:自分の都合で開催できない年もありましたが、ご縁をいただきこの活動を継続できていることが本当に嬉しいです。妙義エンナーレを続けてこれたのは、富岡市の職員の方々や妙義地域のみなさん、そして一緒に活動をしてくれた作家のみなさんや美術関係者のみなさんのおかげです。

大変なことも良かったこともたくさんありますが、大切なことは「続ける」ということだと思います。妙義エンナーレの活動を続けてきたことで、地元の方に理解をしてもらえたり、協力してもらえることがずいぶんと増え、とてもありがたく思っています。

そして、毎回この会場でエンナーレの準備をしていると、緊張もするし、ワクワクもするんです。何年経っても新鮮な気持ちを味わえることにも、喜びを感じています。

 

 

 

 

 


 

 

 

『妙義101エンナーレ!〜山の自画像〜』

 

◆ 会 期: 3月7日(水)~ 3月30日(日)※月曜日は休館

◆ 時 間:午前9時半から午後5時まで(入館は午後4時半まで)

◆ 会 場:富岡市妙義ビジターセンター

 

 

◆ イベント:

①『山と染める』染めワークショップ

妙義地域固有種の植物の形をあしらったボタンを染めます。

日時:3/15(土)14時~

講師:山崎美季・大竹夏紀

定員:20名

参加費:500円

※要事前申込 (妙義ビジターセンター0274-73-2585)

 

②アーティストトーク

「山と顔の話」自画像と風景画について

出演:温井大介・三宅感

日時:3/29日(土) 14時~

参加費:無料

※電話予約推奨 (妙義ビジターセンター0274-73-2585)

 

 

 


 

 

最後に…

 

そもそも「エンナーレ」という言葉は何だろう?と気になりませんか。

これは「開催頻度」のことを指しているそうです。

ちまたでは「ビエンナーレ」(二年に一度)や「トリエンナーレ」(三年に一度)という名称がついた芸術祭があり、一度は耳にしたことがある人も多いと思います。

 

今回の『妙義101エンナーレ!』は、大人も子どもも楽しめる内容になっているようです。

ぜひ会場で、新たな視点で妙義山を感じてみませんか?

 

(マツオ)

 

 


 

 

妙義山がもっと好きになる!【富岡市妙義ビジターセンター】

 

妙義の暮らしと表現アート 松崎 菜香さん