養蚕を次世代につなぐために2015年度から始まった『市民養蚕』。
市が家庭に蚕や人工飼料などを無料で提供し、飼育を体験してもらう取り組みです。
市内に住む若い世代と養蚕の関わりは、
「おじいちゃんおばあちゃんに話を聞いたことがある」という程度。
自宅の一室で蚕を飼育するってどんな状況??と想像もつかない方が多いはず。
そこで!「興味はあるけれど参加を踏みとどまっている」というみなさんへ、
令和最初の市民養蚕に参加した、富岡市在住の”なかじ”さんの飼育日記を公開します!
なかじプロフィール
・お蚕さんを愛する25歳男性(市内在住)
・2018年より市民養蚕事業に参加
【5月22日(水)〜初日〜】
■ 令和最初の市民養蚕が始まりまして我が家にもおかいこがやってきました!
今日は3齢5日目(2回目の脱皮を終えて5日目)ということで、もうすぐ3回目の脱皮が始まります。
すでに脱皮を終えお腹を空かせたおかいこさんもいますが、成育に差が出ないように餌をあげたい気持ちを抑えてじっと我慢。これが養蚕においてなかなか重要なポイントです。
これから2週間弱、おかいこさんとの楽しい日々のスタートです(^-^)
【5月23日(木)〜2日目〜】
■ 今日は念願の餌をあげる日。人工飼料を入れたとたん夢中で食いつくおかいこさんたち。お腹が空いてたようでとてもいい食べっぷり。
朝にあげて仕事を終えて帰ってくるとびっくりするくらい成長していました。
いっぱい食べて、目に見えてぐんぐん大きくなります。
他のおかいこに上に乗られても気にせず、もくもくと餌を食べている子がたくさんいました。
【5月25日(土)〜4日目〜】
■ 今日も掃除と餌くれです。
基本的なお世話ですがこれがとても大切。餌が余っていたとしても、乾いていたら食べないので様子を見てあげる必要があります。
おかいこは餌がなくなったからといって自ら餌を探し回ることはしません。人間の世話がないと生きていけない家畜ですが、他の昆虫と違って飼育容器から逃げ出したりしないので比較的飼いやすい生きものです。怒って攻撃してきたり、もちろん鳴いたりもしません。
おかいこは平和でのんびりやさんの生きものなんです(^-^)
【5月27日(月)〜6日目〜】
■ 5齢に向けて最後の脱皮準備が始まりました。
頭をもたげて脱皮準備をする「眠」。
決してリラックスしているようにみえない態勢で脱皮へ向けて静かに闘志を燃やしているように見えました。
眠になっているおかいこの上で眠になっている子がいたり、脱皮のために吐く糸を別のおかいこの身体にしてしまっているのに何も気にしない子がいたり。
おかいこの観察をしていると、ゆっくりとした時間が流れるように感じるのは私だけでしょうか(^-^)
5齢に向けてみんながんばれー!
【5月29(水)〜8日目〜】
■ 幼虫期最後の脱皮を終え5齢となったおかいこさんたち。頑張りました。
これから繭づくりに向けて沢山の餌を食べます。見ていて気持ちがいいくらい食べます。身体も今よりずっと大きくなります。
この時期の活発なおかいこさんの観察が1番わくわくします!
【5月31日(金)〜9日目〜】
■ むちむちのぶりんぶりんの頭でっかちになってきたおかいこさんたち。
来週の初めくらいには糸を吐き始める子が出てくる予定です。
5齢になると背中側から血管の流れが観察できるようになり、尾角も立派になります。観察してみると目のような模様のところ(眼状紋)がそれぞれ少し違っていて個性と表情があるようで面白いです。(気に入った子がいると名前をつけたりします。)
ついこの前家に来たかと思ったらもう立派な大人おかいこになって、不思議と少し寂しい気持ちです。
繭を作り始めると中にいるおかいこさんが完全に見えなくなるので余計に寂しくなります。我が家ではこれを「蚕ロス」と呼んでいます。
【6月2日(日)〜12日目〜】
■ もうすぐ繭を作り始めるので、飼育後半は桑の葉で育てることにしました。
一度桑の葉を食べると美味しさを知ってしまうのか人工飼料の食べが悪くなるので、最後まで責任持って桑を与えられるのであれば人工飼料を卒業します。桑葉で育てた方が蚕は大きく、糸の品質は良くなると言われています。
僕は寝室で蚕を飼っています。寝る前に桑の葉を与えると、蚕の桑葉を食べる音が雨音のように聞こえてとても落ち着いた気持ちで眠れます。
蚕と人間でウィンウィンです。こういう楽しみ方もあります。笑
【6月3日(月)〜13日目〜】
■ もうすぐ繭を作り始める頃になりました。
予定だと明後日から蚕ロスの始まりです(T_T)
やはり桑を食べる様子は可愛くてずっと見ていられます。
脚で器用に桑葉を掴んで食べる様子はなんとも言えない可愛さ。
触ると弾けちゃいそうなくらいむちむちになったおかいこさんたち。つるつるでひんやり冷たいおかいこさんを手のひらいっぱいに持つと、幸せな気持ちになります。
【6月4日(火)〜14日目〜】
■ まぶしを立てました。
繭を作る直前のおかいこは動き回り、どんどん上に登っていく習性があります。
おかいこの成虫であるカイコガは飛べないので幼虫時代はせめて飛べることを夢見て上に上がっていくのだと夢みたいなことを勝手に思っていましたが、糞と尿を他の個体にかけられないように最適な場所(なるべく上)を目指すようです。
この頃のおかいこのことを群馬弁で「ずー」と言います。元々白い身体のおかいこですが、ずーかいこはべっこう飴みたいな何とも美味しそうな色になります。
【6月17日(月)〜最終日〜】
■ 綺麗な白くて丸い繭ができました。
大きさもまばらで最後まで繭を作れない子もいましたが、無事にいい繭を取ることができました。
繭を作り終えた蚕は中で最期の脱皮をして蛹になります。
蛹になってしばらしくした後にまぶしから外され、乾燥にかけられた後精錬されて綺麗な生糸になります。
繭を切ってしまうと糸として使えなくなってしまうため、中のサナギを取り出すことなく乾燥させるしか生糸にする方法はありません。
つまり蚕を殺さなくては生糸になりません。
命を頂いて食べ物にありつくように、衣類(シルク)も蚕の命と引き換えにその恩恵を預かっているんだなぁと気付かされます。
おかいこさんたち!たくさんの学び、感動をありがとう!
-終-
〜市に寄せられた参加者の声〜
市民養蚕に参加された方々の感想の一部もご紹介します!
◆すくすくと成長していく姿は、何時間見ていてもあきることがありませんでした。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
◆虫の苦手な娘が、お蚕さんを手のひらにのせて「かわいい」とにっこりした表情に、お預かりして育ててよかったと思いました。
◆子どもより私の方がはまってしまい、毎日の成長が楽しかったです。またチャレンジをしたいと思います。
◆一生懸命育てていた蚕が死んでしまい、ずっと泣いている子どもを見て、命について親子で向き合う経験ができました。
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なかじさんの飼育日記と参加したみなさんの声、いかがでしたか?
おかいこさんを慈しむ気持ちがひしひしと伝わってきて、私も「そんな気持ちになってみたい!」と思いました。
でも初めてだと、本当にできるのかどうか不安になりますよね…。
そんな時におすすめなのが、市のウェブサイトからダウンロードできる『飼育マニュアル』を読んでみること!
写真付きで飼育のポイントが解説されていますし、よくある質問への回答も載っています。
市役所での飼育記録や参加者の声も参考になりますよ☆