「みなさ〜ん。子どもから大人まで楽しめる企画展が始まってますよ〜。」
ということで、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館へ行ってきました。
感想を先に言ってしまうと、ものすごく楽しかったです。
「もう行ったよ!」という方も、「美術館て敷居が高くて…」という方も、ぜひお付き合いください!
まず富岡市立美術博物館がどこにあるのかと言いますと、もみじ平総合公園の、野球場の近く。富岡方面から来ると左側。安中方面から来ると右側。「群馬県立自然史博物館」や「かぶら文化ホール」から見ると、西ゾーンと東ゾーンを結ぶ「もみじ橋」を渡った先にあります。
現在は、公園入口から美術館まで、絵本原画展にちなんだフラッグが並んでいるので簡単にたどり着くことができますよ。
降矢ななさんの可愛い絵がお出迎え。駐車場から気分が上がります!
美術館に入ったら、まずはチケットを買いましょう。
富岡市立美術博物館では年間を通して、ぐ〜ちょきパスポートの提示で観覧料が2割引になります。(5月19日までの観覧料は、一般500円→400円に)
そして5月19日までに限り、チケットの半券提示で2回目以降の観覧料が半額になります。(一般500円→250円に!)忘れず持参してくださいね。
また5月1日(水・祝)は「即位の日」を記念して観覧無料となります。この機会にぜひ!
それでは、大きな階段を上って展示室のある2階に上がります。
エレベーターもあるのでベビーカーや車椅子の方もご安心ください。
2階ロビーには、椅子に座って自由に読むことができる絵本がたくさんありました。
コーヒーも販売しているので、展示を見た後にここでゆっくり過ごすのもいいですね。
ロビーの床には巨大な「ちょろりんのすてきなセーター」の絵本も落ちている!?ので、ぜひ一緒に写真を撮ってみてください。
※基本的に、展示室以外の場所では写真撮影OK(ただし撮影不可の作品を含まないこと)です。
それでは、企画展示室の『降矢なな絵本原画展』からいってみましょう。
学芸員の肥留川さん、解説よろしくお願いします!
肥留川「絵本作家の降矢ななさんのデビュー作と最新作を含めた、6作品の原画とタブロー1点を展示しています。特に今回は、読み聞かせをする時に人気の本に焦点を当てています。目と耳で楽しんで欲しいという意図があるので、関連事業として絵本の読み聞かせも行っています。」
私もこの取材の前に子どもを連れて来て読み聞かせをしてもらったのですが、さすがプロ、子どもの食いつきが違いました。
絵本の読み聞かせは、毎週土曜日と、4月28日(日曜日)・5月12日(日曜日)・19日(日曜日)の午前10時から午後2時まで行われます。(参加費無料。ただし観覧料が必要です。)
降矢ななさんのデビュー作『めっきらもっきらどおんどおん』
原画を見ると、とにかく色が綺麗!そして絵本よりも迫力も感じられるような…。
肥留川「実際に描いた紙の質感や、絵の具の色の綺麗さ、細かいタッチなどは、絵本ではなかなか表現ができないところなんです。それが原画だと、どんな風に筆を動かしているのかとか、どういう風に色を重ねているのかとか、そういったところも見えるので、ぜひその辺をよく見ていただきたいです。」
作品の横に置かれた絵本と原画を見比べてみると確かに、紙の凸凹や微妙な濃淡、色の鮮やかさは原画でしかわかりませんでした。
やまんばの娘まゆが登場するシリーズの1作目『まゆとおに』。原画と絵本で、まゆの表情が異なるところも。
肥留川「降矢さんはキツネがとても好きなキャラクターで、この絵本にもキツネが出てきますね。」
あ!ホントだ!お話の中には登場しないのに、キツネがここにも…あそこにも…あれ?前のページは?もう一回最初から確認しないと。しかもキツネの表情がひとつひとつ面白い!これは要チェックです。
肥留川「降矢さんは作品の世界観に合わせて描き方を変える方なんです。『めっきら〜』や『まゆとおに』のような日本的なイメージのお話は和を感じさせる描き方をしていますが、他の作品では全く違うタッチで描かれています。とても表現に幅のある作家さんなんです。」
ふむふむ。こちらの絵は墨と筆で輪郭を描いたような感じですよね。では次の作品を見てみると・・・
今年1月に発売されたばかりの最新作『どうぶつABCえほん』
タッチが全く違う!まるで別人の絵です。
それにしても絶妙にユーモアがあって可愛らしい絵ですね〜。
ところでこの『どうぶつABCえほん』は、文章もまた面白い。声に出して読むと、韻を踏んでいるような、早口言葉のような。
肥留川「そうなんです。ネイティブの方は特にJのページの『The jaguar juggles in the jungle』が、読むと気持ちがいいみたいですね。」
ジャガージャグジャ・・・。私が気持ちよく言えるようになるには練習が必要ですけど、ぜひ声に出して読んで欲しいですね。でも、美術館って静かで声を出してはいけない気がするんですが・・・。
肥留川「今回の展覧会は、絵の上にキャプション(文章が書かれたもの)がついているんですが、親子で見に来た際に、親御さんからお子さんに読んであげて欲しいからなんです。お子さんには絵だけを見てもらって、お話は耳で聞く。そうやって絵本の世界を楽しんで欲しいという思いがあります。」
ということは声を出していいんですね?
肥留川「どんどん喋っていただいて大丈夫です。」
そうなんですね、喋っていいんですね!
展示室内にも降矢さんの絵本がたくさんありますから、みなさんもぜひ目だけではなく耳でも楽しんでみてください。
『降矢なな絵本原画展』は5月19日(日)までの開催です。
それでは次の展示室に行ってみましょう〜。
常設展示室では現在、『収蔵品展 物語のかくれんぼ』が開催されています。
(【前期】5月19日(日)まで・【後期】5月22日(火)から7月7日(日)まで)
ここからは、学芸員の稲田さんお願いします!
稲田「常設展示室では、美術館の収蔵品の中からテーマに沿った作品を選んで展示しています。今回は絵本原画展に合わせて、“物語のストーリーを自分で作ってみよう” というテーマで選びました。」
稲田「なので作品の解説はほとんど書いていません。例えばこの絵だと、横から見た男性がいろんな物の組み合わせで描かれているので、 “この男性は何を経験し何を考えているのか、描かれた物から想像してみましょう” とキャプションに書きました。」
いつもだったら、自分の好みの作品の前では立ち止まっても、そうでない作品は歩きながらサラッと見て通り過ぎるだけ。ですが、「この人は何を考えているでしょう」とクイズ形式で出されると・・・
あら不思議。どんな作品でも立ち止まってじっくり見てしまいます。
井田淳一《壊れた記憶箱Ⅰ》1987 箱からどんなものが出てきそう?
稲田「作品の横に解説が書かれていると、それを読んで作品を見た気になってしまうという人も多いのかなと。じっくり見て欲しいのでクイズのようにしてみました。」
確かに解説だと、自分で考えることはしないですよね。
ところでクイズの “答え” はあるんでしょうか?作者本人が作品について「この人物はこんな心情で…」と解説していたり。
稲田「本人が解説していることもあります。ですが、作品について誰かがああだこうだと言うことについて作者はいとわないので、皆さんで自由に考えてもらえれば。」
小山田二郎《子供》1979年 あーだこーだ言うHさんと稲田さん
試しに、この作品に描かれた子どもがどんな気持ちなのか、私と稲田さんと同行したHさんとで意見交換をしました。
「向こうの部屋はきらびやかで楽しそう。人が苦手だから行きたくはないけど、でも気になるから壁に隠れてチラチラ見てる」
「向こうに行きたい気持ちはあるけど、行きづらい感じはする」
「夜中に大人が秘密の会話をしていて、起きてしまった子どもが聞いてはいけないことを聞いてしまいショックを受けているようにも見える」
「あ〜(笑)」
岡本健彦《4つの丸》2002年 丸は一体何に見える?
「こちらの絵は、私は豆に見えました。」
「豆がつながっている。・・・糸電話で話してるとか?」
「 “今日ボク煮られるみたいなんだ” “何?醤油で?” “それダサくね?” “オリーブオイルとか憧れるよね” みたいな。」
「楽しい絵に見えてきた(笑)」
この後、他の絵でも愉快な意見交換が続きました。絵について話すのがこんなに楽しいことだったなんて、知らなかった!!!
稲田「5月と6月に『絵の物語をつくろう!』と題した対話型鑑賞会を企画しています。5月11日(土)は親子トーク。子どもって何を言い出すのかわからないので、面白いんじゃないかなと思っています。6月15日(土)はどなたでも参加できます。」
これは面白そう!前期と後期で展示替えがあるので、両方に参加してもいいですね。
鑑賞会に参加しなくても、ぜひ家族やお友達と一緒に「私はこう見える」「ぼくはこう見える」と絵の前で話してみてください。新しい気付きがあるかもしれません。