妙義山麓に建つ民家の庭さきに停まっている、鮮やかなミントグリーンのキッチンカー。
昨年の秋ごろ出現したこのキッチンカーに、周辺住民のあいだでは「いったい何が始まるのかしら♪」と期待とワクワクの眼差しが向けられていたようです。
そこで調査を進めてみると、そのキッチンカーでは「ふわふわのシフォンケーキ」を販売していることがわかりました。
「なぜ妙義の民家にキッチンカー?」
「店主さんはどこからやってきたのかしら?」
そんなギモンを抱えたマツオが向かった先は…
このキッチンカーでシフォンケーキの移動販売を行っている
「NONO KITCHEN」 オーナーの桑島敦子さんのご自宅です。
【NONO KITCHEN 桑島 敦子(くわしま あつこ)さん】
群馬県太田市出身。二年前からシフォンケーキの製造販売をスタート。2023年秋に富岡市妙義町に移住し、民家をリフォームしてケーキ製造工房兼自宅として居を構える。
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やさしさと思いやりの気持ちを込めて
群馬県産の香り豊かな小麦粉に、カラダに優しい米油、新鮮な卵、きび砂糖、牛乳をたっぷり使い丁寧に作られたシフォンケーキは、くちどけが良く、ふわふわ・しっとり食感がたまらない逸品。
NONO KITCHENではシフォンケーキのフレーバーの種類も多く、蜜芋シフォンやベーコンチーズなど、他ではあまり味わえないオリジナルテイストも楽しめます。
さらに、新鮮な卵を使った手づくりプリンや、シフォンケーキのパフェも人気だそうです。
― 桑島さんは、なぜシフォンケーキを専門に作っているのでしょうか?
桑島さん:シフォンケーキを作るようになったきっかけは、以前勤めていた高齢者施設での経験や、そこで感じたことが影響していると思います。多くのご高齢の方たちが飲み込む力が弱くなり、食べることへの興味がなくなる方もいらっしゃいました。そこで、「嚥下力の落ちた方にも安全に安心して食べてもらいたい」「美味しいものを食べて生きる喜びを感じて欲しい」そんな願いを込めて、シフォンケーキ作りを始めました。
今では「だれでも安心して食べられる」ということから、シフォンケーキの知名度は上がり、小さなお子さんからご年配の方まで多世代にわたり愛されるスイーツになったと思います。 さらに、くちどけが良くてふんわり・しっとりな食感を伝えたくて、当店の商品は『砂漠でも食べられるシフォンケーキ』というキャッチフレーズで販売しているんです。
― なるほど。『砂漠でも食べられる…』というフレーズが気になっていたんですが、そのような意味が込められていたんですね!
― お店を構えるのではなく、キッチンカーでの移動販売というスタイルにしているのはなぜでしょうか?
桑島さん:高齢者施設に勤めていた時に、「スーパーマーケットには行けるけどケーキ屋さんには行けない」など、買い物自体に時間や労力をかけることが難しい方が多くいることを実感したんです。そこで、私が高齢者や買い物困難な方のご近所に出向いてみよう!と考えました。実際にスーパーマーケットの駐車場にキッチンカーを停めて販売をしてみると、多世代の方が興味を持って購入してくださって…。シフォンケーキの移動販売が来ることを楽しみにしていると言ってもらえるようになりました。
スイーツには人を癒すチカラがあると思っています。なので、このキッチンカーにもオシャレで可愛らしい雰囲気を乗せて、お客様がここでシフォンケーキを選ぶことを楽しんでいただけたら嬉しいですね。
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理想的な住環境に魅せられて
― ご出身は群馬県太田市とのことですが、なぜ富岡市に移住を決めたのですか?
桑島さん:今までは太田にある実家の飲食店の一画を借りてケーキ作りをしていたんですが、ちょっと手狭に感じるようになり、自分の工房兼住居、さらにキッチンカーを停められる駐車場付きの物件がないかなーと探していたんです。そんな時に見つけたのが、富岡市の「空き家バンク」でした。
この空き家バンクを見ていたら、(私にとっての)たくさんのお宝が目に飛び込んできて、妄想が膨らみワクワクが止まらず。。 さっそくターゲットである妙義の物件を内見させていただいたんですが、広い敷地や家の作りが私の理想に近く、さらに妙義山の景色もステキだったので、すぐに移住を決めました。
― 妙義山の存在も移住の決め手になったんですね。そんな妙義での新しい暮らしはいかがですか?
桑島さん:引っ越してきた当初は地域の方に受け入れていただけるかが不安でしたが、ここで毎日を過ごしてみたら、そんな思いは取り越し苦労でした(笑)。地域のみなさんは優しくて、とても住みやすい場所だと日々実感しています。
妙義地区には先輩移住者さんも多く住んでいて、いろいろと気にかけていただいています。ちょっとした疑問などを聞きやすい雰囲気なのも嬉しいですよね。
また、ここでは人と人の繋がりも強く感じています。こちらへやってきて間もない頃に、「秋の妙義フェスに出店しませんか?」とご近所の方からお誘いを頂いてイベントに参加したんですが、この妙義フェスが素晴らしい体験となりました。「地域を盛り上げよう!子どもたちに楽しんでもらおう!」という思いが会場に溢れていて、いいところに引越してきたなと改めて実感しました。
愛犬モモちゃんも妙義暮らしを楽しんでいるようです♪
― これからやってみたいことはありますか?
桑島さん:妙義に住むようになってから、キッチンカーで出向くエリアも広くなり、富岡市内だけでなく安中や松井田のイベントに参加する機会も多くなりました。 妙義は過疎化が進んでいると感じているので、微力ですが地域の活性化に繋がるようなイベントも企画中です。私一人ではなかなか難しいのですが、今までの移動販売で知り合ったステキな仲間たちに声をかけて、自宅の庭で小さなマルシェみたいなこともやってみたいですね。
また、地域の子どもたちがお買い物に来れる「町の駄菓子屋さん」みたいな存在になりたいという夢もあります。
昨年12月に出店した「みょうぎ大の字市」では背景の妙義山が圧巻でした!
NONO KITCHENさんの出店場所やイベント情報は、インスタグラムでお知らせしています。
⇒ 砂漠でもたべれるシフォンケーキ NONO KITCHEN
取材に訪れたのは、年が明けて最初の日曜日のこと。
桑島さんから「自宅の庭でシフォンケーキの販売をします!」と連絡を受け、妙義に向かってみると… 次から次へとお客さんがひっきりなしに訪れているではありませんか。
そのお客さんのほとんどが、妙義周辺にお住まいのご近所さん。みなさんが笑顔でお喋りを楽しむ様子を見ていると、桑島さんがずいぶん昔からここに住んでいるかのように思えてきます。
「妙義のみなさんはあったかくて優しい」
その言葉に深く納得するとともに、妙義の魅力を再認識したひとときでした。
今年は妙義のご自宅でも販売する機会を増やしたいとお話ししていた桑島さん。
この街からまた新たなストーリーが生まれていくのが楽しみですね。
(マツオ)