今回の取材のきっかけとなったのは、私の母についての相談でした。
母は80歳を過ぎ、昨年あたりから心配な事が増えてきました。まだ元気なので自分の身の回りのことはできていますが、これからのことを考えると心配になります。
「今は介護を必要としていないけれど、足腰の動きが悪くなり一人で遠くまで行けない」とか、「日中は一人で家にいることが多いので、外へ出て人と話す機会を持って欲しい」など、私のように高齢の家族を気にかけている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで私は、市役所の高齢介護課へ向かいました。高齢介護課では介護に関する情報を教えてくれたり、介護サービスについて分かりやすいパンフレットなどを使い、様々な相談に乗ってくれます。
そこでの話の中で知ったのが、『ふれあいの居場所』の存在でした。
『ふれあいの居場所』とは、年齢や性別に関係なく、誰でも参加できる場所のことです。平成24年に富岡市の支援と共に始まったものですが、基本的にはボランティアによる活動です。地域住民などが自発的に運営し、活動内容なども自由に決めることができ、地域の集会場や個人宅などで活動しています。条件を満たすことで、運営経費に対する補助金の交付を受けることもできます。
現在、市内の多くの地域に『ふれあいの居場所』がありますが、コロナ禍を経て活動が縮小してしまったり、参加者が減ってしまった所もあるそうです。そんな中で地域の人たちに合わせた活動を継続している居場所のひとつ「水曜カフェ」に、カネコが伺いました。一体どんな所なのでしょうか?
「水曜カフェ」は5年ほど前に閉園した南蛇井保育園で活動をしています
気軽に楽しみながら体を動かそう
水曜カフェの活動は月に2〜3回行われています。私が取材に伺った日は、体操と歌の日でした。
始まる10時になると参加する皆さんが集まってきます。入り口では看板犬の『はなこちゃん』がお出迎えをしていました。
柴犬のはなちゃんは貫禄たっぷりで水曜カフェのアイドル的存在です
みなさんが集まったところで、まずは体操から。私も参加させてもらいました。
始めにラジオ体操でしっかり体を動かしますが、足が痛かったり、立っているのが辛ければ座ったままなど、それぞれができる範囲で行います。その後は片足立ちや膝の屈伸などを行い、十分に体が温まったところでゲーム式のレクリエーションへと移りました。
体操の先生と一緒に行います
お手製のお手玉を配り、「玉入れなんだけど、止まったままの箱じゃ面白くないから箱に紐をつけてきたよ」と先生。机の上を走っていく箱を狙って玉入れができるようになっています。
真剣に箱を狙って投げていき、投げ終わると「いくつ入った?」とみなさん。歓声が上がるほど盛り上がっていました。
このひと工夫が盛り上がりますね
今度はそのお手玉を使ってキャッチボール。右手・左手を交互に使ってキャッチボールするのですが、これが意外と難しく、「普段あまり使わない手で投げるのは集中力が必要だよ」と励まされながら頑張りました。
みなさんはいつもやっているそうで、とても上手でした。
お手玉はちょうど手に収まるサイズで投げやすかったです
キャッチボールが終わると、次は歌の時間になりました。歌の先生が弾くキーボードのメロディに合わせてみなさんで歌います。
歌詞カードを見ながら先生が音程や声を出すポイントを教えてくれるので、みなさんの歌声はとても楽しそう。生演奏なのがとても心地よく、気づけば私も一緒に歌っていました。
歌の先生は「懐かしい曲ばっかりですよ」と歌詞の説明もしてくれました
活動を続けられるのは地域の繋がりがあるから
体操と歌が終わると、みなさんお楽しみのお茶の時間です。お茶菓子を並べながら「これが楽しいのよ」とおしゃべりが始まりました。
「今日はまゆといとの取材があると聞いたから、『おまゆだま』作ってきたよ」と甘じょっぱいみたらし団子を作ってきてくれた方も。嬉しい~♪
美味しかったです、ありがとうございます!!
水曜カフェでは月に500円を集めてお茶菓子を用意したり、みなさんで持ち寄ったりしながらお茶の時間を楽しんでいるそうです。
お茶の時間を楽しむ間、水曜カフェを運営する村上ひろみさんにお話を伺いました。
村上さんは南蛇井保育園の園長先生をされていました
― どんなきっかけでこの活動をするようになったのですか?
村上さん:ここが保育園だった頃から、地域活動としてご近所のお年寄りを招いて、クリスマス会やお誕生日会といった園の行事を一緒に行っていたんです。そういった交流がすでにあったので、この活動をすることは自然の流れでした。保育園が終わってしまっても、場所はまだ使えるしね。初めは来てくれる人は少なかったけれど、ご近所の人を誘ううちに徐々に増えてきました。
― 参加しているのはこの地域の人が多いようですね。
村上さん:そうですね、ご近所の人が多いです。ここが保育園だったこともあって、保育園で先生をしていた人や私の同級生、園に通っていた園児の保護者だった人もいます。今日の体操と歌の指導をしてくれたのは、以前先生だった人なんですよ。園の時の繋がりが今も続いているから、この活動が継続できています。
― 継続するのに大切なことは何でしょうか?
村上さん:無理のないようにすることですかね。お話をするだけでもいいし、私も楽しみながらやっています。
地域の情報を知ることができる大切な場所
参加者のみなさんにもお話を聞きました。
― 水曜カフェにはよく参加されていますか?
「用事がなければ毎回のように来ています、皆勤賞かな。みなさんの顔を見て話すと楽しいし元気が出ますよ。それにここに来ると地域の話題になるでしょ。情報収集ができるんですよ。」
― 今日は体操でしたが、絵手紙を描く日もあるようですね?
「初めは、絵なんて描けない!なんて思ったけど、みんなに褒められながら頑張ってます。何でも描いていいから好きなものを描いています。季節の花とか野菜とか。これも最近描いた絵でね…」
― みなさんとてもお上手ですね!
廊下には色鉛筆や絵の具で描かれた絵手紙の作品が飾られていました
― こういった居場所での活動はいかがですか?
「昔は近所へ行くとどこかのお宅へ寄って話すことが普通だったけど、今はそういうのもできないでしょ。だからこういう場所で過ごせるとありがたいです。」
「家にいれば草むしりばっかりだけど(笑)、ここで何気ない話をするのが楽しいです。」
「ここでみんなで歌うのが楽しいんです。家で一人で歌うことはないし、みんながいるから歌えるんですよ。」
「何気ない会話が一番楽しい」と笑顔でいっぱいでした
村上さんはみなさんが参加しやすいような工夫をし、参加者の希望を聞いて取り入れることもしています。時には富岡製糸場で開催されたニット展へ行ったり、警察の人に来てもらって防犯のお話をしてもらうこともあるそうです。今後はオカリナの演奏会も予定しているそうですよ。
市民のみなさんに『ふれあいの居場所』の活動を知ってほしい
取材をしてみると、水曜カフェはとてもアットホームな雰囲気で、気軽に集まれる居場所という感じでした。お話にもあったように、まるで近所のお宅に立ち寄って体を動かし、おしゃべりしをているような…そんなとても居心地の良い居場所です。
市内では高齢者の単身世帯が増えていて、地域での孤立が課題になっています。ご近所さん同士のお付き合いを増やし、防犯情報など身近な情報を知って、楽しく安全に過ごしてほしいと思います。みなさんの地域にも『ふれあいの居場所』があったら、ぜひ参加してみてください。
そして、今回ご紹介した水曜カフェのような居場所づくりを、自分たちで始めてみたいと思った人はいませんか?
自分たちで活動することで近所に顔見知りが増えたり、今までの経験を活かすことができたりと、高齢者の新たな役割や生きがいが生まれる機会にもなるのではないでしょうか。
高齢介護課では居場所づくりを支援していて、運営をする際の疑問や補助金などの相談に応じてくれます。また登録すれば「自分たちの地域にこんな場所があります」と市のホームページ等でも紹介してくれますので、活動の幅も広がっていくのではと思います。
人とのお付き合いが好きな人、自分たちの地域を元気にしたい人がいたら、ぜひ手を上げてみてください。どんな風にやったらいいの?といった不安があれば、富岡市がお手伝いしてくれます。もちろん、まゆといとも応援します!!
(カネコ)