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まゆといと

2023.08.18 移住・Uターン

【Mulungi Coffee Room】茂原 満里奈さん

「エチオピアのコーヒーは紅茶のように華やかで飲みやすいですよ。」

 

メニューを眺めていると、店主が微笑みながら教えてくれた。

 

・ウガンダ by Ben Makhone 浅煎り

・エチオピア by Ismael Hassen Aredo 浅煎り

・ブラジル by Caio Pereira 浅煎り

・ウガンダ by ブコンズ族等の小農家 中浅煎り

・ウェバレブレンド 中煎り

・メキシコカフェインレス 中煎り

 

書かれているコーヒー豆の産地を眺めているだけで、ワクワクしてしまう。

 

「では、エチオピアをホットでお願いします。」

 

私のオーダーを受けた店主は手際よく豆を挽き、丁寧にお湯を注いでいる。

湯気とともに広がる芳醇な香りに心がはずむ。

 

そして、目の前にそっと置かれたコーヒーを頂いてみると…

爽やかでフルーティな香りが口いっぱいに広がり、とても上品な味わいだった。

 

 

 

 

格別な味わいのコーヒーを淹れてくれる店主の茂原 満里奈さんは、子どもの頃から “朝に飲むコーヒー” が大好きだったそう。

 

そんな彼女は大人になり、世界へ旅立ち、それぞれの国の文化や暮らしに触れて、学びを深める日々を送ります。

 

そして今年、生まれ故郷の富岡に舞い戻った満里奈さんは、コーヒー専門店をオープンしました。

お店の名前は──『Mulungi Coffee Room (ムルンジコーヒールーム)』

 

 

 

 

満里奈さんの毎日は、午前中にコーヒー豆を自家焙煎し、午後になるとお店でコーヒーの提供を始めます。

シンプルな造りのお店で、満里奈さんがキッチンカウンター内でコーヒーを淹れるスタイル。屋外のオープンスペースにベンチやテーブルが並び、景色を眺めながらコーヒーをいただけます。もちろんテイクアウトもOK。

また、「薫り高い新鮮なコーヒーをご家庭でも味わってほしい」という思いから、生豆から厳選した自家焙煎のコーヒー豆や、お手軽に本格コーヒーが楽しめるドリップバッグの販売も行っています。

 

夕方のお店の様子を覗いてみると…県外ナンバーの車がやってきたり、近所をお散歩中のおばあちゃんがふらっと立ち寄ったり、常連さんがいつものコーヒーを注文したり…と、絶え間なくお客さんがやってきていました。

 

テイクアウトのコーヒーを買いに来た方にお話を伺ってみると、

「地元にこんな素敵なお店ができて嬉しい。いろんな種類のコーヒーを選ぶ楽しみがあってワクワクしますよね。」

と、すっかりこのお店のファンになってしまった様子。

 

 

 

 

ニコニコと明るい表情で一人ひとりのお客さんとの会話を楽しむ満里奈さん。

初めて会ったのに、なんだか昔から知っているような…そんな温かくてチャーミングな彼女にすっかり魅せられた私は、コーヒーのお話やお店のことを、もっと聞いてみたいと思いました。

 

 

 

【茂原 満里奈(もはら まりな)さん】

富岡生まれ、富岡育ち。今年の6月に市内の神農原地区に『Mulungi Coffee Room (ムルンジ コーヒールーム)』をオープン。県内のイベントや軽井沢で出店をしながら、新たなコーヒーの魅力を伝えている。

 

 

 

 


 

 

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新たな道へ進むきっかけは・・・

 

 

― 店名になっているMulungi(ムルンジ) にはどんな意味がありますか?

 

満里奈さん:私が学生時代に訪れたウガンダの言葉で、ムルンジには「美しい、優しい」という意味があります。コーヒーだけではなく、私自身が生きる上でも大切にしたい言葉です。

 

― どんなきっかけでウガンダへ行かれたのでしょうか?

 

満里奈さん:大学生の頃に管理栄養士の勉強をしていて、同時にボランティア活動にも力を注いでいました。そのボランティア活動の一環としてウガンダへ行くことになったんですが、初めての海外ということでずいぶん衝撃を受けました。

ウガンダ滞在時は学生寮に住んでいたんですが、現地の家庭にホームステイする機会もあったんです。その時に滞在した家は、お世辞にもちゃんとしているとは言えなくて、、土壁にわらの屋根が乗っていて、入口には扉がなく雨風が入ってくるような家でした。食べるものは、トウモロコシの粉をお湯で溶いたものや豆のスープで、それも石ころが入っていたり。水道の整備もされていなくて、井戸水を飲んではお腹を壊していました。

 

― けっこうキビシイ住環境でしたね。その時は「早く帰りたい」と思わなかったんですか?

 

満里奈さん:それが全くなくて(笑)。体調を崩しても「帰りたくない!」って思っていました。ウガンダでは人々が食べ物を分かち合い、お互いに助け合いながら生きています。そこでの暮らしはとてもシンプルなんです。日本では当たり前と思っていた便利な暮らしができないことから、ずいぶんと考えさせられることが多くて、いろいろな気づきを得ることができました。さらに、自分が今まで知らなかった世界を知ったことで、もっと色々な世界を見てみたい!と思うきっかけにもなりました。

 

― 若く多感な時期にウガンダで暮らすなんて、なかなかできない経験ですね。大学卒業後はどんなことをされたのでしょうか?

 

満里奈さん:大学卒業後は管理栄養士として病院に勤務しました。しかし、ウガンダで経験したことが忘れられず、さらに視野を広げたい!ということで、20代半ばにオーストラリアとカナダへおよそ3年間住みました。そこで英語を学びながらいろいろな職業を経験したんですが、なかでもオーストラリアのカフェでバリスタとして仕事をしたことが、その後の人生に影響を与えたと思います。

オーストラリアには独自のコーヒー文化があり、街には個人経営のさまざまなお店が並び、その日の気分でコーヒーを選ぶ楽しみがあります。みんなが心にゆとりを持ってコーヒーを楽しんでいる、そんな文化に惹かれて、コーヒーの道へ進みたいと思うようになりました。

 

― 20代で海外へ出てその土地の暮らしや文化に触れたことは、貴重な宝物になりましたね。その後、日本へ帰国してからはどんな暮らしを?

 

満里奈さん:帰国後は、コーヒーの名店がひしめき合う大阪でバリスタの修行をし、尊敬すべき師匠やコーヒーを愛する仲間たちとの出会いがありました。その後、神戸では3ヵ所の店舗立ち上げに携わり、焙煎士や店長の仕事をしました。さらに、和歌山県の那智勝浦では街づくりの一環として、お店を間借りしてコーヒーの提供をしたりと…多くのご縁に恵まれて、たくさんの貴重な経験をさせていただきました。

この道へ進んでから、年齢や国籍や性別に関係なく多くの人と繋がることができて、「コーヒーは本当におもしろい」と改めて実感しています。

 

 

 

 

― ここまでのお話を聞いていると、積極的にご自身の生きる道を進んでいる印象を受けます。子どもの頃はどんなお子さんでしたか?

 

満里奈さん:人懐っこくて、いつも親せきのおじちゃんに抱っこされてるような子でした(笑)。私の父はクリエイティブで朗らかで、その部分を受け継いでいると思います。両親は、私が小さいころから色々な世界を見せてくれて、色々な経験をさせてくれました。たくさん旅行に連れて行ってくれたし、ゴルフやスイミングなどの習い事もさせてくれて、感謝しています。

 

 

 


 

 

 

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コーヒーをもっと身近な存在に

 

 

― そんな活発な満里奈さんが富岡市にUターンしたのはなぜですか?

 

満里奈さん:コーヒーのお店を開くなら都会よりも田舎が良い、という思いがありました。もともと生まれ育った富岡が大好きで、家族や友達がいるという安心感もありますね。

私はオーストラリアやカナダで、コーヒーは心を豊かにしてくれるものであり、奥深い存在であることを知りました。街にはたくさんのコーヒー店が並び、みんなが自分の好みのコーヒーを楽しんでいる。そんなコーヒー文化をこの地域でも広めていきたい、という思いがあります。なので、私のお店だけではなく、富岡にもっとたくさんのコーヒー店ができたらいいなと願っています。

 

― 私もカナダ在住時に、子どもたちをべビーカーに乗せてコーヒー店に寄ることが日常でした。まわりの人たちもコーヒーを飲みに出かけることが当たり前で、暮らしに根付いていたと感じます。

 

 

 

 

― これからの抱負や夢があればお聞かせください。

 

満里奈さん:この街からコーヒーの魅力をどんどん発信したい!そして自家焙煎コーヒー豆の販売にも力を入れていきたいです。また、今まで学んできた管理栄養士の知識を活かして、フードペアリングもやってみたいですね。今後はこのお店でオリジナルのお菓子も提供できたらと考えています。このようなカタチでスタートしたお店ですが、少しずつよりよい方向へ進化していけたらいいなと思っています。

 

 

コーヒーを使ったカクテルも!こちらのクレオパトラティーカクテルは、ノンアルコールで美肌効果もあり、夏にぴったり。

 

 

【Mulungi Coffee Room】

 

 

◎営業日・営業時間はインスタグラムでお知らせしています。

@mulungicoffeeroom

 

◎自家焙煎コーヒー豆の販売はコチラ

Mulungi Coffee Room

 

 

 


 

 

お店のまわりには緑も多く、癒し効果バツグンのロケーション。

コーヒーをいただきながら周りの畑に目が留まり「ずいぶんキレイにお手入れされた畑ですね。」と満里奈さんに話しかけると、「これは私の祖父母の畑で、今も現役で畑仕事をしているんですよ。」とのこと。さらに、「毎日暑くて、おばあちゃんが畑で倒れるんじゃないかって心配しているんです。」と満里奈さん。

 

お店では、おばあちゃんが作った朝採れの新鮮野菜が並んでいることもあります。コーヒー店でお野菜が買えちゃうところも、、なんだか富岡っぽいと感じませんか?

 

コーヒーの味もさることながら、お店の雰囲気や茂原さんご自身の人柄に魅力を感じ、「また来たいな」と思わせてくれる『Mulungi Coffee Room(ムルンジコーヒールーム)』。

これから進化していくであろうお店や満里奈さんの未来にも、期待がふくらみますね。

 

(マツオ)

 

 

 


 

 

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