みなさんが思う『富岡っぽいヒト』って、どんなイメージですか?
よく言われるのが…
「穏やか」
「義理人情に厚い」
「新しいものが好き」
うんうん。そんなイメージがありますよね。
私のなかでの『ザ・富岡っぽいヒト』ナンバーワンは…
ずばり!【キリブチ製麺】専務の、桐渕 好幸(きりぶち よしゆき)さんです。
若い感覚を取り入れながら、伝統的な製法でおいしい小麦粉製品を作り続けている桐渕さん。ユーモアと好奇心を持ち合わせている、魅力的な人なんです。
今回はそんな桐渕さんの人柄に迫るとともに、西上州の小麦にまつわるお話をお聞きしました。
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小麦とともに歩んだ家族のものがたり
ー キリブチ製麵の歴史についてお聞かせください。
桐渕さん:もともとは、私の祖父が精米所を営んでいました。その後政府から小麦の仕入れをさせてもらえるようになり、大正15年からは小麦を自家製粉して販売するようになりました。当時は自宅で「手打ちうどん」や「すいとん」などを食べることがあたりまえの時代で、毎日お母さんがうどんを打つことが一般的だったんです。
そんななか、私の父の代では、もっと手軽に食べられる乾麺(干しうどん)の開発に取り組んでいました。試行錯誤を重ね、昭和31年に『群馬産小麦100%の地粉で作った干しうどん』を完成させ、製造販売を始めたんです。
ー お父さまのアイディアと行動力が素晴らしいですね!手軽にうどんが食べれるようになり、当時のお母さんたちは喜んだことでしょうね。
ー 子どもの頃はどんな暮らしをしていましたか?
桐渕さん:わが家は親族でこの製麺所をやっていたので、両親を含め、まわりの大人はみんな大忙しで働いていました。なので、親に面倒を見てもらったという記憶はあまりなくて、お腹がすいたら自分ですいとんを作って食べたり…。自分のことは自分でするというのが当たり前でした。
でも、工場はいつも活気があって賑やかで、ここで作業を手伝う毎日もイヤではなかったです。この工場で過ごした楽しい思い出もたくさんあります。そして、工場を手伝いながら小麦についていろいろな知識や経験を得ることができて、それが「手に職をつける」みたいに自分の強みになっていったので、今ではありがたく感じています。
そんな日々を経て、いつの間にかこの仕事をすることが当然だと思うようになり…まんまと祖父や両親のひいたレールに乗っかって、ここまで来ました(笑)。
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群馬の小麦がおいしい理由
ー キリブチ製麺の人気商品を教えてください。
桐渕さん:『群馬の小麦100%地粉』ですね。地粉はそのままではボソボソして使いづらいですが、独特の風味があり、クッキーや田舎まんじゅうに適しています。私たちが生産している地粉は品質と味が良いので、一度食べるとリピーターになる方も多いです。オンラインショップでは、遠く北海道の方もわざわざ群馬の小麦を買ってくれるんですよ(北海道も小麦の産地なんですけどね)。
最近は「良質なものを暮らしに取り入れたい」という方が多いようで、そういった方にはうちの商品は合うと思います。値段で言ったら外国産の安い小麦にはかなわないけれど、国産の小麦を丁寧に製粉して製品に仕上げているので、風味も良く安心して食べていただけると思います。
ー 群馬の小麦はなぜおいしいのでしょうか?
桐渕さん:群馬の風土がおいしい小麦を育てているんです。群馬県南部の冬は日照時間が長く、からっ風による乾燥した気候であること、そして土壌は水はけが良いことから、小麦作りに適した環境なんですね。この辺りでは、米を収穫した後に小麦を栽培する「二毛作」が行われていたそうです。
ですから群馬県は全国的に見ても小麦の収穫量が多く、食文化にも深く根付いています。郷土料理の「おっきりこみ」は、昔から養蚕農家を中心に食べられてきた料理です。今では、お菓子作りやパン作りに適した新しい品種の小麦も作られるようになりました。多くの方に小麦粉に興味を持っていただいて、積極的に自分の暮らしに取り入れていただけたら嬉しいですね。
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新しいものを取り入れ効率のよい仕事を
ー 桐渕さんはご自身で商品紹介をするYouTube動画を作成したりと、若い感覚でいろいろなことにチャレンジしている印象です。
桐渕さん:昔から新しいものが大好きで、それを試すことも好きでした。今どきの若い人がやっていることにも興味がありますね。私が経験してきたことや、アナログ世代だからこその良い部分に若者のアイディアが加わったら、特別なものができると思っています。だから世の中の情報にアンテナを張って、時代の動きを見るようにしています。
また、最新のツールを知るだけでなく「きちんと使いこなす」ということを意識しています。便利なものはどんどん使って自分の暮らしに取り入れていけば、仕事もはかどるし、時間を有効に使えるでしょう?この工場でも、掃除の一部分は掃除ロボットに任せています。この子は「ずいぶんコキ使うな〜」ってグチをこぼしていそうですが(笑)。
いまや立派なスタッフとして活躍している掃除ロボット
ー ご自宅でも最新のアイテムを取り入れていますか?
桐渕さん:家には(AI音声サービスの)アレクサがあります。お風呂を湧かしてくれたり、消し忘れた二階の電気も消してくれるので重宝しています。また最近は自分の健康管理にも、スマホのアプリやスマートウォッチを活用しています。一日の食事内容をアプリに入力すると、カロリー計算をしてくれるんですよ。「今日は夕飯のごはんを少なめにしたほうがいいな」とか「オヤツは控えよう」と考えるクセがついて、健康を維持するための良い習慣になりました。
スマートウォッチもいろいろな機能が付いているので、それらの機能を楽しみながら暮らしに取り入れています。忙しい時こそ最新のものを取り入れて、時間を上手に使って、楽しく生きていきたいですよね。いつでも「気持ちは若く!」って感じでね。
きっとあたなも見たことがある!キリブチ製麺の商品の一部
ー これからの抱負をお聞かせください。
桐渕さん:群馬県には小麦の生産地ならではの粉食文化があり、これからも残していきたい文化のひとつでもあります。私たちの身近な農家さんが一生懸命育てた小麦は、栄養成分が豊富で風味豊かで、とてもおいしいです。
これからも小麦粉の良いところを多くの方に伝えていきたい。そして、「おいしかった」という言葉をたくさんの方から聞きたい。小麦粉にたずさわる製造者として、この喜びを分かち合える仲間が増えたらいいな、と思っています。
【キリブチ製麵】
電話:0274-63-2277
住所:富岡市一ノ宮336-6
営業時間:9:00〜16:00
キリブチ製麺の商品は上記の事務所や、近隣のJAファーマーズ、道の駅、オンラインショップなどで購入可能です。
私が子どもの頃、よく祖母が手打ちうどんを作ってくれました。
親せきが集まる日、なんでもない普通の日の夕ご飯…
祖母のうどんはコシがあっ て、小麦の香りが口いっぱいに広がり、それはそれはおいしいごちそうでした。
いつだったか、足腰の弱くなった祖母のお手伝いで一緒にうどんを作ったときは、「こんなに手間がかかって大変なのに…いつも私たちにうどんを作ってくれてありがとう。」と、心から感謝したことを覚えています。
みなさんのご家庭にも、小麦にまつわる思い出があるのではないでしょうか。
桐渕さんのお話を聞きながら、あらためて「こんなにおいしい小麦粉があること、それを製品に仕上げている製麺所が地元にあることは誇らしい!」と感じました。
これからも暮らしに小麦を取り入れて、おいしい・たのしい粉食文化を継承していけたらいいですね。
(マツオ)