みなさんは「養蚕」についてどんなイメージをお持ちですか?
生まれも育ちも富岡っ子の私は、この地域ならではの「養蚕」にまつわる記憶があります。
「幼いころは養蚕農家だったおじいちゃんちのお手伝い部隊として、親戚のおばさんに混ざってお蚕さんに桑の葉を与えていたっけな。」
「最初はこわごわ眺めていたお蚕さんは、触ってみると “ふわふわぷにぷに” でとっても可愛いいんだよね。」
「小学生になると毎年のように富岡製糸場の写生大会に参加したっけな。レンガ建物正面は人気スポットで、場所取りにも苦労したな〜。」
「学校帰りはドドメ(桑の実)をつまみ食いして、ときには足元いっぱいに広がるドドメの絨毯を踏みつぶしながら歩いたよね。」
と、記憶の中にはいつも “養蚕にまつわるエピソード” があり、その懐かしい思い出は、いまでも大切な宝物です。
では現代の養蚕はどんな感じなのかな?と気になり調べてみると・・・
養蚕農家の高齢化や絹製品の需要の減少など、国内の養蚕業の衰退は続いています。
しかし、絹の世界に明るい光がさしている!という事実も。
近年では絹の持つ底力にスポットをあてた研究・開発が進められ、化粧品や医療関係、食品など様々な分野で絹の新しい可能性が見出されているのです。
そんななか、富岡市観光協会の方から『シルクすっぽん』というとっても気になるワードを教えてもらいました。
なんでも市内の店舗でシルクすっぽんのスープが販売されているとのこと。「これはオモシロそう、それに美味しそう!!」 ということで、さっそく調査に向かいました。
シルクすっぽんスープを販売しているのはこちら。【株式会社 絹工房】さんです。
富岡製糸場の向かいにある【絹工房】。国産のシルクを使用した化粧品やシルクの衣類などが売られていますが、こちらで「シルクすっぽんのスープ」を店頭販売しているそうです。
「シルクすっぽんってなんだろう?」 「絹製品のお店でスープを売っちゃうの?」
それではシルクとすっぽんのハテナを、一緒にひも解いていきましょう〜!!
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シルクすっぽん 誕生ストーリー
【株式会社 絹工房】の米満 正和(よねみつ まさかず)さんにお話を伺いました。
ー「シルクすっぽん」とはどんなものなのでしょうか?
米満さん:ひとことで言うと、お蚕のサナギをエサにして育てたすっぽんです!私たちの会社はシルクを使ったスキンケア商品を主に販売しているのですが、既存のシルク製品の他に新たな商品を作り出し、シルクの可能性を見出したいと日頃から考えていました。そんななかで様々な角度から養蚕について調べてみると、お蚕のサナギを鯉のエサにして養殖を行っている地域があるということがわかり、サナギの有効活用に着目したんです。
私は旅が大好きで日本のいろんな場所を訪れるのですが、いまから7年くらい前に、奥飛騨の平湯温泉近くのすっぽん養殖場を見学させてもらったことがあります。そこですっぽんに興味が湧き、試しに飼ってみることに。すっぽんは雑食でなんでも食べるので、エサとしてお蚕のサナギを与えてみたところ、すごい食欲で食べるんです。そこで「これは新しい商品になるかも」とピンときました。
今まで、繭から生糸を取ったあと、繭の中のサナギは捨てていました。これがエサとなりすっぽんの養殖に活用できれば、サナギを有効利用できる!とひらめいたんです。すっぽんには健康食品のイメージもありますし、商品としての魅力や可能性を感じました。
ーそこから「すっぽん」の養殖を始められたんですね。
米満さん:最初は実験もかねて個人的にすっぽんを飼い始めたんですが、いまは市内の蕨地区のシイタケ小屋を改装して施設を作り、そこですっぽんを養殖しています。普通すっぽんの養殖は屋外でやるんですが、私たちは天候に左右されない屋内養殖をしています。長岡技術科学大学の山口隆司教授が開発した「下降流懸架式スポンジろ過器」を用いた浄水システムを利用することにより、水を循環できるので環境にも優しい飼育方法なんです。
ここで与えているエサには、お蚕のサナギを粉末に砕いたものが含まれています。サナギは栄養価が高いので、すっぽんの生育もとても順調なんです。
こちらが繭の中のサナギ。これを砕いてすっぽんのエサに混ぜて与える。
ーなぜ「すっぽん」をスープとして売り出すことになったんでしょうか?
米満さん:すっぽんというと滋養強壮のイメージがありますよね。その栄養価はとても高く、特に良質なコラーゲンが豊富に含まれています。ある日、自分の娘にすっぽんの抽出エキスを試食してもらいました。すると翌日、娘の肌の調子がとても良くて「これはすごい。継続して飲みたい!」って言ってくれたんです。
自分も商品開発のためにすっぽんのエキスを試食しているんですが、年齢の割には若く見られるようになりました。これもすっぽんの効果かな?って身をもって実感しています。(笑)
そこからは、すっぽんをどのような商品として売っていくかに焦点をあてて、前進あるのみでした。
富岡市は製糸場のイメージがあり、歴史的にみてもフランスとの繋がりが深い。そこですっぽんを、フレンチ風のスープにしたらいいのでは?という考えに至りました。
ーなるほど。それですっぽんスープにつながったんですね。
ーすっぽんスープを作るにあたって大変だったことは?
米満さん:思い返してみると、大変だったことはないんです。毎日ワクワクしながらやっていたので。まずは、明確なゴール地点が見えていたので、そこへ向かって進んできた感じです。この商品に確固たる自信があって、良いものを作っていると実感していました。
ーこれから挑戦してみたいことはありますか?
米満さん:シルクのステキを伝えたい。このひとことに尽きるかな。まだまだシルクには良いところがたくさんあって、その可能性をもっと探っていきたい。私は変化を好むので、常に変わっていきたいんです。これからも新たな商品を開発したり、進化していくシルクと一緒に歩んでいきたいですね。
シルクすっぽんスープに関しては、なによりも地域のみなさんに愛される商品になってほしいです。養蚕の歴史の深い富岡市で、美味しいシルクすっぽんのスープが飲める!って話題になってくれたら嬉しいですね。
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気になる「シルクすっぽんスープ」のお味は?
6月中旬に絹工房の新商品「シルクすっぽんスープ」の試食会が行われ、私も気になるすっぽんスープをいただきました。
店頭販売では、テイクアウト用カップに入ったものを一杯 750円で提供しています。
こちらのスープは、富岡市内のフレンチレストラン【ビストロユジェーヌ】シェフの今井裕氏監修のもと作られました。すっぽんを大きなお鍋で16時間煮込み、じっくりと時間をかけて栄養成分を抽出しているそうです。
すっぽんのエキスがたっぷり詰まった琥珀色のスープは、香草の香りが感じられ、とてもさっぱりとした飲みやすいスープに仕上がっています。
参加されたみなさんに試食した感想を聞いてみると、
「クセがなくてとても飲みやすい。」
「すっぽんというと薬膳料理のイメージがあったけど、このスープはフレンチ仕立てでとても美味しい。」
「コラーゲンがたっぷり入っているというので、明日のお肌に期待がもてる ♪」
と、みなさんの反応も上々でした。
そして気になるすっぽんの効能ですが、私個人の感想としては、飲んだ翌朝にお肌、とくに目元にハリを感じました。また、翌朝の目覚めが良く、日ごろの疲れが取れた感じもしました。
すっぽんの効果については個人差がありますが、商品開発をされた米満さんのエネルギーにあふれた活動とツヤツヤなお肌を見ていると、「これはすっぽんパワーの効果を身をもって体現している!」と大いに納得してしまいました。
■絹工房
営業日:土、日、祝日
営業時間:9:00~17:00
富岡の絹産業についてのちょっとしたハテナから始まった今回の取材。
「まさかお蚕さんがすっぽんスープに繋がるなんて!!」 という驚きと、「富岡ですっぽんを養殖していたなんて!!」という新たな発見にも繋がりました。
お蚕のサナギに注目し、それを有効活用してできあがったシルクすっぽんスープ。 「絹産業を元気にしたい!」という米満さんの想いがたっぷり詰まった美味しいスープを、みなさんもぜひご賞味くださいね。
(マツオ)