みなさんは富岡市の西部で「下仁田フィッシングパーク」という看板を目にしたことはありませんか。
釣り好きな人なら知っている管理釣り場で、名前には “下仁田” とついていますが、下仁田町ではなく富岡市南蛇井にあります。
首都圏自然歩道「関東ふれあいの道」の『群馬県No.8 旧信州街道の道』と『群馬県No.9 大桁山登山道のみち』 が交わる場所に位置し、まさにポツンと一軒家状態。
一体どんな方が、なぜこの場所で釣り堀を??と気になった私は、下仁田フィッシングパークを営む 唐鎌 貞夫さん にお話を伺ってみることにしました。
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縁あって南蛇井へ
オーナーの唐鎌 貞夫さん(73歳)
― まず、所在地は富岡なのに “下仁田” というのにはどんな理由があるのですか。
唐鎌さん:渓流釣りをする人たちの間では “富岡” よりも “下仁田” の方が有名で、より自然を連想させるということもあって “下仁田” になりました。
― まさにポツンと一軒家という環境ですが、この場所に住むことになったきっかけをお聞きしたいです。
唐鎌さん:私の父が戦時中、熱海の近くにある丹那トンネルで、徴用で動員されて働いていたらしいんですよ。それで函南(かんなみ)という場所にあった官舎に居たんだけれど、終戦になって。元々東京に住んでいたから戻る場所はないし、ふるさとも無いから田舎に親戚もいない。どこに行こうかということになった。
すると、働いていた仲間に南蛇井出身の方がいて、「行くところが無いなら一緒に “なんじゃい” へ行ってみないか」と言われて。それで来たらしいです。
両親も、まったく他人様だらけのところへポツンと来たもんだから、おおごと※したみたいです。千平駅の近くに10年くらい生活していまして、その頃に現在の場所に空き家を見つけ、移り住むことになったんです。
※おおごと…苦労が多く大変なこと
現在の母屋はお父様が生前に手作りした家で、付属屋と釣り堀の管理棟は唐鎌さんの手作りによるものだそう。
― 移り住んだ時は、まわりを開墾することから始まったのですか?
唐鎌さん:家はあったけど、この辺から上は全部竹やぶでね。ひどい竹やぶで手が入らなくて、荒れ放題で。あの頃は人力でしたからね。
私が中学生の頃かな、群馬県で手配してくれたブルドーザーが入ってやっと畑になったんですよ。でも粘土質で硬い土で、野菜などの作物を作ってもだめでね。最終的に栗を植えたけど、何年かするとこれもダメになるんだよね~。
唐鎌さん:10年くらい前に、ここに山形県出身の方がみえてね。「群馬県の西部はからっ風が強くて根がみんな凍みちゃう」って言われてね。山形県の方が「こっちの方が寒い」って言うのはおかしいんじゃない?と聞いたんですよ。
そしたら、「山形は寒さはここよりも厳しいけれど、冬は雪が積もってその下に根っこがあるので凍みないんですよ」って言われてね。あ~そういうことですかと。住んでみないとわからないですね。
― なるほど~。こちらは雪が積もらないから、地表の根っこが保護されないんですね。
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なぜ釣り堀に?
― 池にしようと思ったきっかけは、どんな事ですか?
唐鎌さん:栗を植えたり色々してみても上手くいかなかったけれど、ここの土は水持ちがいいんですよ。そこがこの土地の取柄で、それを上手く利用してるってことかな。最終的にはこの池になりました。
池でちょっと仕事ができて…なんていう考えはなかったんだよね。ただやるものが他に無いから池にしただけ(笑)。
唐鎌さんがパワーショベルで手作りした池。
唐鎌さん:池を作る時に、私はもう既に60歳近くになっていてね。あまり母ちゃんをあてにしないで、俺がひとりでやれる方法で釣り堀をやろう!と考えたんですよ。料理は出さない。来てもらってもお茶かコーヒーを一杯出すだけ。土曜日、日曜日でも自分の都合で留守にして、料金箱だけ置いてあります。
もう退職をして社会でいうといちばん動きやすい年代なんですよ。あまり役にはたたないけどね(笑)。だから何かと役も受けなくちゃならないしで、留守にもなる。それはお客さまにも了解をもらっています。留守中はよくお客さまから電話が入って、やり取りをしますね。
料金箱やご案内が。竿やえさはボックスにあります。
― フライフィッシングやルアーフィッシングを中心としたリリース専門の釣り堀は、この近辺には他にないですね。
唐鎌さん:釣り自体がだんだん元気がなくなってきている。でもこんなところがあれば、釣具屋さんでも若干道具も売れたり、喜んでもらえます。
儲かる仕事じゃないですよ。ただ、まぁ年寄り仕事としてはちょうどいいかな、って感じで。あまり負担はかからないしね。これなら、丈夫であれば80歳前後まではやれるかな!
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おすすめの楽しみ方は?
― 年間を通して、お客さまの様子はどうですか?
唐鎌さん:いちばん賑やかになるのは4月、5月ですね。でも釣りに適しているのは10月~3月です。
スイレンの見頃は6月頃です。
― 唐鎌さんおすすめの楽しみ方はありますか?
唐鎌さん:それはありますよ!ご夫婦で来られる場合は、奥さんは釣りをしないっていう方が結構いますね。そんな方は、春は山菜取り。フキやセリが多くて、タラの芽やウドなどもあります。それから秋は栗拾い。栗も結構落ちてるんでね。
そういうのを楽しみに来る人もいます。釣りだけじゃないですよ!!(笑)
◎お越しの際にはお問い合わせください
下仁田フィッシングパーク TEL.080-5196-4007
時期になると栗もたくさん落ちています。他にも、蛍の観賞や、近くの川では手長エビやザリガニも見つけられるそう!
― この自然豊かな環境で、釣り堀だけでなく何かを併設するというお考えもありましたか?
唐鎌:オートキャンプ場もやろうかと考えたこともあったけれど、池がたくさんあって子供には危険もある。池にフェンスや網をするわけにもいかないのでやめました。
池の種類がわかりやすく表示してあります。
唐鎌さん:魚を焼いて食べたい、マスを餌釣りしたい、などの問い合わせも多いけれど、その場合には他の釣り堀を教えてお勧めすすめしています。ここはルアーやフライでリリースの釣り堀。 徹底しないとね。
「ここを始めてよかったなぁと思っています」と唐鎌さん。
まねき猫の 「しろ」ちゃんです (=^・^=)
取材中、動物の鳴き声のような音楽が聞こえてきました。センサーが反応して、動物の鳴き声をミックスした音楽が流れるようです。
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自然を感じるひとときを
鍬柄岳と大桁山の登山口へも近い下仁田フィッシングパーク。釣り好きの方はもちろんのこと、2ルートの関東ふれあいの道を使ったハイキング(フットパス)も楽しむことができます。
雄大な自然の中で、季節を思い切り感じてみてはいかがでしょうか。
●上信電鉄千平駅から
「関東ふれあいの道」の『群馬県No.9 大桁山登山道のみち』に沿って2kmほど歩くと下仁田フィッシングパークに到着します。
●上信電鉄南蛇井駅から
北へ500mほど行き初めての信号を左折し、道なりに『群馬県No.8 旧信州街道の道』を約2.5km進むと到着します。
(マツモト)