週末のもみじ平公園に並ぶ、色とりどりのキッチンカー。
「チョコバナナがいいー!」「あっちのフライドポテトもたべたい!」
公園は元気な子どもたちの声で溢れています。
私も子どもの頃にお祭りの屋台で「トクベツなおやつ」を買ってもらったことが、とっても嬉しかったな… とノスタルジーに浸りながら散歩をするマツオ。
ふと目をやると、白いキッチンカーの前で真剣にチョコバナナを選んでいる子どもの姿と、それを見守る店員さんの優しい眼差しがありました。
きっとあの子は、(どのチョコバナナがおいしいかな?)と、じっくり見極めているのでしょう。そのあまりに可愛すぎる光景に、心を奪われたのでした。
今回ご紹介するのは、その時の白いキッチンカー『走るおかし屋さん リュール』です。
さてさて、どんなお話が聞けるのでしょうか ♪
【 走るおかし屋さん Lueur(リュール)】
富岡市出身の店主・髙橋克弥さんが手作りお菓子を乗せて走るキッチンカー。富岡市を中心に、県内外で移動販売を行う。こだわりの材料で作るチーズタルトをはじめ、夏はかき氷、冬はホットサンドなど季節に合わせた商品を提供している。
出店情報はこちらをご覧ください⇒ インスタグラム
キッチンカーで叶えた独立
店主の髙橋克弥さんと奥様の恵さんにお話をお聞きしました。
― お店の歴史と、「リュール」という店名の由来を教えてください。
克弥さん:2017年からキッチンカーでの移動販売を始めました。最初の頃は富岡製糸場付近で出店することが多く、焼きドーナツやチーズタルトの販売がメインでした。今は市内の公園や近隣のイベント会場で移動販売を行うとともに、県外への出店にも力を入れています。
店名のリュール(Lueur)はフランス語で「ろうそくの灯りのような微光、輝き」などの意味があります。このお店がろうそくの灯りのようにホッとできる存在でありたい、という願いを込めて店名にしました。
― 克弥さんとお菓子作りとの出会いはいつ頃ですか?
克弥さん:小学生の頃に、「大人になったらケーキ屋さんになる!」という確固たる夢がありました。まだパティシエという言葉がメジャーになるずっと前のことです。そして、自分の思い描いた道へ進むために製菓の専門学校に進学して(この専門学校で妻と出会い、のちに結婚しています)、その後は市内の菓子店で勤務しながらお菓子作りの経験を積みました。
― 奥様もパティシエさんなんですね!では、どのようなきっかけで移動販売のお店『走るおかし屋 リュール』を始められたのですか?
克弥さん:私が体調を崩して当時の勤め先を退職したことがきっかけで、これからどんな仕事ができるかな… と模索していた時期がありました。その時に、「リース形式でキッチンカーの営業が始められる」という企業を見つけたんです。
自分は長いあいだ製菓の仕事に就いていたので、いつか独立したいという夢を持っていました。キッチンカーでの営業なら、店舗を構えるよりも初期費用を抑えられるということで、このスタイルでやっていくことになりました。
― 富岡市内での販売と県外での販売では、どんな違いがありますか?
克弥さん:訪れる客層や好まれる商品の傾向などは、出店する場所によってかなり違いがありますね。百貨店の催事と週末の公園では、売れる商品も異なります。どんな場所でも、お客様から「美味しかったよ!」と言っていただいたり、リュールのお菓子を喜んでいただけることはとても嬉しいです。
休日のもみじ平総合公園
楽しい時も大変な時も夫婦二人三脚で
― キッチンカーでの移動販売をやっていて「大変なこと」はどんなことですか?
克弥さん:大変なことは、天候に左右されることですね。日中はずっと屋外に店を出しているので、キッチンカーの中にいても夏は暑くて冬は寒い。雨が降ればお客さんは来ないですし…。
キッチンカーって自由で楽しそうに見えますよね?しかし、良くも悪くも「自己責任」で成り立ってる商売です。「ボーナス?なにそれ美味しいの?」という身分なので(笑)。
― では「良かったな」と思うことはどんなことでしょうか?
克弥さん:キッチンカーって自由で楽しそうに見えますよね?(2回目)はい!楽しいです!(笑)イベント会場などで、遠方からいらっしゃったお客さまとお話しをしたり、知人がひょっこり遊びに来てくれたり。キッチンカーだとお客様との距離も近いので、人との出会いにはいつも楽しませてもらっています。
また、出店の時期や場所に合わせて人気が出そうな商材を予測しながら準備をしているのですが、それが当たった時には「よしっ!」と嬉しくなります。
― ご夫婦で二人三脚でお店をやられているという印象があるのですが、克弥さんと恵さんの役割分担はありますか?
克弥さん:私が基本的にすべての業務をこなしていて、お菓子の製造や、遠方への泊まりこみの出張、仕入れや営業などを担当しています。妻には、市内の公園や近隣地域でのキッチンカーでの出店と、私が出張中の材料送り込みの補佐をしてもらっています。あとは、新商品として食べたいお菓子の提案や、私の苦手分野の補助もしてもらっています。
― なるほど、恵さん担当の「食べたいお菓子の提案」は重要な役割ですね!(笑) そんな恵さんは市内や近場での販売担当が多いようですが、キッチンカーでのお仕事は楽しいですか?
恵さん:私はもみじ平公園で販売担当することが多いのですが、ここへ来る子どもたちとのやり取りが楽しいですね。チョコバナナひとつとっても、お子さんと親御さんでは選ぶ基準が違うんです(笑)。子どもたちは一本丸々の王道の「ザ・チョコバナナ」を好むのですが、親は一口サイズにカットされた食べやすいチョコバナナを子どもに勧めていたりして。そんな平和な日常の光景にも癒されています。
― たしかに、この王道フォルムは子どもの憧れですよね〜。
こちらが子どもたちの大好物・王道のチョコバナナ
励みになる仲間の存在
― 私はリュールさんのチーズタルトの大ファンなのですが、材料へのこだわりなどはありますか?
克弥さん:リュールのタルト生地は、甘楽町の富田製麺で製粉された小麦を使用しています。群馬県産の小麦は風味が良いので、近場で良質な材料が手に入ることは有難いですね。
富田製麺さんとは材料の仕入れ先という関係だけではなく、イベント出店を一緒にすることもあります。同業者同士での交流や横の繋がりも大切にしていて、市内のお菓子屋さんや近隣地域のお店の方とも声を掛け合って、共同でいろんなイベントに出向いています。最近は各地でマルシェや物産フェアといったイベントが盛んに行われているので、そのような場所に出店する機会も増えました。何をするにも仲間がいると心強いですね。
彩り豊かなチーズタルト
いかがでしたか?
髙橋さんご夫婦が醸し出す優しい雰囲気はとても居心地が良くて、店名のリュールが表すような「ほっとできる存在」だと感じました。
髙橋さんが作るお菓子は、これからも公園で元気いっぱいに駆けまわる子どもたちのココロとお腹を満たしてくれることでしょう。そして昔子どもだったオトナのみなさんもぜひ、「王道のチョコバナナ」を食べてみてくださいね ♪
(マツオ)