富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2026.08.06 移住-Iターン

ヤギとはぐくむ安心な畑 【小川農園】小川 寿代さん

小高い丘の上の畑で、のんびりと草をはむヤギたち。

「メェー」と鳴く彼らは、実は立派にお仕事中なんです。

 

こんなのどかな風景が富岡市にあることを、みなさんは知っていましたか?

 

今回は、丹生地区で自然の力を大切にした野菜作りに取り組む、『小川農園』の小川 寿代さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

【小川 寿代(おがわ ひさよ)さん】

大阪府出身。海外生活を経て富岡市へ移住。現在は富岡市上丹生の「小川農園」で、夫婦でネギやニンニク、タマネギなどを栽培している。

 

 

 


 

 

人生を変えたオーストラリアでの出会い

 

― 農業を始める前は、どのような経験をされてきたのでしょうか。

 

小川さん:私は大阪府出身で、地元の専門学校で観光業を学びました。その後、神戸にある大手ホテルに就職したのですが、なんだかしっくりこなくて。「もっと大きな世界を見てみたい」と思い立ち、ワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアへ渡りました。

現地では世界中から集まった若者たちから刺激をもらい、毎日がとても充実していました。「日本に帰りたくない!」という気持ちが強くなっていましたね。

 

― その後もオーストラリアで生活を続けられたんですね。

 

小川さん:はい。現地の大学に進学し、学生ビザで4年間滞在できることになりました。当時は円高で学費も手頃だったので、アルバイトをしながら学生生活を送ったんです。専攻がナチュラルセラピー(自然療法)で、そのなかに解剖学や薬草学を学ぶ時間があったので、専門用語が難しくてずいぶん苦労しましたね。

そんなオーストラリアでの留学生活の中で主人と出会い、数年後に結婚することになりました。

 

― オーストラリアでの出会いが、現在の暮らしへとどのようにつながっていったのでしょうか?

 

小川さん:主人は富岡市出身で、農家の家の生まれなんです。なので結婚を機に富岡市へ移り、私も畑を手伝うようになりました。

私はもともと都会よりも自然豊かな場所が好きだったので、こちらの暮らしにもすんなり馴染むことができました。

 

 

丹生地区の丘の上にある小川農園の畑

 

 

 


 

 

「ヤギファースト」が育てる、すこやかな畑

 

― 農業をやる上で、どんなことを大切にしていますか?

 

小川さん:シドニーの大学で自然療法や薬草学、アロマセラピーなどを学んだ経験から、自然のサイクル(循環)や植物が本来持つ力を強く実感していました。だからこそ、農業をやるなら学んだことを活かしたいという気持ちがありました。

 

― ヤギとの暮らしは、どのように始まったのでしょうか。

 

小川さん:結婚を機にこちらへ来て、せっかくなら都会では飼えないヤギを飼いたいと思ったんです。群馬にはヤギを飼っている方が結構多くて、「ヤギネットワーク」というものがあるんですよ(笑)。

それで実際に飼い始めてみたら、ヤギが本当にかわいくて!「もし除草剤が付いた草をヤギが食べてしまったら大変だ」「これからはうちの畑では絶対に除草剤は使えないね」という話になりました。わが家の農法は、あくまでヤギファーストなんです。

有機肥料を使い、化学農薬や除草剤を使わない畑づくりは、私が学んできたことを活かせる分野でもありました。ヤギがきっかけではありましたが、人間はもちろん、生きものや地球にもやさしい農法に切り替えようということになったんです。

 

 

畑の横でせっせと働くヤギたち

 

 

― 「除草剤を使わない」という農法を実際に続けてみて、良かったことや大変なことはありますか?

 

小川さん:良かったことは、自分たちで育てた安心・安全な野菜を毎日食べられることですね。「食」はすべての源だと思っているので、それを実感できるのは嬉しいです。

なにより、マルシェなどでお客様から「美味しい」「今まで食べていたものとは全然違う」と言っていただけることが大変ありがたいですし、日々の励みになっています。

一方で大変なのは、やはり草取りですね。畑ではヤギが雑草を食べてくれるとはいえ、細かな除草作業は人間が行っています。手で雑草を取ったり、草刈機を使ったりと、毎日のように作業しなければならなくて……これは主人がやってくれているのですが(笑)。

 

― 収穫が終わったあとも、何か工夫されていることはありますか。

 

小川さん:作物を収穫したあとは、畑に牧草をまいて土を休ませ、地力を高めています。また、牧草で覆うことで雑草が生えにくくなるよう管理しています。こちらもほぼ主人が頑張ってくれています(笑)。

主人の実直な手仕事があってこその、安心・安全な畑なんです。

 

 

夏場はおやつがたくさん♪ まるでサラダバー!

 

 

 


 

 

田舎ではぐくむ暮らしと、これからの夢

 

― 大阪から富岡へ移り住んで、こちらの暮らしはいかがですか?

 

小川さん:群馬の夏も暑いですが、関西の盆地特有の暑さに比べるとマシだなって思います。特に丹生の畑は、妙義山から涼しい風が吹き抜けるので、朝晩は心地よいですね。

冬もそれほど寒くなく、雪も積もらないので過ごしやすいです。水も空気も澄んでいて、畑の周りには野生動物もたくさんいて、山並みも美しくて飽きません。そして、なにより人が優しいと感じますね。面倒見が良い方が多い印象です。

 

 

ヤギとおなじ目線で駆け回る息子さん

 

 

― ヤギとの暮らしは、どんなところが魅力だと思いますか?

 

小川さん:ヤギは面白いですよ!飼い主をちゃんと認識して私のあとをついて来たり、甘えた声で「メェメェ」と鳴いたり、私の姿が見える範囲で草を食べていたり。そんな姿を見ると、懐いてくれているのがわかって嬉しいですね。

ただ、ヤギって頭突きでコミュニケーションを取るんです。だから体の小さい子どもには、「自分のほうが強いぞ!」という意味も込めて体当たりするんですよ。うちの息子も小さい頃は、よくヤギに倒されていました(笑)。そんな息子も今では、頼もしくヤギの世話を手伝ってくれるようになって。子どもの教育にも一役買っているなと感じます。

また近いうちに、子ヤギを2頭お迎えするんです。ますます賑やかになりそうで、とても楽しみにしています。

 

 

頭突きコミュニケーションを披露してくれました!

 

 

― これからやってみたいことを教えてください。

 

小川さん:まずは、わが家の畑の除草隊であるヤギたちの小屋を、もっと居心地の良い場所に整えてあげたいです。さらに、今後はニワトリも飼育して、理想の田舎暮らしを形にしていきたいですね。

そして農業では、新しい販売ルートを確立したり、マルシェにも積極的に出店したりして、地元のみなさんと直接触れ合う機会を増やしていきたいです。

 

 

現在、小川農園の野菜は産直通販サイトで購入することができます

 

 

― 農業だけでなく、アロマやボディケアのお仕事もされているそうですね。今後はそちらも力を入れていかれるのでしょうか。

 

小川さん:はい。頑張って取得したリメディアルセラピー※の資格を活かしていきたいと思っています。これまでも細々とセラピストとして活動をしていたのですが、子育てが落ち着いた数年前から少しずつ活動を増やしています。ボディケアの仕事も大好きなので、今後は群馬はもちろん、東京や軽井沢にも活動の場を広げていきたいです。

 

※リメディアルセラピーとは、オーストラリア発祥の「治療的」な施術。筋肉や骨格のバランスを整えることで、心身の治癒力を高めることを目的とした専門的なボディケアです。

 

 

小川さんは出張での施術にも対応しています

 

 

― これからがますます楽しみですね。

 

小川さん:そうですね。富岡の自然や環境を活かしながら、いろいろなことに挑戦していきたいです。まだ出会えていない人もたくさんいるので、多くの人とつながりながら、家族や仲間、そして大好きなヤギたちと、楽しく健康に過ごしていけたらと思っています。

 

 

 

◆小川さんのサロンの詳細⇒ Instagram

◆小川農園の情報⇒ 小川農園Instagram

◆産直通販サイト⇒ 食べチョク

 

小川農園の商品は「道の駅みょうぎ」でも購入できます

 

 

 


 

 

ヤギとともに暮らし、太陽の下で土に触れながら、健やかな毎日を送る小川さん。

その笑顔からは生き生きとしたエネルギーを感じられ、こちらまで元気をもらいました。

 

「ヤギもヒトも、食べるものは安心できるものがいい」

その一言に、小川さんの作る野菜がどれほど丁寧に育てられているかが伺えます。

 

ご主人が黙々と守る畑、奥さまの持つ自然療法の視点、そして愛らしいヤギたち。富岡にこのような場所があったなんて──。

富岡にはまだまだ素敵な場所がたくさんあると、あらためて知ることができました。

 

 



●この記事を書いた人:マツオ -About me-

●この記事に関するお問い合わせはこちら



 

 

 

 

イラストレーター 山岸みつこさん

移住し農家に 栗城 大輔さん