暑い季節になると冷たいアイスが食べたくなりますよね。皆さんにも、お気に入りのアイスや、いつも家の冷凍庫に入っている定番のアイスはありませんか?
今回ご紹介するのは、ひと口食べた時の幸福感と、上品に香るフレーバーが特徴的な、ちょっと贅沢なジェラートです。
私がそのジェラートに出会ったのは、5月に開催された「わんこフェスタ」でした。
「ジェラートの試食はいかがですか?」
そう声をかけられ一口食べると、とってもまろやかで濃厚な味わい。初めて見るパッケージに「どこのお店ですか?」と尋ねると、「神農原にある栄光製作所です」と教えていただきました。
工場でスイーツ?
なぜ?どうして?いつから?
そんな疑問が次々と湧いたカネコは、詳しいお話を聞いてみたくなりました。
丁寧に作られた本気のジェラート。そこには、とても素敵なストーリーがあったのです。
㈱栄光製作所とは
昭和48年創業。電子機器の基板実装・組立・検査を行う製造会社です。代表を務める勅使河原 覚さんは、富岡高校卒業後、サービス業や製造業など他企業で経験を積み、先代であるお父さんから家業の工場を引き継ぎました。
経営不振の時期には、会社一丸となって節電や意識改革に取り組みました。その努力が実を結び、平成27年度の「省エネ大賞(省エネ事例部門)」において、「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。
現在は省エネのノウハウを発信し、2年前から富岡高校で省エネ指導を行うなど、その実績は多くのメディアで紹介されています。
またダイバーシティの一環として外国人材の雇用や育成を進め、多方面から高い評価を受けています。
左:代表の勅使河原 覚さん、右:経営企画室長を務める息子の将也さん
原点はインターンシップの高校生を思う気持ち
― 電子機器の製造を行う栄光製作所が、スイーツを作るようになったきっかけを教えてください。
勅使河原さん:数年前に、外国にルーツを持つ高校生のインターンシップ受け入れを依頼されたのがきっかけです。私たちの会社は「群馬県多文化共創カンパニー」として認証されているため、その関係先から、日本在住で親御さんが外国籍の高校生を受け入れて欲しいという依頼がありました。それ以前にもベトナムの大学からインターンシップを受け入れていましたが、海外ルーツの高校生は初めてでした。
(「群馬県多文化共創カンパニー」とは、群馬県が令和3年から創設した認証制度で、外国人材を雇用し、仲間として迎え入れ、ともに活力を創り出している事業者を認証しています。)
高校生のインターンシップは製造現場の体験が目的でしたが、ここでは半田付けなど少し地味な作業が多いので、高校生がどんな風に感じるのか心配になりました。
高校生には製造現場を体験することで、「楽しかった」「勉強になった」と思ってもらいたい。それに、せっかく来てもらえるなら思い出に残るようなことをしてあげたいと考え、休憩時に美味しいおやつを用意したらどうかなと思ったんです。
自分が海外へ行った時に現地のスイーツを食べて、「やっぱり日本のスイーツは美味しいな」と感じることが多かったので、彼らにも喜んでもらえるのではと思いました。でも、彼らに合いそうなスイーツを色々と探し回ったものの、自分がイメージするものには出会えなくて…。
そんな時に知り合いに相談したところ、その人がスイーツを試作してくれたんです。食べてみると、自分のイメージに近いものでした。そこから「もう少しこうして欲しい」と相談しながら改良を重ね、彼らにも喜んでもらえそうなスイーツが完成しました。
きっかけとなった初めてのスイーツ
― 探しても理想のスイーツが見つからず、実際に作られたんですね。高校生たちの反応はいかがでしたか?
勅使河原さん:一口食べて「うまっ!」と言ってくれたんです。その一言が本当に嬉しかったですね。女子高生に喜んでもらえるかなと思っていたんですが、そう言ったのは男子高校生で、その後も美味しそうにバクバク食べてくれました。あの時のことは今でも忘れられません。
― 勅使河原さんの気持ちが伝わったのかもしれませんね。
勅使河原さん:当時はコロナ禍で、取引先との対面や今まで普通にできていたコミュニケーションがほとんどなくなってしまい、寂しさを感じていました。そんな中で高校生たちを迎えて、スイーツを食べて「うまっ!」と言ってもらえたことが、とても胸に響きました。一生懸命にやったことを目の前で評価してもらえて、本当に嬉しかったです。
次代へつなぎたい思いと経験

― スイーツ事業を立ち上げ、スイーツブランド「EIKOHS」の誕生へと発展していった経緯を教えてください。
勅使河原さん:いつかは自分たちのブランドを持ちたいという夢がありました。電子機器製造は注文を受けて製造し、製品を納めるという下請けの仕事です。先代の頃から「電子機器製造で自社ブランドを持ちたい」という思いはありましたが、設備投資や人材の確保など、ハードルは高いものでした。
でもスイーツ作りをする中で、「こんなスイーツを作りたい」と試行錯誤することは、自分たちで設計開発を行い、自社ブランドを持つことにつながるのではと気づいたんです。
しかもこんなに喜んでもらえるのなら、「スイーツ製造を事業として本格的に取り組んでみよう」という形になりました。
― 新しい事業を始めるというのは、大きな覚悟も必要だったのではないでしょうか?
勅使河原さん:私が先代から会社を引き継ぐ時には、課題も多く、不安を抱えながら、仕方なくという思いもありました。決断と実行の繰り返しで、大変なことに耐えながら夢中でやってきました。その時は分からなかったけれど、今になってみると先代が私に託した思いを理解することができます。
スイーツ事業も順調にやっていけるのか分からない中でのスタートでしたが、3代目(将也さん)と一緒に立ち上げることで、新事業の面白さや大変さを経験してもらいたいという思いもあって、相談しながら形にしていきました。
― 新たな事業を始めることにも、今までの経験が活かされているんですね。ご苦労もあったと思いますが、それでも挑戦を続ける勅使河原さんの原動力は何でしょうか?
勅使河原さん:私は、何でも続けていないと結果は出ないと思っています。途中でやめてしまえば、今までやってきたことが無駄になってしまう。それはもったいないですよね。だったら大変でも続けて、納得のいくところまでやってみようと思っています。
何でもやればできるんじゃないかという気持ちで取り組んでいます。これからもみんなに喜んでもらいたいですから。
ジェラート・スイーツは工場の奥のスペースで製造しています
今までのご縁が支えるジェラート作り
― EIKOHSの特徴やこだわりはどんなところですか?
勅使河原さん:スイーツの事業者が多くいる中で、私たちは後発としてやっていかなければなりません。だからこそ、自信を持ってお客様に届けられるものを作りたいと決めました。
自分たちらしい特徴を出し、素材を活かして他との違いを出したい。そう考えると、少し値段は高くなりますが、生産量を限定し、ハイブランドとしてやっていこうと考えました。
― 季節のフルーツやジェラートのフレーバーはどのように決めているのでしょうか。
将也さん:スイーツやジェラートの発想と設計は代表が行い、それをどのように形にしていくのかをみんなで考えています。そして最終的な味の判断も代表が行います。入口と出口は必ず代表を通らないと商品にはなりません。
ジェラートの試食をさせていただきました
勅使河原さん:特に力を入れているミルクフレーバーですが、一般的な食材を使ったとしても、高級な食材に負けない味に仕上げるまで妥協しないことが一番のこだわりですね。くちどけや味わいの細部にまでこだわり、そのミルクのコクを最大限に引き出しながらも、すっきりとした後味に仕上げることができています。
ストロベリーフレーバーは、「あまりん」といういちごを贅沢に使って、濃厚に仕上げています。また、あえていちごのつぶつぶを取り除くことで、より滑らかなくちどけを楽しんでもらえるようになっています。
― どれも素材の味が活かされていて、とても美味しいです。「あまりん」はとても甘くて人気のある品種ですよね?
勅使河原さん:この「あまりん」には、本当に不思議なご縁があるんですよ。きっかけとなった最初のスイーツを作ってくれた人の身内が、いちご農家だったんです。最初に聞いたときはびっくりしました。あまりんはそこから取り寄せています。
他にも、以前からの知り合いがブドウを作っていたり、もともと栄光製作所として関わっていた方々とのご縁がスイーツ事業を支えてくれています。そうしたご縁に恵まれているなと感じています。
― ジェラートのフレーバーは色々ありますが、「ストロベリー・セレナーデ」や「ファンファーレ・レモン」など、どれも素敵なネーミングですね。
勅使河原さん:私は以前から製造現場はオーケストラであると考えています。オーケストラでは、指揮者のもとで各楽器が最高の音を奏で、その一体となった音色がお客様を感動させます。同じように製造現場でも、それぞれの工程が責任を持ち、プロとして仕事に取り組むことが大切だと従業員に伝えています。
従業員一人ひとりが大切なパートで、それらが合わさって一つのメロディになっていく。それぞれ違う工程ですが、最終的には一つのものを作り上げる仕事です。そんな思いから、ジェラートにも音楽にちなんだ名前をつけています。
3代目が見つめるEIKOHSの未来
― スイーツ事業部にはこれまでの栄光製作所さんの思いが詰まっているようですね。3代目の将也さんは、この事業をどのように受け止めていますか?
将也さん:代表はこれまで、ずっと大変なことを乗り越えてきたのだと思います。私が子どもの頃から、いつも忙しく働く父の姿を見てきました。先代が始めた会社を継ぎ、経営ではマイナスをゼロにするような日々だったと思います。
その代表が今、やっと自分のやりたいことを始められたのだと思うと、自分もできる限り支えていきたいです。これからも一緒に頑張っていきたいですね。
― スイーツを作ることに戸惑いはありませんでしたか?
将也さん:昔から料理をすることが好きだったので、スイーツ作りも楽しいです。代表のこだわりに大変だと感じることもありますが、やるからには一番になりたいと思っています。「群馬と言えばEIKOHS」と言ってもらえるように頑張ります。

富岡高校の文化祭に出店した時の様子。イベント出店時は従業員の皆さんが活躍しています。
販売は主にオンラインとなりますが、イベントなどに出店されることもあります。販売情報や出店予定などの詳しい情報は、Instagramでチェックしてみてださい。

いかがでしたか?皆さんも食べてみたくなりませんか?
インターンシップに来る高校生を思う勅使河原さんの気持ちがきっかけとなって始まったスイーツ事業。後押しにはさまざまなご縁が重なったとお話されていましたが、それは、どんなことにも諦めずに挑戦する勅使河原さんが引き寄せたご縁だったのではないでしょうか。
私がこの美味しいジェラートに出会えたのも、そんなご縁のひとつだったら嬉しいです。
素材を活かし、食感と味わいにこだわって妥協せず作り上げたジェラートが、皆さんの『至福のひととき』となりますように。

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