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まゆといと

2025.07.11 畑、養蚕、狩猟

6次産業化で狩猟を未来へ繋ぐ【猟師さんのおすそわけ】

富岡市のふるさと納税の返礼品にもなっている、鹿肉のドッグフード『猟師さんのおすそわけ』。こちらの商品、なんと正真正銘の猟師さんが、鹿の捕獲から製造・販売までを行っているんです。

 

ファンも多いという上州鹿100%のドッグフード。その販売に至った経緯や商品の魅力について、森と緑の研究社の代表・岩井 亮さん(富岡猟友会所属)、武者 貴博さん(藤岡猟友会所属)、大塚 利恵子さんにお話を伺いました。

 

 

☆今回の記事の内容をより理解するために、過去の狩猟シリーズの記事もぜひご覧ください。

↓ ↓ ↓

 

「狩猟」と「有害鳥獣の許可捕獲」の違い、野生動物の捕獲をとりまく現状と課題について聞きました👇️

 

 

70代のベテランハンターと市内最年少サラリーマンハンターのお二人に、狩猟を始めたきっかけや魅力について聞きました(今回ご紹介する岩井さんの狩猟仲間です)👇️

 

 

狩猟免許取得から猟に出るまでの流れ・費用・猟友会のことなど、かなり具体的なお話を聞ききました👇️

狩猟について聞いてみた③ 免許を取っていざ山へ!

 

 

 


 

 

 

「駆除した鹿の命を無駄にしたくない」

 

群馬県猟友会の狩猟事故防止指導員に任命されている岩井さん

 

 

― 岩井さんの本業は石屋さんだそうですが、そもそも狩猟を始めるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

 

岩井さん:仕事で近所の方のお家に行った時に、猟師が被るオレンジ色の帽子が置いてあったので、その方に「猟師やるんですか?」と聞いたんです。すると、「やるよ。興味あるのか?」と聞かれたので「あります」と答えたら、「初心者講習会を受けてこい」と言われて。じゃあ受けてみるかとノリで行ったのが始まりです。

 

― ノリと勢いは大事ですね。そこから猟銃の所持許可と狩猟免許を取得するまでの道のりは大変だったと思いますが、実際に猟をやってみた感想はいかがでしたか?

 

岩井さん:もう面白くて!忍耐力とか、緊張感とか、逃した時の悔しさ、獲った時の達成感、仲間同士の承認欲求…。一言では言い表せないくらい、いろんな楽しみだったり、いろんな喜びが詰まってるんです。人生の縮図ですね。

 

 

大桁湖畔にある鳥獣供養塔

 

 

― では、鹿肉でドッグフードを作るようになったきっかけを教えてください。

 

岩井さん:捕獲した動物は捌いて仲間で分け合っていますが、鹿肉は食べ切れずに捨てられてしまうこともあって、もったいないなと思っていました。そこである日、自分が飼っていた犬に鹿肉をあげてみたら、おいしそうに食べたんですよ。それを見て、鹿肉でドッグフードを作ったらどうだろう?と思い、ペットフードの事業者に必要な届出をして、試行錯誤しながら製造を始めました。

 

 

鹿肉のジャーキー

 

 

― 捨てられてしまうお肉を何とかしたい!という気持ちだったんですね。

 

岩井さん:それまでドッグフードを作ったこともないですし、日持ちするにはどうしたらいいのか?といったところから研究を重ねました。仲間や近所の人から「これ売れるんじゃない?」と言われてイベントに出店するようになり、ホームページを立ち上げたらだんだん人気が出てきて…。一人では追いつかなくなってしまったので、武者さんに声をかけたんです。

 

― 武者さんも本業は石屋さんだそうですが、もともと狩猟には興味があったのでしょうか。

 

武者さん:興味はありませんでしたが、岩井さんから話を聞いて面白そうだなと思い、まずはわな猟免許を取ってから、銃猟免許を取りました。やってみると本当に面白いですし、やりがいを感じますね。野生動物の被害に遭っている農家さんの役に立てているという実感があります。

 

 

写真左から大塚さん、武者さん。

 

 

― そこに営業担当の大塚さんも加わって、現在は3人体制なんですね。

 

大塚さん:私は昨年富岡で行われた物産展でお二人に初めてお会いして、ご縁があってお手伝いをするようになりました。現在は新商品の開発や、新しいブランドの立ち上げ、販路の拡大などに取り組んでいます。

 

―  インスタで鹿の角のアクセサリーを拝見しましたが、こちらは大塚さんのアイデアでしょうか。

 

 

鹿の角とパワーストーンを組み合わせたチャーム

 

 

大塚さん:そうです。知り合いのアクセサリー作家さんにお願いして作ってもらっています。鹿の角は、魔除けとか金運アップとか、運気上昇といった意味もあるそうです。これからまた別パターンのアクセサリーも作っていければいいなと思っています。

 

岩井さん:角は犬が噛むおもちゃとして販売していますが、先端は尖っていて危ないので切り落としていて、それが余っていたんです。こんな商品になるなんて、自分じゃ思いつかなかったですね。

 

― 「無駄にしない」という精神に女性ならではの感性が加わって、商品の幅もターゲットも広がっているんですね。

 

 

 


 

 

 

生産者の顔が見える、こだわりのドッグフード

 

鹿の様々な部位を使ったドッグフードは、添加物・防腐剤・着色料不使用。

 

 

― 鹿肉はペットにどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

大塚さん:高タンパク低カロリーで低アレルゲン、そして鉄分やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富なのが特徴です。

 

― 栄養満点なんですね。他社の商品との違いはありますか?

 

大塚さん:どこかから鹿肉を買って加工しているのではなく、鹿を捕獲するところから、製造、販売まで一貫して行っているというのが一番の違いです。

 

岩井さん:そして、上州鹿のいいお肉だけを使うことにこだわっています。人間が食べない部分を使うのではなく、“猟師さんが食べる本当においしいお肉をペットにあげましょう” というコンセプトから、『猟師さんのおすそわけ』と名付けているんです。

 

― では私も少しだけ、ジャーキーを試食してみます。…封を開けるといい香りがしますね…おっ!噛み切りやすいですし、臭みがなくておいしいです!

 

 

▼まゆといとメンバーのワンちゃんにも試してもらいました。

 

 

「ジャーキーを持った私の手をガシッとつかんで離さない!」「ふりかけをかけたドッグフードを運んでいたら、待ちきれずにジャンプしてきた!」とのこと。ビックリするほど食いつきがよかったそうです。

特にふりかけは、猫ちゃんや、食が細くなってしまった子にもおすすめですよ。

 

 

 


 

 

 

「狩猟の魅力を広めて次世代につなげたい」

 

 

― 岩井さんはドッグフードを商品化する前と後で、猟への姿勢は変わりましたか?

 

岩井さん:変わりましたね。作物を荒らす野生動物をただ駆除するのとは違い、「その先にお客さんが待っている」と思うと張り合いがあります。また、安定供給をしなくてはならいので、山にカメラを設置してデータを収集するなど、捕獲効率を上げるための研究をするようにもなりました。

 

 

イベント会場で存在感を放つディスプレイ。薬きょうのキーホルダーも人気商品。

 

 

― いろんな場所で岩井さんたちが直接商品を売ることで、狩猟に興味を持つ人が増えていきそうですね。

 

大塚さん:猟師でも食べていけるという道筋がつけられれば、狩猟を始める人も増えるのではと思います。私たちが商品を広めることで、若者に「一緒に6次産業をやりたい!猟をやりたい!」と思ってもらえるようにしていきたいです。

 

武者さん:やはり人材育成はしていきたいですよね。猟場も受け継いでいかないと、このままでは途絶えてしまうので。

 

岩井さん:自分たちが教わってきたことを、次の世代にも伝えていきたいと思っています。最初は何も知識がなくても大丈夫です。狩猟に少しでも興味がある人は、ぜひ連絡をください!

 

 

【猟師さんのおすそわけ】

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この取材の前日、岩井さんの大学生の娘さんは、わな猟免許を取得するための講習会に参加していたそうです。

お父さんの背中を見てきた娘さんが自ら選んだその行動が、岩井さんたちの活動の素晴らしさを物語っていると感じました。

 

また現在、新たにウェットタイプのドッグフードも開発中とのこと。楽しみですね♪

 

まゆといとでは今後も、富岡市の狩猟に関する話題を発信していきます。

みなさんからの情報をお待ちしています!

 

(ナカヤマ)

 

 


 

 

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