ある日、何気なくSNSを眺めていると…
「珈琲麻袋を販売します。ご興味のある方はご連絡ください。」
そんな投稿が目に留まりました。
麻の素朴な風合い――
原産地を想像できるような文字とデザイン――
画像に映る麻袋を眺めていると、異国の空気を感じワクワクしました。
「なぜ麻袋を売っているんだろう?詳しいお話を聞いてみたいな。」
その思いに駆られ販売所を訪れてみると…その佇まいはまるで “秘密基地”!
どんな人なのかますます気になる…。
ということで今回は、こちらの秘密基地の住人である 中島悠太さん にお話をお聞きしました。
【中島 悠太(なかじま ゆうた)さん】
生まれも育ちも富岡市で、現在も富岡市在住。高崎市内の珈琲生豆販売店に勤務しながら、休日は趣味の木工や、家族で過ごす時間を楽しんでいる。
好きなものに包まれる空間
― とても素敵な作業場ですね。趣のある機械が並んでいて、職人さんの居場所みたいです。
中島さん:この作業場は元々、実家の父のものでした。私の祖父も大工職人だったので、祖父が使っていた機械を譲ってもらい、ここで使っています。今は私の趣味の小屋になっていて、自宅で飲む珈琲を生豆から焙煎したり、木工作品や家具を作ったりしています。
― 生豆からの焙煎を自ら行うなんて、ちょっと難しそうですが…少量でも焙煎できるんですね。
中島さん:私が勤務する珈琲店では業者さんだけではなく、個人で生豆を購入して自宅で焙煎されている方も多くいらっしゃいます。
最近は珈琲を趣味に持つ方が増えていると感じています。 多くの方に珈琲を身近に感じてもらえるのは嬉しいですね。
可能性を秘めた素材の活路を求めて
― 中島さんはどんなきっかけで麻袋を販売するようになったのでしょうか?
中島さん:私の勤務先では、海外から仕入れた生豆が入っていた麻袋が大量に余り、今まではそれらを廃棄処分していたんです。環境問題の観点からも大量の麻袋を捨てるのはもったいないし、必要としてくれる方がいれば有効活用していただきたい、と思っていました。そこで私の作業場で少しづつ麻袋の販売を始めてみると、リメイクしてバッグを作る方や、インテリア関係、学校関係者の方が購入してくれるようになりました。
ただ、この麻袋の販売・リサイクル活動を十分に周知することが難しくて…。必要としている方にどうやって行きわたるようにしたらよいのか?と、今でも思案しています。
― こちらには世界各国の原産地から出荷された麻袋が並んでいて、眺めているだけでも海外の香りや雰囲気を感じられますね。こんなに素朴で可能性を秘めた素材を捨ててしまうのは悲しいです…。私も何か作ってみたくなりました!
実際の活用法は?
取材にお伺いしたこの日は麻袋の販売日ということもあり、数組のお客様がいらっしゃっていました。
店内に並んだ麻袋を一枚づつ手に取り、真剣な表情で見極めている方に声をかけてみることにしました。
― よくこちらで麻袋を購入されているんですか?
お客様:今日が初めてです!たくさんの種類があり選ぶのが楽しいですね。わざわざ伊勢崎からやってきて良かったです(笑)。
― ちなみにこの麻袋をどのように使うのでしょうか?
お客様:わが家にはたくさんの観葉植物があるので、それらの植木鉢カバーにする予定です。麻素材と植物の相性も良さそうだし、インテリアをアレンジするのが今から楽しみです。こちらの麻袋は状態も良くて綺麗なものが多いですね。
◎◎麻袋の特徴と下処理◎◎
麻袋は、破れにくく繰り返し使える丈夫な素材で通気性にも優れています。穀物や農作物を入れる袋として再利用するのはもちろん、土のう袋や建築資材のクッション代わりにすることも可能です。
しかし、耐水性がなく水に濡れると縮んでしまい、表面には細かい麻繊維のけば立ちもあります。リメイクして使用する場合は、布用アクリル絵の具を塗布しアイロン熱で定着させる「樹脂コーティング」を行うことにより、生地表面を摩擦や水濡れから保護できます。
好きなもののルーツをたどると
― 中島さんは、手先が器用でモノづくりに長けていらっしゃる印象ですが、子どもの頃はどんなお子さんでしたか?
中島さん:子どもの頃はひたすら「ばあちゃん子」でした。 週末や長期休みのたびに下仁田のばあちゃんの家を訪れ、山へ入ったり川遊びをしたりと豊かな自然に触れながら、ばあちゃんたちにとても愛されて育ちました。それが今の自分の性格や人格を作っていると感じています。
また、じいちゃんが大工だったことから、木材に触れたり加工現場で過ごすことも多く、その時の体験が今の私のルーツになっている気がします。
― この作業場に置いてある木工道具は本格的ですね。先代から譲り受けた機械を手入れしながら使い続けている、というところも中島さんの人柄を感じます。中島さんは木工関係のお仕事もされていたのでしょうか?
中島さん:以前は家具、インテリア業界で仕事をしていました。本当に家具店での仕事が楽しくて、時にはソファーやマットレスを担いで店内を移動したりした事もありました(笑)。また、日々たくさんの家具を組み立てたり販売をしてきた中で、今は自分の趣味として木に触れる時間を作り、木製のマグカップやスツール、おもちゃを収納するチェスト、木のベンチなどありとあらゆるジャンルを赴くまま作っています。子どもが生まれてからは、作る物もちょっと変わってきたかもしれませんね。
これからも このまちで
― 富岡市での暮らしや子育てについて感じていることなどお聞かせください。
中島さん:わが家は幼子二人を含む四人家族です。子どもたちは元気が有り余っていてまだまだ手がかかりますが、賑やかで楽しい毎日を送っています。週末になると「今日はどこに遊びに行こうかな」と考えるのも楽しいです。
子どもたちは市内のこども園に通っていますが、先生たちは温かくて優しくて、のびのびと園生活を送っているようです。富岡には公園も多くて、もみじ平総合公園で遊んだり(水の遊び場ができて親子で大喜びです!)。それに買い物も便利ですから、子育て世代には暮らしやすい地域だと感じています。
― これからやってみたいことはありますか?
中島さん:麻袋のリサイクル活動を続けたいので、必要な方に「麻袋販売」の情報が届くように頑張っていきたいです。 また、趣味の木工では作りたい作品がたまっているので、その制作活動を進めていきたいですね。さらに、自分にできることとして『木工と珈琲』を合わせたような活動をしてみたいです。例えば、市内で行われるイベントに出店したり、麻袋や珈琲に関連した教室などを開催できたらいいですね。
私が生まれ育った富岡市が活気づくような、何らかのお手伝いができたら嬉しい限りです。
中島さんの麻袋販売のお問い合わせはコチラ(事前予約制になります)
珈琲麻袋を手に取り眺めていた私。するといろいろな想像が膨らんできて、「何か作ってみたい!」とお気に入りの絵柄の麻袋を購入しました。
未知なる可能性を秘めた素材を「これは何に使えるかな?」と考えることって、なんだかワクワクしませんか?
珈琲や木工、愛すべき家族とともに過ごす暮らしを大切にしている中島さん。
朗らかで温厚で、それでいて真っ直ぐに語る姿はとても清々しくて、今後の活動を応援していきたいと思いました。
この記事を読んで珈琲麻袋に興味を持ったみなさん!ぜひぜひ中島さんに会いに行ってくださいね。
(マツオ)