「注目している工場があるので、取材をしてほしいです!」
そんな嬉しい依頼が、まゆといとに飛び込んできました。
何を隠そう、取材を通して普段は入れない工場内を見学できることが密かな楽しみの私。「どんな工場かな?」とウキウキと事前準備を進めていると…
この工場では、誰もが一度は手にしたことがある某有名メーカーのボールペンを作っていることが発覚したのです!
工場見学も文房具も大好きな私が足取り軽く向かった先は、最先端の技術で精密プラスチック製品を作る、【株式会社 土屋合成】です!
【株式会社 土屋合成】
1972年 富岡市七日市にて創業
1992年 工場を富岡市宇田に移転
2018年 「地域未来牽引企業」に選定される
2021年 「はばたく2021中小企業・小規模事業者300社」に選定される
2023年 経済産業省より「DXセレクション準グランプリ」を受賞
従業員数:80名
代表取締役社長:土屋直人氏
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ココに注目!!
土屋合成は今年、 “ある取り組み” が注目され、とってもスゴイ賞を受賞したんです。その取り組みとは… DX(デジタルトランスフォーメーション)です!
「え、、デジタルトランス・・フォーメーション??」
近年耳にすることが多くなった、デジタルトランスフォーメーションというコトバ。それって私たちの暮らしに関係あるものなのかなぁ?
そんなギモンを抱えながらお話を伺ったのは、代表取締役の土屋直人(つちやなおと)社長と、生産管理部の富田健斗(とみたけんと)さんです。
(左から)土屋直人社長、富田健斗さん
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プラスチックがつくる明るい未来
ー こちらではどんな製品を作っているのですか?
土屋社長:創業当初からプラスチック製品を作ってきました。時代と共に作るものは変化していて、1970年代はカセットテープや家電製品の部品を作っていましたが、現在多く作っているのはボールペンのプラスチックパーツです。
ー 誰でも知っているような有名メーカーのボールペンが富岡で作られているとは、なんだか嬉しいです。どのような行程で作っているのでしょうか?
富田さん:私たちの工場では、金型を使用する射出成型(しゃしゅつせいけい)でプラスチック製品を作っています。 製造工程は、① 粒状のプラスチック材を溶かす → ② 金型に流し込む → ③ 高い圧力をかけて製品を作る。これらが基本の行程となります。イメージとしては、溶かしたチョコレートを型に流し入れて固める。そんな感じでしょうか。
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デジタル技術の活用で高品質な製品を24時間生産
ー 工場内を見た感想なんですが、機械の数は多いのに働いている人は少ないな…という印象です。
富田さん:私たちの工場では最新のデジタル技術を活用して、機械に任せられる部分は任せています。ロボットを活用しながら24時間365日工場を稼働しているので、常に人が作業をしているというわけではありません。夜間や週末など人手が少ない時間帯は、成形機の稼働状況を監視するシステムを利用し、もしも問題が起きた場合は遠隔で管理ができるようになっています。
ー 最新技術を取り入れた働き方をしているんですね!土屋合成ではデジタルトランスフォーメーションを行い、その取り組みが表彰(※) されたとのことですが、「デジタルトランスフォーメーション」とはどんなものなのでしょうか?(※ 2023年DXセレクション準グランプリ受賞 ⇒経済産業省ニュースリリース)
土屋社長:DX(デジタルトランスフォーメーション)には、「デジタル技術を活用し、ビジネススタイルをより良いものに変えていく」という意味があります。 私たちの会社では以前から、デジタルを活用して業務をより良く改善する取り組みを行ってきました。製造の分野では昔から、職人技や長年の勘を頼りに製品を作るのが一般的な考え方でしたが、そのような古い考えにとらわれずに最新のデジタル技術を取り入れて「誰でも高品質なものが作れること」が必要だと思ったんです。
このシステムを導入してから製品の完成度も上がり、常に同じ品質のものを生産できるようになりました。これからの工場は、「経験がないとできない技術」から「誰がやってもできる」というシステムにしないといけない。その業務改革について評価をいただき、今年度のDXセレクション準グランプリをいただきました。
ー 時代の先端を行く取り組みなんですね。
土屋社長:じつは私たちの工場では、世間でDXが話題になる前から自然な流れでDXを導入していたんです。デジタルに任せられる分野は最新技術に頼って、人の手が必要なところではきちんと人が担当するということを、ずいぶん前から取り入れていました。そのような取り組みが後付けの形となって、今話題の「デジタルトランスフォーメーション」に当てはまったのです。
これから少子化が進み、どこの企業でも人材確保が難しくなるのは想像がつくことなので、最新技術を用いて「機械が働くシステム」を取り入れることは自然な流れだと思っています。 私は、「きちんとした製品を作り上げることができれば、そこに至る工程はどんな形であってもよい」という考えです。
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働きやすい環境でプライベートも充実
ー 工場での勤務を考えている人の中には、「専門的な知識や経験が必要なのでは?」と消極的になっている人もいると思います。でも土屋合成では「誰でも高品質なものがつくれるシステム」を取り入れているので、異業種からの転職も可能ですね。
富田さん:私も学生時代は工場の仕事とは全く違う分野を学んでいましたが、「地元で働きたい」という思いから、こちらに就職しました。今ではすっかり仕事にも慣れて、働き方も気に入っています。
ー 富田さんは富岡で生まれ育ち、お住まいも仕事場も富岡なんですね。地元愛が強い印象を受けるのですが、地域ではお仕事以外に何か活動をされていますか?
富田さん:高校時代の友人が市役所で働いていたことから、市内の中学校で行われた「未来の教室(※)」に参加させていただきました。そこでは、自分自身が学生時代に悩みを抱えていたことや、そこから将来に向けてどのように進んでいったのか、という自分の経験談を話したんです。実際に中学生と話してみると、みんなしっかりと自分の意見を持っていて、感心してしまいました。(※詳しくは過去記事へ)
最近では、地域で行われている円卓会議などに参加させていただいています。これからも世代を超えた交流を持ちたいので、また機会があれば参加したいですね。
ー プライベートでも地元を大切にされているんですね。富田さんは今のお仕事がお好きですか?
富田さん:はい、この会社に入社して良かったと思います。社長は行動力のある人で、スピード感を持って物事を進めてくれるので、私たち従業員の働き方もどんどん良い方向へ向かっていると実感しています。私が地域貢献活動に参加していることも応援してくれて、それも嬉しいです。
これからも富岡で働くことのメリットを若い世代の人に伝えていきたいですし、地域でのいろいろな活動にも参加していきたいです。そんな心の余裕が持てるのも、この会社で働いているからだと実感しています。
ー 最後に、工場内にベトナム語の表記があるのが気になったのですが。。
富田さん:現在、私たちの工場では技能実習生を含む17名のベトナム人従業員が働いています。20代前半の若者が多いのですが、みんなまじめで性格も穏やかで、日本人と似ている感覚もあり、一緒に仕事がしやすいです。
土屋社長:ベトナム人従業員を受け入れた当初は、彼らが日本の習慣に慣れていないため会社からのサポートが必要でしたが、ここ数年はベトナム人の先輩従業員が新人さんの面倒を見てくれ るので、大きな問題もないですね。みんな良い雰囲気のなかで生活ができていると感じます。
土屋合成のみなさん、ありがとうございました!
取材中に印象的だったことは、希望を持って働いている富田さんの笑顔が、とてもキラキラしていたこと。
その横で富田さんを見守る土屋社長は、とてもおおらかで、ここで働く従業員のみなさんが良い働き方をしていることが伺えました。
働き方を工夫しながらも品質へのこだわりは守り抜く。そんな姿勢に感心するとともに、「デジタルトランスフォーメーション」の最先端を行く企業が地元にあることを誇りに思います。
みなさんの周りのステキな会社やキニナル工場も、ぜひ教えてくださいね!
(マツオ)