富岡市の暮らしと移住のWEBマガジン
まゆといと

2019.11.08 移住・Uターン

ALT リアム・キャンベルさん

私が初めて英語で会話をした外国の人は、誰だっただろう。

それはたぶん、中学校の英語の授業に来ていたALT(外国語指導助手)の先生。

ほんの数回の授業だったけれど、どんな雰囲気の人だったかはハッキリと覚えている。短い会話の間、真っ直ぐに目を見られてとても緊張したことも…。

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時代は変わり、現在は小学校からALTの先生と会話をする機会があるそうです。

来年度からの授業では、小学校3・4年生で外国語活動を、5・6年生では教科としての外国語が加わることになっていて、中学校の英語の内容もこれまでより「聞く」「話す」が重視されるとか。

 

そんな中、富岡市では現在10名のALTが小学校と中学校で英語教育にあたっています。出身地はニュージーランド、アメリカ、フィリピン、オーストラリア、シンガポールと様々です。

 

その中の一人、ニュージーランド出身のリアム・キャンベルさんは、富岡に来てから8年目の秋を迎えました。2年前からは「ALTスーパーバイザー」として、他のALTに対する様々なサポートも行っています。

 

そんなに長くやっている人もいるんだ…という驚きとともに、彼から見た富岡はどんな場所なのだろう?と気になり、お話を聞いてみることにしました。

 

「YOUはどうして富岡へ?」

 

 


 

 

ニュージーランドから富岡へ

 

 

 

― リアムさんが初めて日本に来たのはいつのことでしたか?

 

 中学生の時に、自分がいた町の姉妹都市がある茨城県に2週間ホームステイをしました。その時にホストファミリーがとても優しくしてくれたんですが、僕はまだ日本語が全く喋れなくて。ホストファミリーもあまり英語が喋れなかったので「ちゃんと会話ができるといいな」と思って大学で日本語を勉強しました。

 

― 大学卒業後に日本に行くつもりで日本語を勉強していたんですか?

 

 そうです。大学の日本語の先生が「リアムくんは日本で英語を教えたらいいんじゃないか」と言ってくれて、JETプログラム※で日本に来ました。

※JETプログラムとは、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流の推進を図る事業。

 

― そして配属されたのがたまたま群馬県富岡市だったんですね。富岡を初めて訪れた時、どう思いましたか?

 

 前橋の県庁から富岡まで教育委員会の担当者に送ってもらったんですが、富岡市に入ってセキチューのところから陸橋を渡った時に見えた景色がとても印象的でした。開けた場所に街並みがあって、むこうに山があってという景色がすごく素敵だったので、その時のことは今でも覚えています。

 

― 第1印象はとても良かったんですね。富岡に来てびっくりしたことはありましたか?

 

 外国人は日本に対して、狭い、新幹線、高いビル、アニメ…といったイメージを持っていますが、実際は全然狭くなくて住みやすそうだったこと。それと、日本人は恥ずかしがり屋と言われているけれど、親切でよく声をかけてくれることです。

 

― なるほど。それは富岡の土地柄もあるかもしれませんね。いざ住んでみて、不便だなと思うことはありませんでしたか?

 

 自分の出身地は海の町で、ビーチがすごく綺麗な場所なんです。ここは海がないのでたまに恋しくなりますけど、それくらいですね。全然不便じゃないです。以前は海の存在が当たり前だったんですけど、今は海を見たら「海だ!」ってなりますね(笑)。

 

 

 

 

―「海だ!」は群馬県民あるあるですね(笑)
不便なところはないということですが、慣れないなと思うことはありますか?例えば食事とか。

 

 食事は美味しいのですぐ慣れました。子どもたちと一緒に給食を食べているんですけど、すごく美味しいし飽きないです。慣れないと言えば、冬の寒さと乾燥は慣れないですね。一年中湿度が高い海の町から来たので。逆に群馬の夏は、自分にとってはちょうど良くて過ごしやすいです。

 

― あの蒸し暑さがちょうどいいということは、冬はかなり辛いですね!
逆に、日本とニュージーランドの共通点はありますか?

 

 自然や山が多いところと、人もちょっと似ていると思います。自分のことを人に自慢しないというところが。

 

― それは意外です。気が合いそうですね。

 

 ただ日本人は時間を守りますけど、ニュージーランドの人はのんびりしています。

 

― 温暖な気候がそうさせるんでしょうか。ニュージーランドの人たちのいいところも教えてください。

 

 ニュージーランドの男性はよく家庭のことを手伝います。日本のテレビ番組で「イクメンパパ」と紹介されたりもしていますが、それは普通にやっていることなんです。日本もどんどん変わっているとは思いますが。

 

― なるほど。日本も追いつきたいです。

 

 


 

異文化交流

 

 

― リアムさんは順調に日本の生活に慣れていったように見受けられますが、他のALTの方からは日頃どんな相談を受けますか?

 

 日本に来て最初の頃は「これは何でこういう風にやらなきゃいけないんだ」と聞かれることが多いですね。例えば、自分の国ではキャッシュレスだけれど日本は現金社会で、なぜ銀行のATMが夕方で閉まってしまうのかとか、なぜこれを支払うためにコンビニに行かなきゃならないのか…とか。

 

― それが当たり前になっている者としては、その疑問に答えるのが難しいですね…。でもリアムさんのような同じ立場の相談できる人がいると安心できますね。はじめは友達もいないでしょうし。

 

 そうですね。自分の時は3人のALTが一緒に富岡に来たので、互いに協力することができました。そのお陰でやってこれたのかなと思います。

 

 

 

 

― 最近では市内で働いている外国人の方々を街でよく見かけますが、私たちが外国人の皆さんと交流したいなと思ったらどうすればいいんでしょう。

 

 毎週木曜日に生涯学習センターで富岡市国際交流協会の方が日本語を教えてくれるクラスがあって、そこで交流ができるはずです。そういう場があるのは本当にありがたいですね。

 

― 富岡市国際交流協会のボランティアに参加するというのがひとつの方法ですね。他に、もっとこんな場があればいいなと思うことはありますか?

 

 「富岡市国際交流まつり」というイベントが2年に1回開催されているんですが、そういったいろんな国の文化を紹介する機会がもっとあってもいいのかなと思います。せっかくいろんな国から富岡にやってきていても、学校に勤めていない方々にはそれを紹介できる場がないので。

 

― 確かに。大きな規模でなくても、いろんな場面で知ってもらう機会があるといいですね。

 

 


 

 

ALTとして

 

 

― 富岡市のALTとして8年目。あちこちの学校に行かれたと思いますが、今はどちらの学校に行かれているんでしょうか。

 

 北中学校と西小学校に行っています。市内の小中学校では、まだ行っていない学校は3校だけです。

 

― お仕事をやっていて良かったなと感じるのはどんな時ですか?

 

 英語の授業で頑張っている姿や必死に部活動をやっている姿を見ているので、テストの点数が上がっていたり、大会で優勝したりという時にすごく嬉しいなと思います。そして8年目なので、1年目に担当した小学6年生はもう大学生や社会人になっていて、その成長を見られるのもとても嬉しいです。

 

 

 

 

― では授業をしていく中で、難しいなと思う面はありますか。

 

 特に中学生は、テスト向きの文法や単語の勉強が多いので話す機会が少なくて、しかも思春期で声を出すのが恥ずかしい時期なので、難しいなと思います。

 

― わかります。声を出すのも恥ずかしいし、間違えるのが恥ずかしくて、頭の中で文法とか考えて考えて、真っ白になっちゃうんですよね…。

 

 その気持ちよくわかります。自分も間違うと恥ずかしくなるんですけど、間違いから成功になります。だから間違いを恐れないことが一番大事だと思います。

 

― そうですよね、リアムさんも外国語を学んだという点では同じ経験をされていますもんね。日常的にできるおすすめの勉強方法は何かありますか?

 

 自分が大学生の時にやっていたのは、日常の物事をできるだけ日本語で考えるようにしていました。英語にするなら例えば、皿洗いをしながら「wash」「dish」とか、歩いていたら「walk」とか、そうやって日常的な単語を増やすんです。あとは一緒に勉強している仲間がいれば、帰り道の間だけは英語で会話するようにしたり。

 

― まずは単語から、頭の中で。それならいつでもできますね!

 

 


 

 

「富岡がいちばん」

 

 

 

― お休みの日はどんな風に過ごしていますか?

 

 友達と外食したり、ドライブしたり温泉に行ったり、走るのが好きなので走ったりしています。サファリマラソンやさくらマラソンにも出場しました。

 

― この近辺でお気に入りの場所はありますか?

 

 妙義山が大好きです。真夏の万緑、紅葉、雪… 一年中いつでも見ると綺麗なので。もみじの湯にもよく行きますし、秋には登山もします。最近はパラグライダーも始めました。

 

― 満喫されていますね。

 

 本当に富岡のことは大好きになってきています。皆さん優しくて、子どもたちも可愛くて素直で…。一ノ宮に住んでいるんですが、近所の方がいつも声をかけてくれるんです。先日も地区の体育祭に参加させてもらって、一緒に走ったりしてすごく楽しかったです。

 

― それは良かった!

 

 ニュージーランドの両親は自分が日本に来るまで全く日本に興味がなかったんですが、一度来たら「こんなに素敵な場所で、周りに優しい人がたくさんいるなんて」と言って、7年間で3回も来日しています。

 

― 嬉しいですね〜。リアムさんはこの先も日本に住み続けるご予定なんでしょうか。日本の中でも他に住んでみたい地域はありますか?

 

 仕事次第ですが、できるなら富岡に住み続けたいと思っています。緑が多くて、広々としていて、歩いて買い物もできて、本当に住みやすい場所だと思います。旅行はいろんな場所に行きますが、住むのは富岡が一番です。

 

― これまた嬉しいお言葉…!泣きそうです!それでは、地域の方々に何かメッセージがあれば、お願いします。

 

 いろいろと迷惑をかけたかもしれないけれど、本当に富岡市に来てよかったと思っています。なぜなら、皆さんが優しくしてくれたり、声をかけてくれたからです。7年間いられたのは皆さんのおかげです。本当に感謝しています。

 

 

 

 


 

 

「何か困っていることはありませんか?」

「一緒に行きませんか?」

 

これらの言葉が、魔法の言葉のように思えてきました。

実際、富岡の人たちの「情に厚い」「お節介焼き」とも言われる性格が、異国の地から来た青年にこんなにも素敵な笑顔をもたらしているのです。

そしてお話を聞いたこちらまで、温かい気持ちにさせてもらえている…。

 

これからは、気になる人がいたら恥ずかしがらずに声をかけよう。

それと、英語の勉強も、もう一度してみよう。

そう決心させてくれたリアムさんに改めてお礼を言いたいです。

 

次はどこで会えるだろう?

富岡で暮らす楽しみが、また1つ増えました。

 

(ナカヤマ)

 

 

 


 

拝啓、お元気ですか。【前編】