富岡市内には、和食、イタリアン、定食屋さん、ラーメン屋さんなどなど、たくさんの飲食店があります。中華料理のお店もいくつかありますが、皆さんのお気に入りのお店はありますか?
本格的な中華料理を味わえるお店【桂花房(けいかぼう)】は、ご主人が作る料理はもちろん、奥様が作るデザートも本格的な味が楽しめると評判です。
今年でオープンから5周年を迎えた桂花房は、今ではリピーターも多いお店ですが、開業して1か月の頃にコロナ禍に見舞われていました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、まさかの展開からのスタートとなってしまったお店は、コロナ禍をどう乗り越えたのでしょうか…?
開業のきっかけやお店のこだわり、夫婦で試行錯誤を重ねた日々について、オーナーの本多正輝さん・真奈美さんご夫婦にカネコがお話を伺いました。
オーナーの本多正輝さんと奥様の真奈美さん
中華料理への憧れと幼い頃からの夢
桂花房を営む本多さんご夫婦は、お二人とも富岡市出身で、同じ高校の同級生。
偶然にも同じ調理師学校へ進学し、正輝さんは中華料理、真奈美さんは製菓の道へと進んだそうです。
― お二人はいつ頃から料理の道へ進むことを決めていましたか?
正輝さん:子供の頃から、家で料理の手伝いをするのは嫌いじゃなかったんです。中華料理を食べるのも好きでしたし、大きな中華鍋を振る姿に憧れみたいなものはありました。かっこいいなぁって(笑)。
真奈美さん:私は保育園の時には「ケーキ屋さんになりたい」と思っていて。子供の頃からの夢でした。
― 専門学校の卒業後はどのような進路に進んだのでしょうか。
正輝さん:私は卒業後に迷わず東京へ行き、銀座の中華料理店に就職しました。仕事量が多く、とにかく忙しい毎日でしたね。5年くらい働いた後に個人店へ転職し、3店舗目には有名な人気店で働いたのですが、そこはランチもディナーもお客さんが本当に多くて、終電でも帰れないほどの忙しさでした。すると激務で体を壊してしまって…。本当はもう少し東京で頑張りたかったんですが、富岡に戻ることになりました。
真奈美さん:私は専門学校を卒業後に、安中市内のケーキ店で働いていました。子供の頃からの夢が叶ってケーキ店で好きなお菓子を作ることができ、とても充実した日々を送っていました。
お二人はお互いに就職してから久しぶりに再会。仕事の話などをしているうちに意気投合し、お付き合いが始まったそうです。
お店を持つことを後押しした数々の出来事
― 正輝さんは富岡に戻ってからすぐに、こちらのお店を開業されたのですか?
正輝さん:東京の個人店で働いていた時に、いつかは自分の店を持ちたいとは何となく考えていましたが、年を取ってからでもいいかな?くらいのイメージでした。なので富岡に戻ってからは、某焼肉チェーンへ就職して数年間働いていました。その頃に真奈美と結婚して子供が産まれたのですが、仕事の休みが平日しか取れなかったので、「子供が大きくなって小学生になったら、遊べる時間がなくなってしまうな…」と考えるようになりました。
― お子さんの誕生でライフプランは変化しますよね。
正輝さん:そんな時、しいたけ農家をやっている私の実家に、NHKの番組の取材が来たんです。有名なタレントさんたちが実家に来たんですよ(笑)。私たちが料理人ということで、おまけ的な感じですが、しいたけの料理とスイーツを作るという流れになったんです。すると、お世辞だとは思いますが、「おいしい」ととても喜んでくれて。その反応が嬉しくてずっと心に残っていました。その出来事が、自分でお店をやってみようと思うきっかけになりました。
真奈美さん:私も主人の心のどこかに、また中華料理をやりたい気持ちがあるのを感じていたので、「人生一度きり!やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい!」と背中を押しました。
― 正輝さんが東京で頑張る姿を見ていた真奈美さんだからこその言葉ですね。
正輝さん:そして子供が保育園に通うようになった頃、市役所で働いている同級生と偶然再会したんです。その友人が産業振興課にいたこともあり、お店の開業の話をしたところ、創業支援などの相談に乗ってもらえました。おかげでこのお店の場所も見つかりました。
― 様々な事が重なって、お店のオープンとなったんですね。
★産業振興課では創業支援を行っています。富岡で創業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
いよいよオープン!しかし思わぬ事態に・・・
― オープンしてから今年で5周年とのことですが、振り返ってみていかがですか?
真奈美さん:2020年3月4日にお店をオープンした当時、テレビでは横浜のクルーズ船で新型コロナの集団感染があったというニュースが流れていました。その時はまだ遠い所の話かと思っていたのに、1か月後には緊急事態宣言となってしまったんです。お店を閉めることはなかったんですが、お客さんはほとんどいなくて、しかもお店自体をまだ周知することもできていなかったので、二人で近隣へポスティングをしたりしていました。
正輝さん:オープンしたばかりですから、営業も手探りの状態でした。もうどうしていいか分からなくて、思いつくことをやるしかなかったですね。店内営業からテイクアウトやお弁当の形にしようと、ホームセンターへ容器を買いに行ったりもしました。でもお弁当を作ってみても売り切ることができず、残りを自分たちで食べて寂しい思いをしました。緊急事態宣言が解除された後は、飲食店にはまん延防止等重点措置がありましたから、時短営業を余儀なくされて。夏は明るいうちにお店を閉めなければならなくて、悔しい気持ちでした。
― 大変な時にオープンされていたんですね。
正輝さん:本当に大変でしたが、お互いの家族や地元の友人が助けてくれました。お店を知り合いに紹介してくれたり、料理を使ってもらったり。あの時は富岡でオープンして良かったと思いました。もし他の土地でお店をオープンしていたら、乗り越えられなかったかもしれません。地元で本当に良かったです。
調味料から手作りした中華料理と魅惑のスイーツ
― お店のおすすめ料理を教えてください。
正輝さん:どれもおすすめですが…「海の幸のXO醤炒め」ですね。味の決め手になっているXO醤は、中国では最高級調味料と言われているもので、うちでは手作りしています。とても旨味が出るのでおいしいですよ。
― 調味料が手作りということは、ここでしか味わえないお料理ですね。
正輝さん:担々麺のごまペーストやラー油も自分で作っています。ごまペーストは白ごまを炒めてからすり潰すんですが、ごまは焦げやすいのでひたすら鍋を振るっています。手作りしている調味料が多くて大変なんですが、そこがこだわりですね。
海の幸のXO醤炒めと担々麺
― デザートもとても人気ですよね。中華料理とスイーツの組み合わせは、ちょっと意外に思いましたが。
真奈美さん:初めはあまり自信がなかったのでデザートを作るつもりはなかったんですが、主人に「女性のお客さん向けにデザートがあった方がいいんじゃないか」と言われて。以前働いていたお店ではオーナーさんとも親しくしていて、退職する時にレシピをいただいていたんです。まさか自分のお店で作ることになるとは思っていませんでしたが、今でも参考にしながらアレンジを加えて作っています。
杏仁豆腐とチーズテリーヌ
真奈美さん:デザートの定番メニューは「杏仁豆腐」と「チーズテリーヌ」です。杏仁豆腐は、あんずの種から香りを抽出して作っている本格的なものです。この作り方は主人が覚えてきたものですが、レシピ通りに作るとちょっと濃厚すぎてしまうので、さっぱり目にアレンジしています。中華料理の食後に合うように、二人で試行錯誤しながら考えました。その他は季節に合わせた期間限定のデザートを用意しています。
柔らかい雰囲気の店内で、お客さんとのコミュニケーションを大切に。
― お店の名前【桂花房】にはどんな意味が込められているのでしょうか。
真奈美さん:桂花は「金木犀」、房は「小さい小屋」という意味があります。金木犀のように香りでお客さんを引き寄せたい、小さいお店だけれど中華料理のいい匂いでお客さんに来てもらいたい、といった意味を込めました。
正輝さん:小さいお店ですが、厨房からお客さんのリアクションが見られることが嬉しいです。お客さんが帰りに厨房に顔を出して「おいしかったよ」と言ってくれる時もあって、そうやってコミュニケーションを取れるのもいいですね。たまにお客さんからのアドバイスでハッとすることもありますが、そういった声を取り入れることも必要かなと。料理人として曲げられないこともありますが、お客さんからの声は大切にしています。
― お店の内装がとっても可愛らしいですね。
正輝さん:内装は真奈美のセンスです。コテコテの中華っぽい感じにはしたくなくて、女性や一人のお客さんでもふらっと入りやすい雰囲気にしました。
― 以前は座敷の席もあったようですが、今は全てテーブル席なんですね。
真奈美さん:少し前に座敷をテーブル席に変えました。オープン当初は座敷があった方がいいと思ったんですが、テーブル席を好むお客さんが多かったんです。そうしたら、私たちの動線も良くなって、仕事がしやすくなりました。
入り口を入った所にある棚は真奈美さんの手作り。すごい!
アンティークな雰囲気が好きな真奈美さんのセンスで、中華料理店がどこかケーキ屋さんのよう。真奈美さんの子供の頃からの夢は、今も続いているのですね。
シェフとして「お客さんの声を大切にしながらこれからも料理と向き合っていきたい」と話す正輝さんの中華料理と、真奈美さんの本格スイーツが同時に楽しめる桂花房。年末には、真奈美さん手作りクリスマスケーキも予約できるそうですよ。
季節ごとのお料理やデザートは、こちらでチェックしてください。
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いかがでしたか?
いつかは自分たちのお店を持ちたいという気持ちと、思いがけない出会いからオープンした桂花房さん。大変な時期を乗り越えられたのは、地元・富岡での繋がりがあったからなんですね。
本多さんご夫婦は、「お店をしていると、今でも同級生や、子供同士のパパ・ママと繋がっていられる」と話してくれました。
桂花房は気軽に楽しめる中華料理店。でも味は本格的です。
みなさんもぜひ、おいしい匂いに誘われてみてください。きっとお気に入りのお店になりますよ。
(カネコ)