富岡市内の各地区にある地域づくりセンターでは、市民向けの様々な教室が開催されています。
その中で私マツオが気になっているのが、「歌声喫茶」というもの。
以前から「歌声喫茶は人気が高く、募集をかけると参加者がすぐに定員に達してしまうらしい」というウワサを耳にしていたんです。
🔹🔹歌声喫茶とは🔹🔹
市内(東富岡・吉田・一ノ宮・高瀬・黒岩・小野・額部・七日市)の地域づくりセンターで定期的に開催している音楽教室で、参加者は季節の唱歌や懐かしの歌謡曲を歌います。歌の合間には「喫茶タイム」があり、プレパレベーカリーで作られた日替わりのおやつ(シフォンケーキやクッキーなど)と飲み物をいただきながら、お喋りを楽しむ時間もあります。
詳細は各地区の地域づくりセンターにお問い合わせください。
そんな魅力的な教室があるのなら、ぜひ見学してみたい!!
ということで、東富岡地域づくりセンターで行われている歌声喫茶「はるかぜ」にお邪魔しました。
東富岡地域づくりセンター
教室にはアップライトピアノと電子ピアノが並べられ、ウインドチャイムも置かれています。端の方で見学させてもらおうと思っていると、「マツオさんも一緒に参加してみませんか?」と、講師の小西先生から歌詞冊子をいただきました。
「知っている曲もチラホラあるし…やってみようかな」 ということで、私も歌声喫茶に参加することに♪
小西さんが弾くピアノの伴奏に合わせて、みんなで一緒に歌います。
テンポよく次から次へと歌いながら、「懐かしい曲だねえ」と談笑するみなさん。
参加している方にお話を聞いてみると、「毎月ここへ来るのが楽しくてね。歌うだけじゃなくて、仲間とお喋りするのも楽しいし、先生から元気ももらえるし。良い場所なんですよね。」 とのこと。
みなさんの笑顔やはずむ歌声を聴いて、私も元気になりました!
地域にこのような温かい場所があるのは嬉しいですね。
音楽療法士としてみなさんの心と身体を元気にしてくれる、講師の小西美奈子さん。笑顔がとってもチャーミングな小西さんに、音楽のことやお仕事のお話をお聞きしました。
【小西 美奈子(こにし みなこ)さん】
甘楽町出身。富岡市在住。NPO法人プレパレに勤務し、音楽療法士として近隣地域で音楽療法サービスを提供している。
子どもの頃から憧れた音楽の道
― 音楽療法士とはどんなお仕事なのでしょうか?
小西さん:音楽療法士とは、音楽を効果的に用いて心身の機能回復などを支援する専門家です。対象は年齢や障害の有無にかかわらず、どなたでも。メンタルケアやリハビリ、発達支援、介護予防などニーズも様々です。
音楽療法の内容は、歌唱や楽器演奏、身体活動、鑑賞や創作などがあります。個人、少人数グループ〜大集団といった形態があり、ご要望に応じて音楽療法士がプログラムを作成します。その場の状況に応じて即興的に対応することも多いです。
この資格について、現在の日本では「日本音楽療法学会認定音楽療法士」を主とした民間資格ですが、国家資格化が推進されていて、今後の発展に期待が持たれています。
― 小西さんが音楽を始めたきっかけを教えてください。
小西さん:幼稚園の頃に先生が弾いていたオルガンに興味を持ち、「ピアノを習いたい!ピアノが欲しい!!」と毎日父親におねだりしていたのを覚えています。その頃からピアノの先生になりたくて、迷うことなく進路も音楽の道を選び、卒業後は前橋の音楽教室でピアノ講師をしていました。有言実行のように見えますが、単純にガンコで融通が利かないだけだったりします(笑)。
― 子どもの頃からの夢だったピアノ講師から、現在の仕事である音楽療法士に転職したのはなぜですか?
小西さん:ピアノ講師をしていた頃に結婚し、その後は主人の勤務先の富岡市に居を構え、出産後は市内の知的障害者施設に勤務しました。そこで前職のピアノ講師の経験を活かして音楽活動を担当させていただいたことが、「音楽療法士」を目指すきっかけになりました。最初のうちは楽しみながらやっていた音楽活動でしたが、今までの活動内容を見つめ直す場面が多くなり、「利用者さんにとってより良い音楽を提供したい!」という気持ちが強くなっていったんです。
その後、一念発起し専門学校で音楽療法について学び、「日本音楽療法学会認定音楽療法士」の資格を取得したのは30歳を過ぎてからでした。その時は下の子が保育所〜小学校に通う年齢だったので、夫や甘楽町に住む実母に子育てを協力してもらいながら、資格習得に向けて励んでいましたね。
― 子育てをしながら「学び直し」をするのはさぞかし大変だったでしょうね。その行動力に感心してしまいます。音楽療法士の資格取得後は、どのようなお仕事や活動をされたのですか?
小西さん:現在は、甘楽町にある障害者(主に精神障害者)の通所施設「プレパレ」に勤務しています。(プレパレは、市役所や子育て健康プラザでパンや焼菓子の移動販売をしているので、パン屋さんとして認識している方も多いかもしれません。)
仕事内容としては、プレパレの音楽療法事業を担当しています。市内の高齢者施設や地域づくりセンターで音楽療法サービスを提供しているのですが、プレパレ利用者さんは音楽療法アシスタントとして同行し、準備から片付けまで携わっています。彼らはウインドチャイムなどの楽器で演奏を盛り上げたり、みなさんに小物楽器を配ったり、歌詞集の作成やPC操作なども担当し、作業内容は多岐にわたります。そしてこれらの音楽療法事業で得た収入は、利用者さんの工賃に還元されます。
利用者さんのリズミカルなタンバリンで歌を盛り上げます
― なるほど。プレパレに通所している利用者さんが小西さんのアシスタントとして活躍しているんですね。
小西さん:障害者というと “福祉サービスを受ける側” というイメージがありますが、ここでは障害者が “音楽療法サービスを提供する側”になります。このように、地域の人たちがお互いに支え合っていける社会を目指し、私はそのお手伝いをしています。利用者さんも就労訓練としての意識を持って接客しています。
音楽のチカラを信じて そこから広がる豊かな世界
― 地域づくりセンターでの「歌声喫茶」、とても賑わっていましたね。
小西さん:最近は各地域で行っている歌声喫茶が大好評で、生徒さんの人数もずいぶんと多くなりました。私もここで元気なみなさんと会えるのを楽しみにしています。
― 音楽を仕事にしている小西さんの趣味は何ですか?
小西さん:ウクレレバンドをやっていて、趣味も音楽なんです(笑)。自由にウクレレを弾いていると心が軽やかになって、良い気分転換になりますね。音楽療法士の仕事をする上でも、気持ちをリセットするための趣味があることはありがたいと思っています。仲間とともにウクレレを純粋に楽しむ時間は、大切なひとときです。
― 音楽療法士という仕事を通して「良かった」と感じることはありますか?
小西さん:私の音楽活動に参加したみなさんから、「楽しかった!」「今日も来てよかったよ」といった感想をいただく時は本当に嬉しいです。さらに、 “音楽の力 ” を目の当たりにした時には格別な感情になります。例えば、今まで不穏だった方が音楽によって落ち着いて過ごすことができたり、音楽に感動して涙を流す方がいたり、「心が軽くなった」「元気が出た」というような言葉をいただいたときでしょうか。みんなで歌って一体感に包まれた時の笑顔や、ちょっとした表情や行動の変化を感じると、その瞬間に立ち会えて良かった、音楽療法士になって良かったと、しみじみと感じます。 そして、この活動が障害者のみなさんの自立支援に繋がっているということが、何よりの励みになっています。
― プレパレは音楽活動のみならず、パン屋さんとしても地域との繋がりを大切にしているという印象を受けます。
小西さん:プレパレベーカリーはもともと移動販売をしていましたが、今年に入ってから甘楽町に店舗を構え、テイクアウトのパン屋さんとしても営業を開始しました。私も音楽活動だけではなく、パン生地をこねる日もあり…なんでも屋さんになりつつあります(笑)。これからも音楽の楽しさを提供しながら、地域のパン屋さんとしてもみなさんに美味しいパンを届けていきたいですね。
現在、店舗隣には新たに音楽コミュニティースペースを建設中です。
いかがでしたか?
歌声喫茶。それは歌を歌うだけの場ではなく、人と地域が繋がる大切な場なのだと知ることができた今回の取材。
小西さんの音楽活動やプレパレのお仕事を見学させていただき、「ひとりひとりが自立して生きる」という意味を改めて考える機会をいただきました。
好きなことを追求した先には、大きな可能性が広がっている。そのことを教えてくれた小西さんの活動を、応援したいと心から思います。
(マツオ)