昔から養蚕業が盛んだった富岡市。
お蚕のエサと言えば、桑(くわ)の葉っぱですよね。
そのため市内では、桑畑や野生化した桑の木をいたるところで見かけます。
学校帰りに道端で “どどめ” を取って、食べていた人も多いのではないでしょうか?( “どどめ” は桑の実を指す方言です)
ではこの桑の木で、和紙が作れることは知っていましたか?
こちらのインタビューの最後の方に、その話題がチラッと登場しています。
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今まで捨てられていた桑の枝を活用した、”桑和紙”の商品化。
一体どのように作られているのか、気になりますよね。
そこで今回、安西飛鳥さんが勤務しているパーソルサンクス株式会社の「とみおか繭工房」にて『桑和紙づくりワークショップ』が行われると聞き、お邪魔してきました!
(この取材は2月下旬に行われたものです。)
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桑から和紙を作ってみよう
和紙の原料として一般的に使われているのは、「楮(こうぞ)」という植物。楮は、桑と同じ「クワ科」の植物なんです。
桑も昔は和紙の原料として使われていましたが、現在は楮に少し混ぜる程度で、桑を主原料にした和紙はほとんど存在していません。
ですが、とみおか繭工房では改良に改良を重ね、手作業で桑100%の和紙を製造し、商品化することに成功しています。
手作業での和紙づくり。一体どれだけの手間がかかるのか、体験をしながら学んでいきたいと思います!
とみおか繭工房アネックスにて。のれんも桑和紙でできている。
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作り方① 桑の枝を切り、煮てやわらかくする。
まずは、桑の枝を20cm程度の長さにカットしていきます。
体験では真っ直ぐな枝の状態から用意してもらいましたが、実際は桑園から切ってきた長い枝から、葉や小枝を綺麗に取るところから始めないといけませんね。
切る時は少し力が必要なので、怪我をしないように注意!
続いて、”芽かき” を行います。
芽や枝分かれした部分を取り除く地道な作業です。
「芽がちゃんと取れているかチェックします!」と安西さん。芽が残っていると、後の作業に響いてしまうそうです。
また、ここで取った芽は普段は捨てずに、シルクの染色に使うそう。綺麗な黄金色に染まるんですって!
ここまでできたら、枝が浸かるくらいのたっぷりの水に重曹を入れて、枝の色が真っ茶色に変化するまで煮ます。
すでに煮てあるものを用意してもらいました。
とみおか繭工房では、大きな寸胴に枝9kg、水18L、重曹1kgを入れて50分くらい煮るそうです。
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作り方② 枝の皮を剥き、原液を作る。
煮た枝に切り込みを一本入れると、あら不思議。こんなに気持ちよく皮が剥けるんです!
これにはみなさんビックリしていました。
次に皮の茶色い部分(表皮)をヘラで削り取り、白っぽい部分だけにします。
この時に茶色い部分が残っていると、きれいな和紙になりません。
和紙になるのはこの部分だけ!
体験ではこの先の工程は省略しましたが、安西さん曰く「シミやホクロのような変色部分も、1枚1枚チェックして取り除きます。和紙づくりの中でこの作業が一番大変で、時間がかかります。」とのこと!
丁寧にシミとホクロを取り除いた原料は、次に「ある天然のもの(企業秘密)」を加えた水で煮ます。(一般的にはソーダ灰などを加えますが、とみおか繭工房では、より安全に作業をするために代替品を使用しています。)
煮た後は、水にさらして、2日間かけて不純物を洗い流す作業へ。
よく洗えば洗うほど真っ白な和紙になりますが、こちらではあえて桑独特の薄茶色を残しているそうですよ。
洗ってほぐした繊維と水をミキサーで撹拌した原料液。
洗い終わった原料は手でよくほぐし、50gの原料に800mlの水を加えてミキサーにかけます。ミキサーで砕ききれなかったダマを取り除いたら、ようやくトロトロとしたあの液体の完成です!
そこに水を足して合計6.5Lにしたものが、ハガキサイズの和紙5枚分の原料液になります。
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作り方③ 木枠で紙を漉き、乾かす。
原料液を手で混ぜて均一にしてから、
網を張った木枠(下)と網なしの木枠(上)を重ねたものですくいます。
持ち上げてから軽く揺らすと綺麗になるそうです。
水気を切ってトレイに置いたら、ヘラで全ての縁をおさえて…
上の木枠を外します。
縁がガタガタ?と思っても、それが味わいになるので気にしなくてOK。
不織布の上にひっくり返して、網の上からタオルで軽く水気を取ります。
上のすみっこに「フッ」と息を吹きかけ、原料を下に落としながら木枠を持ち上げて…
網から不織布に移しました。
ちゃんと和紙っぽくなっていて、ちょっと感動します!
これをベニヤ板にペタッと貼り付けて、天日干し。
しっかり乾燥すれば、手漉き桑和紙のハガキの完成です!
一枚一枚に個性があっていいですね〜。
とみおか繭工房では、木枠も様々な大きさで手作りしていて、全ての工程を障がいのある社員さんらが行っています。
「桑茶を混ぜたり、外皮を砕いて混ぜたり、食紅を入れてアレンジするのも楽しいですよ。」と安西さん。
ぜひみなさんも、ご家庭で挑戦してみてください!
〈参考サイト〉
・群馬県ホームページ|家庭で出来る「桑枝」を原料とした和紙の作り方
☆ワークショップの様子を動画にまとめました(約2分)☆
※今回取材したワークショップは、市外・県外の方向けに、富岡市を知ってもらうきっかけとして実施されたものです。(Gmoto project「富岡シルクをシル!フィールドワーク」)
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広がる桑和紙の可能性
プリンターでの印刷にも対応したA4サイズの桑和紙も。
とみおか繭工房では、様々な大きさと薄さの手漉き桑和紙を製造しています。
桑和紙を使った雑貨やアクセサリーも、とっても素敵ですよ!
桑和紙を使ったアクセサリー。素朴で優しい印象の和紙が、オシャレに変身。
これらの商品は、とみおか繭工房に見学に行くか、以下の店舗で購入できます。
・道の駅みょうぎ(販売中)
・道の駅しもにた(販売中)
・お富ちゃん家(近日販売予定)
・ファームドゥ食の駅前橋吉岡店(販売中)
※その他取扱店拡大中
障子のアクセントにも。
たくさんの手間と時間をかけて作られているということ。
今までは捨てられていた市の資源から生まれているということ。
私はそこに大きな価値を感じています。
富岡の新たな産業として、これから盛り上がっていく可能性大!
みなさんも一緒に、桑和紙の可能性を探ってみませんか?
(ナカヤマ)
〈協力〉
・パーソルサンクス株式会社 とみおか繭工房