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まゆといと

2025.03.07 地域で働く

【甘い玉ねぎを全国へ】 宮下 正行さん・けさ子さん

まゆといとではこれまでにたくさんの農家さんをご紹介してきましたが、今回私が伺ったのは「玉ねぎ」農家さんです。

 

“富岡の玉ねぎ” と聞いて、「あの甘くてみずみずしい玉ねぎ?」と思った人も多いのではないでしょうか。そうです、その玉ねぎです! 新緑の季節に出回る玉ねぎは、薄くスライスして生のまま食べても美味しいですよね。

 

岡本地区の宮下正行さん・けさ子さん夫妻が作る玉ねぎも、柔らかく、甘くて美味しいことで知られています。実は富岡市のふるさと納税返礼品としても、とても人気があるんですよ。

 

 

宮下 正行さんと けさ子さん

 

 

宮下さんが作る玉ねぎの美味しさは、一体どこからくるのでしょうか?

また、玉ねぎ栽培を続ける中での苦労や、おすすめの食べ方などもお聞きしました。

 

 

 


 

 

 

土にこだわる玉ねぎ栽培

 

 

― お二人で玉ねぎ栽培を始めるようになったのはいつ頃からですか?

 

正行さん:玉ねぎは30年ほど前からで、その前はこんにゃく芋を作ってました。昔はこの辺には、こんにゃく芋農家がたくさんいましたよ。ただね、こんにゃく芋を作るにはサラサラした土の方がやりやすいけど、この辺の土は粘土質で、やりづらいんだよね。玉ねぎ栽培ならこの土に合うと思って、それで始めました。

 

 

以前はこんにゃく芋生産者と養蚕農家が多くいたという岡本地区。宮下さんの畑では玉ねぎの他に、ほうれん草や小松菜、下仁田ねぎなども栽培されています。

 

 

― 今の時期(取材日は1月中旬)は、畑での作業はどんな様子ですか?

 

正行さん:12月いっぱいまでは下仁田ねぎの収穫と発送があってね、この前、玉ねぎ苗の植え付けが終わったところです。玉ねぎの植え付けを終えると、今度はほうれん草の収穫が始まります。

 

― 玉ねぎの収穫はいつ頃になりますか?

 

正行さん:うちは「早生種」と「中生種」の二種類の玉ねぎを作っていて、早生種は5月中旬頃から、中生種は6月上旬頃から収穫が始まります。早生種の方が辛みが少ないけど、中生種も生で食べても美味しいですよ。

 

― 「新玉ねぎ」というのはどういったものを言うのでしょうか。

 

正行さん:新玉ねぎっていうのは、収穫してすぐの、白くて水分を多く含んでる玉ねぎのことを言うんです。時間が経てば乾燥して、皮が茶色く、硬くなっていきますよ。

 

 

畑には植えたばかりの玉ねぎの苗がたくさん並んでいました。

 

 

― 宮下さんが作る玉ねぎは甘いと評判ですが、その秘訣は何でしょうか?

 

正行さん:長年の土づくりですかね。いい土になるように考えて、米ぬかとか鶏糞とか竹チップとか、ありとあらゆる事を試して改良してきました。収穫した後には、連作障害を防ぐためにサトウキビ系の緑肥用植物を植えたりします。土はね、何度も同じものを作ると飽きちゃうんだよね。だから毎年、土の様子を見て土づくりをするんです。玉ねぎの畑がいくつかあるけど、できた玉ねぎを食べてみると、美味しくない畑もあるんですよ。土によって味が違うんだよね。

 

― 土の違いで玉ねぎの味にも違いが出てしまうんですね。驚きです。

 

 

 


 

 

 

誰かに教えたい美味しさ

 

今年も美味しい玉ねぎができますように。

 

 

― 宮下さんの玉ねぎが美味しいという話を、あちらこちらで耳にします。広く知れ渡るようになったのはなぜでしょうか。

 

けさ子さん:作り始めた頃に、知り合いが玉ねぎが欲しいって言うから送ったんです。そうしたら美味しいねって言ってくれて、今度は「友達に送ってあげたいから」ってまた買ってくれたんですよ。「そこにチラシがあったらいいね」って言うから、私が手書きでチラシを作って一緒に送ったら、そのチラシが一人歩きしたみたい(笑)。それを見て注文してくれる人が増えたのかな。

 

― 人から人へお裾分けが広がっていったんですね。今では富岡市内外だけでなく、県外からの注文も多いそうですね。

 

けさ子さん:そうですね、世の中には世話好きな人がいるんですよ(笑)。もらって食べたら美味しかったからって、今度はその人が注文してくれて、それをご近所さんに配って、もらった人がまた注文してくれて…。そんなことが続いて口コミで広まったのかな。毎年買ってくれたり、「今年も美味しいね」って手紙をくれたり、そういう人がたくさんいます。この前も福島県の人から手紙をもらいました。無名だったのに、こんなに広まったのが不思議だよね。

 

 

注文は北海道や沖縄の人からも入ってくるそう。届く手紙やFAXは、お二人の励みになっています。

 

 

― 毎日ご夫婦で朝早くから畑作業をされていると思いますが、大変なことは何ですか?

 

正行さん:玉ねぎの収穫作業が大変ですね。収穫が始まると、毎日朝の4時、5時から休みなくやってます。それにね、ここ何年か6月に入るとすぐに、気温が上がって暑い日があるでしょ。気温が33℃以上になると、被せてあるマルチに玉ねぎが触れた時にヤケドして、へこんでしまうんです。それに梅雨時期の収穫は特に大変ですよ。異常気象なんて言うけど、雨が降り始めると何日も続く日が多くて収穫が遅れてしまう。もうね、3、4日遅れるとダメだね…。天気には勝てないです。

 

 

収穫を待つ春先の玉ねぎ

 

 

夏になると、ゲリラ豪雨なんて言葉もよく聞くようになりました。本当に農家さんは大変ですね。今年のほうれん草も、降水量が少なく出来がよくなかったそうです。天気に左右される農家さんのご苦労に頭が下がります。

 

 

 


 

 

 

 

待ち遠しい新たまねぎ

 

 

宮下さんが玉ねぎをふるさと納税の返礼品に登録したのは3年前から。けさ子さんが「やってみよう」と正行さんに提案して始めたそうです。

 

― お二人が作る玉ねぎは、富岡市の返礼品として特に人気があるそうですね。

 

けさ子さん:年が明けるともう、ふるさと納税の注文が入ってきます。ありがたいけど、玉ねぎがどんな出来になるか、ちゃんと収穫できるか、まだわからないから不安ですよ。玉ねぎが病気になっちゃうこともあるしね。玉ねぎだけじゃなくて、自分たちも具合が悪くなったら困るし…。

 

― 農家さんのおかげで旬の野菜を美味しい時期に食べられて、とてもありがたいです。

 

けさ子さん:これから暖かくなってくると、九州地方の新玉ねぎがスーパーに出始めるでしょ。そうすると、「玉ねぎができたかい?」って私の携帯電話に連絡が来るんですよ。全く気の早い人がいますよね(笑)。

 

― それだけ宮下さんが作る玉ねぎを待っている人が多いということですね。

 

 

けさ子さんが作った「宮たまちゃん」。遊び心がいっぱいです。

 

 

― 新玉ねぎのおすすめの食べ方を教えてください。

 

けさ子さん:生食が一番おすすめで、スライスしてポン酢をかけたりして食べることが多いです。あとはね、スライスした玉ねぎにチーズをのせてからレンジにかけて、お好みのドレッシングをかけても美味しいですよ。チーズがあると子どもでも食べやすいから。でもやっぱり生で食べてもらうのが一番手軽で、玉ねぎの甘さがよく分かるかな。

 

正行さん:甘い玉ねぎだけど、特有の辛みが苦手な人は、スライスして冷蔵庫に半日入れておくと辛みを感じにくくなります。火を通すともっと甘くなるので、フライパンなどで横の輪切りで焼いても美味しいですよ。

 

― なるほど。今年も新玉ねぎの季節が待ち遠しいです!

 

 

玉ねぎを発送する際に同封しているチラシにはおすすめレシピが載っていて、買った人から「全部作ってみました。どれも美味しかったよ」と手紙が来ることも多いそう。色々なレシピで玉ねぎを楽しんでもらえているようですね。

最後にお二人に、今後について聞きました。

 

 

エメちゃん、穏やかな4才。カメラ目線ばっちりです。

 

 

正行さん:今は現状維持でやっています。玉ねぎは料理になるとメインではないけれど、カレーでもハンバーグでも脇役として大事でしょ、家に必ずある食材だからね。それに食べることは大事なこと。全国に待ってくれている人がいるから、これからも2人で頑張ります。

 

― 玉ねぎはどの家庭でも常備している野菜のひとつですね。収穫が始まるとたくさん買っていく人も多いようですが、長持ちさせるにはどんな風に保存したらいいですか?

 

正行さん:家庭では箱などに入れて、蓋をせずに風通しが良い所で保存すると長持ちします。収穫は手作業で傷がつかないように気を付けているので、たくさん買ってもらって、最後の一つまで美味しく食べて欲しいですね。

 

 

 


 

 

宮下 正行さん・けさ子さん

●お問い合わせ:0274-62-3932

●直売所:富岡市岡本616

 

 

畑の近くにある直売所

 

 

 


 

 

私は旬の野菜を食べると、とても元気が出ます。それは「今年もこの美味しさを味わえる季節になったなぁ」と感じることができるから。

富岡市で収穫された新鮮な野菜が一年を通してあるというのは、本当に幸せなことだと思います。農家さんにも感謝です。

 

そして今回の取材では、お裾分けの文化があることを改めて嬉しく思いました。

我が家にも「美味しいから」「たくさん採れたから」と、地元産の野菜などがやってきます。野菜をもらうだけでなく、その人の優しい思いまで分けてもらえるようで嬉しくなります。

 

それって、まゆといとも同じかもしれません。こうして発信しているのは、富岡から良いものを広めたい、たくさんの人に知ってほしい…という気持ちがあるから

皆さんもまゆといとを読んで、富岡の良さを惜しみなく、どんどん全国にお裾分けしていってくださいね。

 

(カネコ)

 

 


 

 

 

 

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