しずかな住宅街のなかに、ひっそりとたたずむ白いコンテナハウス。ワクワクしながらドアを開けると、ショーケースには丁寧に作られた米粉のお菓子が並んでいます。
凛とした佇まいのケーキや焼き菓子を眺めていると、「ご褒美スイーツとはまさにこのこと」そんな気持ちが湧いてきました。
「住宅街」「小さなコンテナハウス」「米粉のお菓子」
その組み合わせに惹かれ、今回は米粉のお菓子屋 Lune(リュンヌ)の店主・新井さんにお話を伺ってきました。

【米粉のお菓子屋 Lune(リュンヌ)】
2025年4月にオープン。店名の「Lune」はフランス語で「月」を意味します。
店舗の場所や営業時間などの詳細は、インスタグラムをご覧ください。
子育てを大切にしながら仕事をする選択

― お店を始めたきっかけをお聞かせください。
新井さん:私はもともと都内や群馬県内の洋菓子店で、長いあいだパティシエとして働いていました。結婚を機に富岡市へ来て、出産し、子育てを優先するために専業主婦として暮らしていたんです。
子育ても少しずつ落ち着いてきた頃に「何か仕事を始めよう」と思い、職探しを始めました。ただ、製菓の専門学校を出てからパティシエしかしていなかったので、他の仕事ができるのか不安になってしまって。
パティシエとして働くことも考えたのですが、体調面で不安があったり、子どもの体調不良で急に休むのも気が引けるな…などと考えて、悶々としてしまいました。実際に仕事を探してみて、自分の生活との折り合いがなかなか難しいと、改めて実感したんです。
― そこで、自宅の敷地内で出店するというスタイルを選ばれたのですね。
新井さん:はい。最初は主人が「自宅の敷地内でお店を始めたらいいよ」と声をかけてくれたのがきっかけでした。
それに、自宅で小さなお店を開業した友人がいて、その姿に勇気をもらったんです。「私にもできるかもしれない」と希望が湧きました。
安心して食べられるおやつを作りたい

― ショーケースに素敵なお菓子が並んでいますね。なぜ『米粉』のお菓子なのでしょうか?
新井さん:子育ての経験が大きく影響しています。私の子どもたちは、赤ちゃんの頃からアトピーを患っていました。どうしたら症状が良くなるのかをいろいろ調べた中で、小麦を少し控えて、お米中心の食生活にしたところ、症状が緩和してきたんです。
アトピーにはさまざまな要因があるので、一概に「米が良い」とは言えません。ただ私の子どもたちには合っていたようで、その頃から米粉を使用した食事やお菓子を作るようになりました。
― 米粉のお菓子には、お子さんを思う気持ちがたっぷり詰まっているのですね。
新井さん:同じように悩んでいる方は、きっといらっしゃると思います。私自身も子どもが幼い頃、米粉のお菓子屋さんを探しましたが、身近にはあまりありませんでした。「それならこの地域に、米粉のお菓子屋さんを作ろう!」と思ったんです。
小麦製品を食べられない方でも、美味しいものを食べて幸せな気持ちになってもらいたいですし、日々子育てやお仕事を頑張っているみなさんを「応援したい」という思いも込めています。

― たくさんの種類のお菓子がありますが、新井さんはパティシエ時代に、米粉のお菓子作りの経験があったのでしょうか。
新井さん:いえ、洋菓子店に勤めていた時は、米粉を扱ったことはありませんでした。なので、まずは米粉の特性を勉強し、ひとつのケーキを作るために何度も試作を重ね、安定して作れるレシピを考えました。
米粉にもいろいろな種類があるので、商品ごとに使い分けたり、季節によって配合を変えたりしています。
家族とともに叶えた夢

― 開業にあたって大変なことはありましたか?
新井さん:当初は近場の貸店舗でやってみようと思い、物件探しから始めました。ただ、子育てを優先した暮らしを変えたくなかったことや、金銭面などの理由から、最終的には自宅の敷地にお店を構えることを選びました。ですが、準備を進めていく中でさまざまな問題に直面し、「開業は不可能かもしれない」と思うような状況が続いたんです。
それでも、主人が電気関係の仕事をしていることや、私の母が設計士だったこともあり、身内に助けられながらコンテナハウスのお店を建てることができました。特に母には、前橋から富岡へ何度も来てもらい、申請作業や図面の制作、市役所や保健所への同行など、様々なことを助けてもらいました。二人三脚で開業への歩みを進めた感じですね。
周囲の協力のおかげで無事にお店をオープンできたことに、感謝しています。
― きっとお母さまも、一緒にひとつのことを成し遂げられて、嬉しかったのではないでしょうか。

― オープンからもうすぐ一年が経ちますが、お店をやって良かったこと、嬉しかったことを教えてください。
新井さん:オープン当初は、徐々にお店の存在を知ってもらうために、近隣の方にチラシを配るところから始めました。住宅街の小さなお店なので、お客様が増えた際に、近隣住民の方へご迷惑をお掛けしてしまわないかという心配もありました。
それでもしばらくすると、リピーターさんが来店することが多くなり、毎月必ずお越しくださる方、お友達からのクチコミで来てくださる方も増えました。中には、ご自身で当店のチラシをコピーして、お友達に配ってくださる常連の方もいて…本当にあたたかいお客様に恵まれていると感じます。
みなさまに支えられながら、こうして一年を迎えようとしていることを、とてもありがたく思っています。
人生のなかで、ライフスタイルは少しずつ変化していきます。
その時々で「何を優先して暮らすのか」を考えることの大切さを、新井さんのお話から気づくことができました。
起業して小さなお店を営む方が増え、働き方が多様になっている現代。
新井さんの「やる気と行動力」で夢を実現する姿に、私自身も元気をいただきました。
(マツオ)


